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LINE

長い大学の夏休みが終盤に差し掛かる9月に突入した。コウジくんがLINEを既読無視して大体、1ヶ月。その日を待っていた私はLINEのトークルームを開いた。そして、『コウジくんだよね?』とメッセージを書いて送信した。午後10時16分。私はベッドの上でタオルケットを被った。まだまだ残暑が厳しかった。電気代節約のために設定温度を上げたエアコンの部屋はあまり心地良くなかったからすぐにタオルケットを剥いだ。緊張して、不安で、スマホを見ることができない。見なくてもマナーモードになっていないから通知の音で気づくはずだけど。

どれくらい時間が経ったか。不意にスマホが鳴った。私には何時間も経った気がしたが、実際には私がLINEをして34分後にコウジくんから返信が来た。息を吸って吐きながら見る。

『そうだよ笑』

濃いアイメイクの彼女の言葉を思い出す。相手のペースに合わせて、友達とのLINEみたいにテンポ良く。私は29分後に

『人違いじゃなくてよかった笑』

と送信した。3分ほどで返信が来る。

『LINEの登録名もコウジなのに笑』

『それもそうだね笑』

ドキドキする。なんの変哲もない会話なのに心臓がばくばくする。でもこのままじゃLINEが終わっちゃうんじゃないかと思った。どうしたらいいのか。

『ところで成績開示あったね』

私の心配をよそに、コウジくんが話しを始めた。会った時もよく喋る人だったなぁ、と思い出す。

『いくつ単位落としたの?笑』

友達に送るみたいに。私は心で唱えながらメッセージを考える。

『なんで落とす前提なん?フル単だわ笑』

いい感じかもしれない。直感でそう思った。まだドキドキするけれど、テンポ良く返信できる。

『ナイスツッコミ!笑』

『って自分は言わないんかい笑』

『私は4単位落とした笑』

『あっさり落としたって言った笑』

『ほんとのことだから』

その時、濃いアイメイクの彼女が言ったことを思い出した。「楽しくなってきたら、既読無視」

『なんの講義落としたの?』

コウジくんのメッセージははてなマークのついた返信を求めるものだった。これで既読無視していいのか。でもあの彼女の言葉は信頼できる。でもコウジくんに申し訳ない。感情が渦巻く。汗をかいている。午後11時42分。麦茶を飲んでそれからシャワーを浴びて寝よう。冷蔵庫を開ける。麦茶がほとんどなかった。僅かな麦茶では足りずに、ペットボトルのミルクティーを開けた。このミルクティーじゃなくて、あの喫茶店のミルクティーが飲みたかった。シャワーを浴びて、ベッドの下に落ちたタオルケットを拾って被り、目を閉じた。

-明日、喫茶店に行かなくちゃ。

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