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true personal

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「ねぇ、どうしたの?そんな複雑な顔して。」


私に話しかけて来たポニーテールの少女、彼女はにこりと微笑んで私を覗き込んでいる。


「ちょっとね……。」


私は溜息をついた、私には悩みがあったが彼女にはまだ言っていない。


「今日もお休み?」


「…………。」


本日は平日、カレンダーの数字は月曜日を示している。

時計の針は午後1時26分を指していた。

特に何か祝日というわけでもないが、私は家にいた、今は学校に通っていなかったからだ。


「ねぇ…。」


「ん?何?」


「私って、ダメなのかな。」


「ううん、そんな事ないよ、だって、人一倍頑張り屋でしょ?私は知ってる、みんなが見てなくても私は見てる。」


彼女は私がどんな愚痴をこぼしても私を叱らない、否定しない、肯定してくれる、私を認めてくれる。


「ねぇ……。」


「…ん?」


「学校に…行かなくてもいい…かな?」


「うん、良いよ、好きなだけお休みしちゃおう。」


私が学校に行きたく無いと言っても、彼女はそれを否定しない。

寧ろ肯定する。


「ねぇ……。」


「なになに?」


「もうさ…みんな私のこと忘れてるかな。」


「……忘れてないよ…きっと待ってる人がいる……。」


「ねぇ……。」


「うん?」


「私の事虐めてたやつはさ…私のこと覚えててまた虐めるかな?」


「来るかもしれないね、でもユウちゃんが悪いんじゃ無いよ、やって来たのは向こうだし、きっとユウちゃんのこと待ってくれてる子が守ってくれる。」


私は所謂不登校児、イジメに遭って人が怖くなり学校に通えなくなった。

最初は保健室登校をしてたが、ある日保健室までいじめっ子が来てそれから保健室にも行けなくなった。

イジメは教師によって隠蔽までされてる、学校が信用できない。


「ねぇ……。」


「ん?」


「アンタは守ってくれないの……?」


「私は…………。」




「私は……見守ることしかできない、助けたいけど、手が出せない。」


「……そっか。」


「ほら、手を出して。」


彼女は私に手を出すように促した。

体育座りでしゃがみ込んでいた私は彼女の方に手のひらを向けた。


「ほら…。」


彼女が私の手に、自身の手を重ねるように触れ…………る事は決して無く、私の手を彼女の少し透けた白い手が貫通した。


「私はユウちゃんが作った幻なの、存在する幻。」


「タルパって言うんだよね、人工精霊…ユウちゃんが1人で寂しい時、ネットで調べて私を作った。」


「…………うん。」


「ユウちゃんに作ってもらえて、私は嬉しいよ、だって、何もない私が生きることが出来たから、生きてるんだってユウちゃんが言ってくれた、友達だって言ってくれたから。」


「私が幻なのかなぁ?消えちゃうのかな?って言った時も、アンタは消えたりなんかしないよって、あれ嬉しかったよ。」


「…………。」


「でも、イジメられてなかったら、ユウちゃんと友達になれなかったのかも。」


「ねぇ。」


「何?」


「もしさ…本当に身体のある人間だったら…とか考えないの?」


「そうだね…ユウちゃんをイジメから守れない、直接助けてあげれないことを考えると人間に生まれたかったのかも。」


「…………。」


「でも話は聞くよ、背中も押すよ…私は私に出来ることをするって決めたの。」


「……ありがとう。」


「うん、こっちもありがと。」


唐突に玄関から何かが聞こえた、チャイムの音のようだった。


「はい……。」


私はリビングを素足で歩いて玄関に向かった、冷えた廊下の温度が足に伝わり少しぞくっとした。


「どなたですか……。」


私は暗い玄関で重いドアを押し開けた、するとそこにいたのはやや大人しい部類の3人クラスメイトだった。


「久しぶり…ユウちゃん。」


「気になってきちゃった…ゴメンね、あんまり話したことないけど、ずっと気になってて。」


「ゴメンね…私たちにも出来ることはあったのに……。」


「え、え……。」


突然の事で頭が回らなかった、新学期の初めに少し話した、顔見知り、そんな程度のクラスメイトだったから、まさかこんな私の所に来るとは思わなかった。


「また…学校おいでよ。」


「今度は私たちが味方するから…………。」


「あの時は怖くて何もできなくてゴメンね……。」


「え……あ…ぁりがとう……。」


「家にまできてゴメンね、先生に聞いて、どうしてもって言って教えてもらったの。」


「いや、大丈夫だよ……うん。」


「また…来てもいい?」


「え……。」


私はふと困って彼女の方を見た、唐突過ぎてどうしても状況が飲み込めなかった。

私と目があった彼女は、にこりと微笑んでウィンクをした。

それは彼女が私を押す時の癖だった。


「あ…うん……。」


「よかった……ありがとう!」


「正直追い払われちゃったりしたらとか思ってた〜。」


「エミそれは酷いよwユウさんってそんなことする子じゃないじゃん。」


「ゴメーン。」


「は…はは。」


なんとも呆気に取られてしまったが、久しぶりに笑えた、私を助けてくれる子は本当に存在してたのか……。


(大丈夫、罠じゃないみたい。)


まだ罠である疑いが晴れない私に彼女がそうテレパシーで訴えた。

彼女が言うのなら大丈夫なのだろう。


「じゃあ、またね。」


「「バイバイ!」」


「うん、ありがと…。」


嵐の如く現れたクラスメイトを玄関先で見送り、別れを告げた。

私は家に戻ろうと玄関のドアを開けた、ドアはなぜか先程より軽く感じられた。


「あ、アンタ私のケータイ勝手に見てる。」


「お母さんからメール来てるよユウちゃん、夕飯何がいいって?」


「えー、何でもいいわ。」


「私キャビア食べて見たい!」


「いやまじ無理!!」


彼女はリビングを行ったり来たりしてキャビアが食べて見たいと駄々をこねている。

私はポニーテールをなびかせてはしゃぐその姿を見て、何だか不思議と嬉しかった。


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