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果てなきは空の彼方  作者: 天野 みなも
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プロローグ


ねぇ、どうして空は果てがないの?

空の彼方には何があるのかな?


小高い草原の丘になっているところで寝転びながら3人で交わした会話。

貴女は覚えているのかしら。


ずっとずっと3人で居られると思っていた。

だけど、大人になるにつれ、ちょっとずつ、そうちょっとずつ関係が変わっていく。

それが怖くて、大人になんかなりたくないって思っても、時が流れていき、皆大人になっていく。

抗うことができず、そして私達も大人になっていく。


だからね、私は貴女がどこにも行かないようにする。

それが私の望み。


だから貴女に、私以外いらないって思えるくらいに、強く強く、傷跡を残す。

そしたら永遠に貴女は私を忘れないでしょ?


それは恋愛感情にも似た独占欲かも知れない。

歪んだ愛情は、やがて何もかも壊してしまうでしょう。

それでも、私は貴女を求める。


この思いの果て、この思いの彼方には、何があるのだろうか……。


※ ※ ※ ※


その日はリン・エストラーダにとって特別な日だった。


コンコン


扉がノックされる。返事をするやいなや、いつもの相方が部屋に入ってくる。


「アンリ……おはよう。」


「おはようございます。リン。今日は早いですね。」


そういって少し驚いた表情のアンリの持つトレイには簡単な朝食と紅茶が用意されていた。

それをアンリは手早くテーブルに並べる。


聖騎士にはそれなりの大きさの個室が用意されているが、大きな窓からは燦々と朝日が降り注いでいる。

いつもは朝の弱いリンだが、今日は特別な日だったため、いつもより早く身支度を整えていた。


「今日はあの日だから。」


「ということはリンが聖騎士団に入って2年が過ぎるのですね。」


「そうね、早いわね。」


自分が聖騎士になって2年。それまではエンロ村という辺境の村で何不自由な生活を送っていた。

戦いとは無縁の生活だった。

だがあの事件が全てを変えることとなった。


「それは?」


「ヒャクニチソウよ。」


「花言葉は友人の死を悼む……でしたでしょうか?」


「贖罪にはならないけど……悼むことで私の存在意義が明確になると思うの。」


「そうでしたか。」


「うん……。」


窓ガラスに隣接する執務机にそっと花を飾る。2年前に亡くした親友のために。

あれから2年。今では「最強の聖騎士」と呼ばれるリンであったが、それまでに多くの人間の死を見つめて来た。


今日は特別な日。だからリンは静かに亡き親友に思いを馳せる。


「さ、準備ができましたよ。」


「ありがとう。でも今日は紅茶だけでいいわ。」


「では、私は失礼しますね。リンも一人で過ごすほうがいいでしょう?」


本当、この男はリンのことならお見通しなのだ。いつまでたってもアンリには頭が上がらない。


「うん。」


「では。何かあったら呼んでください。」


そう言ってアンリは部屋を出ていく。パタリとドアが閉まる音がして、リンは小さくため息をついた。


春先の青空は少し霞がかって、ようやく寒さも和らぎ始めていた。まるであの2年前と同じ晴天の空。

リンは紅茶を持ちながらその空に思いを馳せた。


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