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42話-1「中級冒険者への一歩」



 朝起きるといつもと違う天井と壁を見て一瞬どこだと思たが、昨日の事を思い出し寝心地が何とも普通のベッドの上で起き上がる。


「まあ、異世界っちゃ異世界だもんな。現代技術のベッドには勝てないな」


 そう呟きながら僕はベッドから降り服を着替える。着替えると言っても寝間着など着ていないのでTシャツみたいなのに冒険着を着るぐらいだ。あとで外していた装備を付けるけど。


 しかし『ウォッシュ』はかなり便利な魔法だった。身体に気持ち悪さがない。お風呂に入った方が疲れが取れるから僕はお風呂が好きだが、ビジネスホテルのシャワーを浴びるなら『ウォッシュ』の方が楽だしスッキリ度が全然違う。特に服を洗わなくていいのがかなり良い。

 まじでダンジョンの外でも使えたらいいのにと思う。


 ギルドカードを見て8:10の表記を確認する。

 ダンジョンの外と中の時間経過は同じなので今頃小百合さん達もダンジョンに向かってるところだろう。ダンジョンの中で泊まったら外の自宅から通う必要がなくなるから時間に関しては気にしなくていいな。出張先で待ち合わせがホテルのロビーみたいな感じだ。


「朝ごはんは軽く済ますけど、栄養はしっかり取ってと……」


 携帯食を食べ、栄養が詰まったドリンクを飲む。このドリンクはギルドで泊まる時に渡してくれた低級ポーションらしい。栄養剤みたいな効果しかないと言っていた。


「それにしても、携帯食はあまりおいしくないな。カロリーバーやメイトの様な味には勝てないな。そうだ、ラポールのご主人が作ってくれないかな。でもあれか、作れるならさっさと作って売ってるか」


 ダンジョンの攻略が長くなれば携帯食も食べ慣れないといけない。

 一応ポーションがほんのりと甘いのでそれで流し込めば十分食べれるけど、あまり好ましくないな。

 集合時間までまだ時間があるなと思いながら、携帯食を食べ終わり軽くストレッチをする。


 30階層がどんな感じのボスなのか、全く前情報を持っていないので想像しながら体を動かいしていると、なんだかんだ言って、時間は40分を過ぎていた。


「さて、行きますか」


 立ち上がり装備を整え、最後に剣を腰に下げる。

 今日は30階層のボスを攻略する。そこまで気を張らなくてもいいと思うが、これから中級冒険者として稼いでいくんだと気合を入れる。


 そんな気合を入れながら部屋を出て、ギルド1階に続く階段を下りていつものギルド受付に向かう。


「あれ? 俊くん?」


 するとちょうどギルドに入って来たのだろう、入り口から声がかかった。


「あ、おはようございます。小百合さん」


「おはよう。ギルドに泊まったの? 珍しいわね」


 いつも通り弓を背中に背負い、颯爽とした雰囲気を出す小百合さんはかっこいい女性だ。


「まあ、珍しいって言っても、今日が初めて泊まったんですけどね」


 待ち合わせ時間まで少しあるので、近くのテーブル席に座ろうとした小百合さんに「ちょっと鍵だけ返してきます」と言ってギルドカウンターに鍵を持って行く。


「シルクさん、ありがとうございました」


「あ、シュンさん。おはようございます。どうでしたか?」


「思ったより快適でした。また機会があれば泊まりますね」


「良かったです。あまりギルドに泊まる人がいないので、ぜひ泊まってくださいね」


 そうちゃっかりと宿泊の宣伝を入れるシルクさんに鍵を渡して小百合さんの所に戻る。

 するとすでにいつものメンバーが集まり、机を囲んで座っていた。


「おう、俊おはよう」


「奥山君おはよー」


「大樹さんおはようございます。河合さんもおはよう」


 今日の集合時間は9時だったが、みんな5分前には集合していた。日本人の性質上5分前行動は現実世界と隔離されたダンジョンに潜っていても変わらないのだろう。少しにやけてしまう。


「どうした?」


「いえ、30階層のボスが何か楽しみだなって思って」


「おう、言うね俊。防具も新調したみたいだしな。気合入ってるのはわかる。でもな、残念ながら30階層のボスは期待外れだと思うぞ」


「期待外れですか?」


「まあ、行ったらわかる」


 期待外れとはどういう事だろうか。弱いモンスターが出てくるのか、それとも代わり映えがないのだろうか。

 30階層のボスについて思案していると、河合さんが質問を投げかけてきた。


「ねぇねぇ、奥山君ってどこまで攻略したの? 昨日はギルドに泊まったって聞いたから、昨日も潜ってたんでしょ? 何階層まで到達した?」


「えっと、29階層まで」


「えっ? 29階層まで行ったの!? この前25階層だったよね? それもソロで?」


「うん、ソロで」


「ふふふっ。平日は来ないって言ってたのに、何回か来てるじゃない」


「はははっ! そんなにダンジョンが楽しかったか! それともこの前みたいにストレスか?」


 河合さんは驚いたように、小百合さんと大樹さんは笑いながら僕の答えに茶々を入れる。


「まあ、ダンジョンはいつでも楽しいですから、ストレス解消になるんですよ。もう僕の上司はストレス製造機なので! 河合さんならわかるよね!」


 半ば逆切れの様に河合さんにも同意を求める。


「そうなの、真由ちゃん?」


「ま、まあ……奥山君の上司は何と言うか、昭和を象った典型的なパワハラ上司なので……」


 河合さんの口からそんな言葉初めて聞いた。ダンジョンの中だし僕ら以外は聞いてないので話しやすいのだろうか。


「典型的なパワハラ上司ねー。そりゃ俊くんもストレスたまるわよね」


「兼次さんと出会ってからだったら、大抵の上司はパワハラに感じるだろうけどな」


 そうだなーと僕も思うが……あれ? パワハラって言ったら物理的に兼次さんには攻撃されてるんだけど。死にかけたし。でも、兼次さんに対してはパワハラとか思わなかったけどな。あれも理由があるし、その後にちゃんとケアして貰ってるし。パワハラではないのか?


「まあ、そう言う事で今週は平日も潜ってました。2日だけですけど、1日2階層攻略できたので29階層までいきました。大樹さんも自由にしていいって言ってましたから」


「言ってたけどさ。まさか本当に29階層まで行くとは思ってなかったからな。別に悪くないぞ。ただ驚いただけだ」


「そうよ。逆に30階層のボスにすぐに挑戦できるんだからいいことよ」


 少し取り繕う様に話す二人。


「えっと、じゃあウォームアップはする? 29階層に戻って少し動くわよね?」


「……そうですね。ストレッチしかしてないですし、軽く運動して今日の調子を確かめます」


 ダンジョンの中にいる事でステータスの恩恵による体調は良い。いつもみたいにダンジョンに入った時の体が軽くなる感覚はないから調整する必要はなさそうだけど、どちらにしても準備運動は必要だ。


 すると河合さんがふと質問を投げかけてきた。


「ねぇねぇ奥山君って、今何レベルだっけ?」


「昨日20レベルになったところだけど?」


「そっか……20レベルで30階層……やばいな、追い付かれそう……」


 その言葉にまだ10レベル差もあるからとは思ったけど、河合さんはぶつぶつと何か言っていた。





 29階層のモンスターを倒しながら30階層ボスに挑むための準備をする。


 そして最後に目の前にいるオークを斬り倒して息を吐く。


「準備運動としては、こんな感じで大丈夫ですね」


「そうだな。俊お前、前よりも動き良くなってるな。数日でそこまで変わるもんか?」


「良い感じですか? 昨日もきっちり4時間潜ってましたし、少し色々と試してたんで。これも大樹さんとか健次さんの動きで学んでるんですよ」


 大樹さんが僕の動きを見て考えるように言う。


「俊ってスポーツか格闘技か何かしてたか?」


「えっと……ずっと空手はしてましたよ」


「空手か。割としてる奴は多いけど、そこまで動きに通ずるもんか?」


「たぶんですけど、うちの兄が空手以外にも武術全般に強いもので、その影響で僕もさせられてた時期があるのでそれが関係するかもしれないですね。僕が凄いんじゃなくて兄が凄いんですけど。あと、一時期パルクールもしてましたねー」


「パルクールはわからないけど。そうか、基礎的な物は元からあった感じか……。だったら少し納得はいくか」


 大樹さんが「いっそ俺も習ってみるか?」とか言いながら回収したドロップアイテムをしまう。


「じゃあ、向かうぞ」


「了解です」






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