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力自慢の少女、ハーフドワーフ

 アルフエンドと名乗る少女であるエルフは強気な面持ちで俺の目前に立ち尽くしていた。

 彼女は初代王、つまるところさっき倒した二代目ロリ王よりも前にこの城塞都市を牛耳っていエルフ王という訳らしい。


「私はね、どちらが優れている劣っている、そんな市民のバカバカしい会話いつも嫌いだったのですよ、彼らは決してそれぞれの個体ではなく種族でしか物事を測っていない、だからこそ今のあなたのような言葉で攻撃を仕掛ける相手に揃いも揃って負けてしまうのです」


 なるほど、だから彼女だけは俺のユニークスキル『言葉の力』が効いていないのか。

 流石初代王と言った処か、一筋縄じゃいかないようだ。

 彼女の弱点、容姿端麗にその爆乳な乳、見るからにビッチそうだからさっきのロリ王のようなオカズのネタという下ネタ攻撃だけで倒れる事はあるまい。


「嘘ぞよ、エンドお姉様? だってお姉様は死んだ筈ぞよ!」

「クルネ、あなたとは初めましてね、私は1000年間この街を離れていたから顔を知らないでしょうけど私はあなたの実の姉よ」

「何故いなくなったぞよ! あなたがいなくなったせいで民は私を王座になるべきと押し付けられた、未熟なのは百も承知で私は何年も何年も頑張ってきたぞよ、にも関わらずたった今私はその男に馬鹿にされた! 私に王なんて向いていないぞよ! 今すぐ王になってその男をやっつけて!」

「お断りするわ」


 アルフエンド初代王は少しも考える余地無く彼女に対しての要求に対して返答する。


「何故断る? ガキみたいな王だとか詰めが甘いとか毎日、毎日、市民にも馬鹿にされて嫌になるぞよ!」

「言いたい事は分かるわ、だって私も最初はそうだったもの、一体何年間私が王としての務めを果たしてきたと思ってるの」

「っう……」

「それに私はたった今好きな人ができちゃったからね、横で見たけどあなた格好良すぎるわ!」

「っぐ!?」


 熱戦が繰り広げられていた中、たった今その空気が一気に消え飛ぶ、何より俺の腕は女エルフの乳なるもので挟まれていた。エルフの乳は予想以上に柔らかく弾力があり、左腕は吸い込まれるように彼女の胸の奥深くまで入り込み包まれる。


「照れた顔も可愛い~ご主人様~」

「っな!? エンドお姉様はヒューマン如きに惚れたぞよ!?」

「も~ヒューマンって呼び方はやめてよね、妹だからってぶっ飛ばすわよ?」

「っぐ!?」

「そういえばあなたなんて名前なの? ここにいる誰もがあなたの名を知っていない筈よ」

「論吉だ、蜂内論吉」

「へえ~論吉君か、いい名前ね……」


 初めて名前を褒められた、大体論吉なんて変な名前を付けられたからこそ俺はネットに浸って論破活動をしていたのだ。

 しかし名前を褒められるのも悪くない事だ、もしもの事があって異世界限定の名前を百個考えていたが。一番の候補は暗黒魔界(ヘル・ダークネス)にしようとしていたが論吉も悪くないかもしれない。


「はいはいヒューヒュー、ビッチ姉は早くその男を連れて街を出て行きな~国外通報国外通報」

「っな!? ビッチとは失礼な、私まだ男経験無いんだから!」


 謎の処女アピールをされた処で困るだけだ、まず数千、数万生きているエルフが男経験無いって正直引くわ。

 ヒューマンとエルフの同盟が組まれる事は無かったのだが、その架け橋となって何故か初代エルフ王のアルフエンドが冒険の仲間に加わる事となった。

 常に密着している彼女の胸に対して悪い気は一切しなかったが周りの視線が気になるものだ、数千年前に出て行ったとしても、こいつが本当に初代エルフ王となっちゃこいつを知ってる者はいくらでもいるだろうに。


「はあ、目線も気になるからそろそろ離れてくれよな、とりあえずエルフ攻略って事でこの城塞都市は離れるか」

「あら、野外が好み? それとまだ私は攻略されてないよ~」

「おじさん正直そのノリについていけないのできついっす、第一初代エルフ王ならもうちょっと軽率な発言は慎めよな」

「もう~論ちゃんったら、私が好きじゃない相手にこんなえっちな発言すると思う?」


 論ちゃん……? いや突っ込むのは駄目だ、今後に影響するような気がした。


「とりあえず次に俺達が行くべき街を探し出す、先に行っとくが俺は冒険者でも何でもない普通の人間だ、だから俺と一緒に冒険したきゃ殺生は極力避けろよ」

「えー、殺しちゃ駄目なの? でも優しい論ちゃん私好きだよ」

「ったくお前は……」


 エルフの少女アルフエンドと行動を共にして数分、突如として起こった爆撃に俺達は瞬時に耳を塞ぐ。


 ドドドドドドーン……ドドーン!!! 


「一体何事だ?」

「西の方から聞こえてきたわね……確かあそこはミノタウロスの要塞都市がある場所、リュークエンド城塞都市なんかよりも遥かに技術が進んだ防衛が名高く、例えどの種族であろうが百メートル圏内にその身を寄せれば一発で灰燼と化されるって言われているわ」

「そんなに警戒されているのか、全異民族と会ってヒューマンの地位を確立する事が俺の目的なんだが」

「あら、そういう事なら近づく事くらいお安い御用よ?」

「本当か! アルフエンド!」


 アルフエンドは任せなさいと思わせる素振りでそのでかい乳に握り拳を当てて先に西へと向かった。

 なんて速さだ、とても追いつけそうにない、彼女は地を蹴って進む訳ではなくその翼で飛んでゆく。

 これが人間と異民族の差という奴だろう、俺も彼女の後を追った。


 それから数分、彼女が見える前に要塞都市は見えていたのだが何故か彼女はポツリと要塞都市から少し離れた場所で立ち尽くしていた。

 急いで彼女の元まで向かおうとはするものの息がどうしても切れてしまう、外にあまり出ていないニートだからといいここまで異世界で現実世界の身体を再現する必要は無かったのに。


「はあっはあっ……アルフエンドお前、何そこで立ち留まっているんだ」

「来ない」

「はあ?」

「明らかに様子がおかしいわ、どの種族よりも警戒心の強いミノタウロス達が攻撃を仕掛けないなんて」

「まだ100メートル圏内に到達していないだけなんじゃないか?」

「いいえ後ろをご覧になって、ミノタウロスの要塞へのデッドゾーンはちゃんと線で示されているのよ」


 彼女の言う通りだったが全然気づかなかった、確かにその先は何かがあると言わんばかりに紅色の線が引かれていた。その紅色が血で色塗られているかは定かではないが、出血からしばらく経ったあの色にあまりにも酷似している。


「行きましょうか、私は彼らの攻撃を全て塞ぐ事ができるけどあなたが離れていたらもしもの時があるわ、私から離れないで傍にいてもらっていい?」

「あ、ああ、それが身を護る最善の方法ならしない手は無い」


 まるで二人三脚のように彼女に密着した、いくら年を取ったエルフといえど身長の差は俺の方が断然高い。しかしその身長の栄養が全て書き換えられたと思われるくらいの豊満な胸は俺の腹部分に当たっている、緊張感が台無しというかある意味こっちが緊張する。

 元はと言え一国の代表の乳なのだ、向こうも乗り気だったし少しくらい触っても文句は言われないだろうか。


「動かないで!!!」

「っな!?」


 アルフエンドの叫びが聞こえた途端、その要塞都市からは何かを引きずった女が出てくる。

 身長は俺と同じ165cmあるか無いくらいかの平均的なものだったが、引きずっていたソレはその体格に似合わないくらいのバカでかい男二人。身長は二メートル以上あるだろう、横幅に広がっていた筋肉は腕の大きさが彼女の体格と同等のものであり、彼女はその体格に見合わないもの二人を俺達の方向に向かって投げてくる。


「避けて!」


 エルフの指示に咄嗟に反応し、そのでかぶつから避けると、血まみれのそのでかぶつは白目になりながら地面に倒れていた。その姿は人間ではない、これがアルフエンドが言っていたミノタウロスという異民族か。


「ミノタウロスと思ったら違ったか、貴様ら何をしにきたんだ?」

「そういうあなたこそ、人間ではないわね、ハーフドワーフってところかしら? ミノタウロスを二人も殺してなんのつもり?」


 殺した? 確かにそのでかぶつはさっきからピクリとも動かない、だがあんな華奢な少女が背中に背負っている斧一本でどうやってあんなミノタウロスを。


「クククククッ、二体だけと思ったか?」

「なにっ?」

「皆殺しだ、あの要塞都市にいたミノタウロスは皆殺しにした、勿論私一人でな」

「なんだと!?」


 その発言に真っ先に驚いていたのは元一国を総括していた代表のアルフエンドだった、俺はその言葉が信じられなくて口を開けながら呆けるしかあるまい。

 種族に詳しくなくともよく分かったのは彼女が危険な存在である他この上ない、彼女の眼は俺達を殺そうとする野獣のものというよりも、ミノタウロスを皆殺しにして満足しきった顔でその場に立ち尽くしていた。


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