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41話-2「中級冒険者としての始まり」



 兼次さんがあのウェアハウンドにボロボロになったって……ウェアハウンドはかなり強かったし、僕も死にかけたけど兼次さんがボロボロになるレベルだったか?


「それって、ボロボロでも兼次さんはウェアハウンドを倒したって事ですよね?」


「……いや、倒せなかった。他の冒険者9人もギリギリ帰って来た感じだったし、かなり強かったんだって」


「ほんとですか……」


 僕が予想しなかった言葉に、驚きを隠せなかった。


 兼次さんが負けた? あのウェアハウンドに?


「でも、僕が戦って帰って来れたぐらいの強さですし、兼次さんなら勝てると思ってましたけど……他にも40レベル付近の冒険者がいたんですよね?」


「いた。普通ならそうなるし、俺らも勝てると確信してたけどな。でも、兼次さんが実際に会った時のウェアハウンドは明らかにレベルが上がっていたらしい。強さも中級冒険者レベルはあるし、ウェアハウンドが剣を使って尚且つ剣スキルも使ってきたらしい」


「ウェアハウンドが剣スキルをですか?」


 モンスターが剣スキルを使うのか?

 モンスター特有のスキルを使う事は知っているけど、剣スキルを使うとか聞いた事がない。


「あの階層ではありえないことだな。40階層を越えたあたりから時々だが、武器スキルを使ってくるモンスターは出てくるけど、それもたまにだ。たぶん50階層以降はもっと使ってくるんだろうけど、少なくとも23階層ではありえない」


「ギルドの見解では、俊くんが出会った時はコボルトからウェアハウンドに進化したばかりだから自分の新しい身体に慣れてなかったんだろうって。だから俊くんは帰って来れたんじゃないかって言ってたわ。それが半日経った事で充分に慣れた実際の力が『独眼のウェアハウンド』の力って事。実質45階層以降のモンスターって感じらしいわ」


「45階層以降……」


 まじか。あのウェアハウンドのレベルが45階層以降ってか……。一瞬で強くなりすぎだろ。

 そう考えると本当にコボルトの時に倒していなかった責任を大きく感じる。


「でも今のところは死人も出ていないし、33階層で見つかったって報告があったわ」


 33階層って……たったの2日で10階層も進んでる。


「まだ完全ってわけではないけど、俊くんは少し安心できるわね」


「え? それってどういうことですか?」


 小百合さんが言う「安心」という言葉の意味合いについて質問する。


「えっとね、ネームドやユニークモンスターは30階層を越えるとより強敵を好み始めるのよ。だから自分より弱い敵を率先して倒す事は無くなる事が多いから、30階層までの冒険者は襲われないはずなの」


 その情報は初耳だ。


「はっきりわかってないけど、たぶんユニークモンスターのプライド? 的なのが働いてるんじゃないかって見解がある。ネームドと呼ばれるくらい異質で強くなる事を求めてるわけだからな。自分が強くなるには自分よりも強い敵と戦う事が効率的だ。まあ、死んだら元も子もないけど」


「モンスターだから脳筋って事でしょ。強くなるために強い敵を倒す。単純な行動よ。だから俊くんは安心して攻略してきていいと思うわ」


 なるほど。強くなるための本能って事か。僕達もレベルを上げるためにモンスターを倒して、強い敵に挑むわけだ。

 そう考えたらあまり僕らと変わらないとも思う。


「そんな事があったから、兼次さんは今日は休養でお休み。それでも明日からダンジョンに潜るみたいだけどね。鍛えなおすって言ってたわ」


「レベル上げが重点的になるだろうな。俺らも兼次さんと一緒に行動する予定だ」


「そうなんですね。わかりました」


 兼次さんが負けた理由は分かった。それほどウェアハウンドは強かったって事で、あの時の僕は運が良かったんだと認識する。

 また兼次さんに話を聞かないとな。


 そう思っていると小百合さんが「そうだ!」と手をポンと叩いた。


「そうそう。それとね俊くん。俊くんが次ダンジョンに来るのは土日だと思うんだけど、その時からしばらく兼次さんは来ないって言ってたわ」


「えっ? どうしてですか?」


 兼次さんが来ないとはどういう事だろう。さっきの話と何か関係があるのだろうか。


「えっとね、兼次さんの下にいるメンバーって兼次さん含めて7人で、そこに俊くんが入ってきて今は8人なのね。それで、先週は俊くんの様子を見るためにこっちにいたから、次は残り3人の方と行動する予定なのよ」


「残り3人にですか。たしか別のメンバーもいるって言ってましたね」


 そう言えばそんなことを言ってた気がする。この1週間の間に見てなかったのでそんな話があった事をすっかり忘れていた。


「元々俺らは5人パーティだったんだけど、少しずつ5人では対応しきれないって感じてきたからメンバーを増やしてたんだよ。2,3か月前だっけ? そこに真由ともう一人入って7人。で、今回俊が入ったから8人。少し多いかもしれないけど、全員が40レベル近くになれば50階層攻略はできるだろな」


「そうだったんですね。思ってたより多いですね」


「ふふふっ、まあね。でも死んだら元も子もないから、人数が多くて対応できるならその方がいいと思うわ。別にダンジョン攻略に人数制限はないからね。でももっと多くなれば指示も判断も管理も難しくなるから、たぶんこれ以上は増やさないと思うわ」


「そうだろうな。俺もこのメンバーで十分だと思うぞ。俊なら30レベルになったら十分ボスの対応できそうだし」


「いやいや、30レベルで50階層ボスって差がありすぎですよ。無理だと思います」


「流石の俊でもそこまでの自信はないか! はははっ!」


 最終そのボスを見ないとわからないけど、まあいい線は行く自信はある。でも流石に安全マージンは取りたいと思う。


「じゃあ、次の土日に私達と行ける所まで攻略しましょうか。こっちには真由ちゃんも合流するから、兼次さん達とちょうど4人ずつに分けれるからバランスもいいわね。真由ちゃんのレベル上げも兼ねて進める所までは進みましょう」


「わかりました。土日ですね。時間は前と同じで9時でいいですか?」


「そうね。9時からにしましょうか」


 河合さんも途中から入ってるようだし、まだレベルに差はあるけどできる限り早めに追い付けるようになろう。じゃないと、みんなが40レベルに到達したら僕抜きで50階層攻略されるかもしれないし。


「あっ、そうだ俊。もし今日みたいに平日に来た時は遠慮せずに29階層までは攻略してくれていいからな。でも、30階層のボス戦は兼次さんからフォローしてくれって言われてるから、29階層攻略時点で止まる様にしてくれ。俊なら大丈夫だと思うけど、もしもの時に突入できるようにしたいからな」


「わかりました。この前兼次さんも言ってましたし。そうします」


 30階層のボスからソロで強化されるという話だったから、強化版をソロで倒せって事を言われてた。僕もソロでどのレベルのボスを倒せるか確認したい。もしもの事があればタイミングを見計らって助けてもらえればいいだろう。


「俊なら余裕だろうけどな」


 そう言う大樹さんは笑っていた。


「えっと、じゃあ話しておく事はこれぐらいかな。俊くんの連絡先知らなかったから今日会えてよかったわ。あっ、そうだ。真由ちゃんと同僚だったわよね。俊くんの連絡先真由ちゃんから聞いていい?」


「いいですけど、今教え……そっか、ダンジョン内だから連絡先教える手段がないのか。暗記します?」


「暗記は遠慮しとくわ。真由ちゃんに聞くから」


「了解です。じゃあ、それでお願いします」


「はーい。じゃあ、ダンジョン攻略頑張ってね。行きましょうか大樹」


「だな。俊、気をつけて頑張れよー」


 話が終わり小百合さんと大樹さんが椅子から立ち上がる。それにつられて僕も立ち上がる。


「ありがとうございます。小百合さんも大樹さんもお疲れ様です」


 そう挨拶して「お疲れー」と言いながら百合さん達はギルドから出て行った。


 二人が見えなくなるのを確認して僕は椅子に座りなおし腕を組む。


「兼次さんとウェアハウンド……それにレベル上げと50階層……見えるだけでも試練と言うか壁があるな。まあ、それを壊していくのがダンジョンの醍醐味なんだけど」


 そんなことを呟きながら、僕は今日のダンジョン攻略の予定を練り直した。




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