デート
金曜の夜。コウジくんと2人で会った。オシャレなイタリアンレストランに連れて行ってくれた。
「で、LINEの続きだけど、なんの講義落としたの?」
「うん、日本経済論と産業論」
「ほんとに?必修科目じゃん」
「それ言わないでよ」
大学の話や夏休みの話で盛り上がった。濃いアイメイクの彼女に教えてもらったように、目を見つめて話せば、彼は大きな二重の目を細めて笑ってくれる。マホや大学の友達、ゼミの同期とも楽しく話せるようになっていたからコウジくんと話すことも思ったより緊張しなかった。料理もワインも美味しかった。コウジくんが奢ってくれたから、今度はお茶しよう、奢るからと約束した。コウジくんへの恋心が本物だと感じた。人を好きになることは久しぶりだった。だから、思いを心に秘めていても彼と会って話せるだけで幸せだと思えた。
日付が変わる頃、コウジくんからLINEが届いた。
『楽しかったよ。今度はいつ会おうか』
『私も楽しかった。来週の火曜日は?』
『いいよ、そうしよう』
もう何も考えずにただただメッセージを打つことができた。これは恋なのかも分からなかったけれど、胸が高鳴る気持ちはあった。会うことも、LINEすることも楽しくて嬉しかった。眠くなったから既読をつけたまま眠ることも全く怖くなかった。むしろ、好きな人とLINEをしながら寝落ちすることすらも幸せに感じた。相手も返信をすぐに返すときもあれば、数時間かかるときもあった。コウジくんが私のLINEを無視したときみたいにスマホが気になって仕方なかったことが嘘みたいだった。私にも相手にもそれぞれの生活があって、自分の生活の中で思い思いに連絡すればいいんだとわかった。
そして、火曜日にコウジくんと濃いアイメイクの彼女といつも会う喫茶店に行くことにした。もし彼女が喫茶店に居たら紹介しよう、と思う程に私はこれから起こることを予想していなかった。
-さぁ、喫茶店へ行こう。