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図書迷宮の司書たち

作者: ピライム

深夜テンションで書き連ねました。

見渡す限り本しかない迷宮"無限図書迷宮"。世界中の文字におこされた書物を複製し、収蔵していくこの迷宮は毎日広がり続け、今なお未攻略迷宮の1つとして周辺各国では有名だ。

そんな図書迷宮では、司書として働くモンスターの姿がチラホラと見られる。一見、刃物が効きづらい骸骨として有名な"スケルトン"に思えるが、注意してみればその黒いローブや他の骸骨と話している様子からただのスケルトンではないと気付くだろう。

彼らはこの無限図書迷宮の主が作り出し、書物の管理を任されている"司書スケルトン"だ。特徴として図書館の本を使った特殊な魔法を使えることと、毎日広がり続け時々図書の配置を変える図書館の配置を常にインストールされていることがあげられる。

その司書たちが無限図書迷宮の所々に生成される休憩所で集まり熱心に話し合いをしている。その内容は・・・


1体の司書が言う。

「今月一番面白い本は『ソードアート・サーガ』に決まってるでしょう!?村を飛び出した少年が貴族のヒロインを助け、類い稀なセンスで誰も継げないと言われていた二刀流を継ぎ、学園に貴族のヒロインと護衛として通いながら信頼や淡い恋を育んでいる裏で行われていた、魔国の四天王の一人だった騎士団長の計画に気付き、国の姫が殺される前に救いだす熱い展開に、もう私はこの作品しかないと感じましたね。」


すると、それを横で聞いていた司書がその言葉は間違いだとばかりに掴みかかりながら言う。

「馬鹿を言うんじゃねえ!今月一番面白かったのは、『Moira/Inseparable』に決まってるだろうが!

落ちこぼれの騎士の家系で育った主人公が、ある日謎の襲撃者に襲われ追い詰められた先の蔵にあった魔方陣から召喚された精霊と力を合わせて襲撃者を撃退するのを読んでねえのかよ。喚ばれたときに目に涙を浮かべながら「また会えた。私の騎士様。」なんて謎の言葉まで言ってこれかどんな物語が始まるか待ちきれないぜ!」


「何を!」「何だよ!」

2体は一歩も譲らず言い合いを続けようとします。

すると、周りにいたもう1体の司書が2体に向かってこう言います。

「まったく呆れたものです。何を言い出すと思えば馬鹿馬鹿しい。」


「ああ?じゃあお前はどっちなんだよ。」


「どっち?何を言っているのです。今月一番面白いものは『エンカウント』でしょうに。異世界と繋がり困惑しているなか突如攻め込んでくる未知の生物を何とかするために様々な国が手を組み協力する群像劇は読んでいて楽しいものでした。中でも、主人公が偶然を重ね続け周囲から一目おかれていくのは大変面白かったですよ。まったく、ここまで言わせなければ分からないのですか?」


この場にさらに火に油を注ぐ発言がきっかけになり、いつの間にか集まっていた幾体もの司書が口々に口論になります。


「一番は『オーバーデューク』。異論は認めません。」「『童女戦記』をよろしくおねがい。」「やっぱアスナかな~。」「アリスだろ?」「マナカ様に闇を感じる。」「なぜ様付け?」「ちくわ大明神。」「誰だ今の?」「ヨゥリィ俺だ、結婚してくれ~!」「「「ギルティ」」」「な、何をするだー!」「バカなやつだ。」


収拾がつかなくなる騒ぎになりそうな時、 マスターの声がどこかからか聞こえてきます。


「司書たち、司書たち?そこで何をしているのですか?」


その声音は優しいものですが、よく聞けば何か感情を抑えながら放たれたように聞こえる言葉を聞いた司書たちは騒いでいたのが嘘のように凍りつきます。


「まさか、本の管理を怠っているだけでなく、静謐であるべき図書館で、ましてや司書たちが騒いでいるなんてことはありませんよね?」


その言葉に司書たちは出ないはずの汗が噴出しているかのような気持ちになります。思い出されるのは、この図書館迷宮を不作法に使う輩がどうなるかです。


(((まずい。このままだと骨粉にされて、畑の肥料にされる!!!)))


そこで司書たちは顔を見合せ言い訳を考えます。何とかマスターの気を反らさなければ、ここでお陀仏です(死んでいますが)。


1体の司書が言います。

「えー、先程のはですね…そう!不作法な輩の対処をはな・・・」

最後まで言う前にその姿が消えます。


図書館ドラゴンの管理区から先程の司書の声が聞こえてきます。

「ぐわっー!やめろ!こっちにくるんじゃない…ああ!頭を返してくれー!」


マスターは言います。

「はて、うまく聞こえませんでした。何ですか、もう一度言ってくれませんか?」


同僚の司書の末路を思い、司書たちは身を寄せあい(ないですが)、震えながら相談しあいます。

やがて、1体の司書が言います。


「あれはですね・・・来月から始めようと思っていた"オススメ図書コーナー"の話をしていたんですよ!」


言った司書は祈りながらマスターの言葉を待ちます。周りの司書たちも固唾を飲んで(のめません)答えを待ちます。

やがて、返ってきた答えは──


「いいでしょう。許可します。その話をまとめて司書長から報告しなさい。今回はそれで何もなかったことにします。いいですね?」


その言葉に、司書たちは首を縦に振りながら、

「「「はい!」」」と、返事をします。


マスターから見られている気配も消え司書たちは自分の区間に帰っていきます。


こうして、無限図書迷宮には新たにオススメ図書コーナーができ、面白い作品が簡単に選べるとして人気になります。


しかし、司書たちは毎月争い、時たまマスターの怒りをかい、幾体かが図書館ドラゴンのおもちゃにされるようになりました。


「そうだわ。来月のオススメには『異世界迷宮の最頂部を目指そう』を入れておいてね?」





続きは、オーバーロードの新刊が来年出なかったら。

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