№18~№27 新歓の話
18.あの日から入学式まで呉葉とセツナは毎日家に来た。
正直どうしたら正解なのかわからなかったが敵意はなさそうだし、むしろ好かれているっぽいので勝手にさせた。
入学式も無事に終わり、流されるまま新歓に出た。
「俺、コウキ。よろしく」
「あ、よろしく」
隣に座った大人しそうな眼鏡男子と気があった。
19.「サークルとか何入るか決めた?」とコウキが聞いてきた。
「いいや何も」
「俺文芸部と、オカルト研究サークルに入ろうかと。ふふふ」
あ、こいつ多分酔ってるな。
「へぇえ」
適当に相槌。
「少し前にな、誰もいないのに会話してる男を見たんだ。今思えば、多分カズだった気がする」
心当たりがあって辛い。
20.「み、見間違いだろ?はは」
まさかコウキに見られているとは。
「いいや、あれはカズだった。カズ以外誰かいるか?いない。ということで、一緒にオカ研入ろう。入るんだ!!」
コウキが持っていたジョッキを荒く机に置くものだから、こちらに多くの視線が向いた。
「いや、何もありません!お気にせず!」
21.「ピンと来たんだ、カズなら一緒にオカ研入ってくれるって。明日、5時限後空いてるだろ?サークル部屋前に集合な……」
そのままコウキは眠りに落ちた。
こいつは俺を研究しようとしているんじゃないだろうか。
友人は出来たがとにかく厄介な奴っぽい。
可愛い子、いるかな。
コウキを介抱しながら帰った。
22.「今日は遅かったな。日付が越えているではないか」
「お邪魔しております」
家に帰ると美人が二人いた。
残念ながらあやかしだ。
呉葉からは特に好かれているようだが、彼女にはできない。
「何でいるんだ……。今日は新歓だったんだ。呉葉が最初に家に来た日、見られていたみたいでオカ研に勧誘されたよ」
23.「オカルトか。まあそういうくくりになってしまうのは仕方ないな」
そこじゃない。
「ええ。でもカズ、呉葉はともかく私のことはあまり喋らないで頂けますか」
そうじゃない。
「そもそも俺は見えないんだよ。あやかしが見えるなんて言ったって、馬鹿にされるだけだ」
「……それもそうだな」と呉葉が言う。
24.「分かってはいるんだ。私たちはあやかしで、カズは人間だっていうこと。カズには嫌われたくないが、なるべく一緒に居たいとも思うんだ」
俺を見つめる紅の瞳からは真剣さが窺えた。
「大学生活の邪魔はしない。一週間に一度……いや、一ヶ月に一度でもいい。それだけでも、会えないだろうか。お願いだ」
25.「そっ、そんなこと言われたら俺が悪者みたいじゃないか。一ヶ月に一度なんて言わずにもっと来てもらったって構わない。人前だと嫌だってだけで」
「そうか、ありがとう」
「俺だって、感謝しているんだ、いろいろと」
おかしいな。
新歓の場で結局酒を飲まなかったのに、酔っているみたいで舌がよく回る。
26.一通り思いを伝えたら、なんだか恥ずかしくなってきた。
「ま、まあそういうことで、うん」
顔が熱い。きっと真っ赤だ。
「良かったよぉセツナぁ」と、呉葉に至ってはセツナに抱きついている。
「離れてくれませんか、溶けてしまいます」
セツナはいつもクールだ。
彼女たちとの時間も大切にしたいと思った。
27.時計は既に1時半を回っていた。
「明日も早いのだろう?話が出来て良かった。そろそろ帰るとするよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
体力的には大丈夫だったが、気疲れはしていた。
シャワーを浴びて髪を乾かす。
コウキは新歓で話したこと、覚えているかな。
オカ研どうしよう。
気付いたら眠りに落ちていた。