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41話-1「中級冒険者としての始まり」

第5章開幕です。



「最近はダンジョンの中の方が落ち着くんだよなー」


 最近と言ってもまだダンジョンに潜り始めて1か月も経ってないのだけど。


 9連休にダンジョン攻略してからの翌日のあの課長からの仕打ちを受けてのまた翌日。僕は仕事と定時に終わらせて平日にもかかわらずダンジョンに来ていた。

 昨日は家に帰ったのが昨日を過ぎていた、つまり今日である。終電に間に合わないと言う理由で帰らせてもらったが、何時まで作業をさせるつもりだったのだろうか。

 と言うか、営業は夜9時以降はしてはいけないし、会社に残ってもすることなど書類整理ぐらいで、課長がする予定だった書類整理をさせられていたわけで……あの課長絶対さぼってたよな。

 労基に駆け込んだらあの課長なら一発降格だろう。他の人にも迷惑をかけるから労基に駆け込むのは最終手段にしたいけど。


 まあ、そんなこともあれば、行く予定じゃなくてもダンジョンに行きたくなるだろう。


 と言う事で、僕はいつもあまり長く滞在しないギルドの中に併設してある椅子に座って腕を組み考えていた。

 なんだかんだ言ってここまで駆け足で攻略していたから、レベルが上がったのは知っているが、ステータスをじっくり確認していなかった。


 久しぶりに自分と向き合うのも悪くないと思い、ダンジョンに潜る前にステータスを確認していた。



 レベル19


 HP 82

 SP 160

 力 29

 体力 23

 速さ 34

 運 75

 魔力 191


 強敵であるウェアハウンドを倒すことはできなかったが、戦った事で経験値を大幅に得る事が出来たのだろう、レベルが19に上がっている。ステータスもしっかりと少しずつだが上がっている。SPと魔力はレベルアップまでに使用した量に比例するらしいから、もっと上げる様にしよう。


 それにしても、最初のころはレベルアップの音には敏感に反応していたが、19回も聞いたら戦っている時に音がなった事自体に気付かないこともある。慣れと言うのは怖いものである。

 というかあの状況でそこまで気が回っていたら、余裕があるか注意散漫かである。ネームドまでになったウェアハウンドに僕が余裕を持てるわけがない。それだけ強い相手だった。


 まあ、あのウェアハウンドもすでに兼次さん達に倒されていると思うが。

 今日はシルクさんがいないようだからそこらへんの事を詳しく聞けていないので今度聞こうと思う。


「剣スキルも……上がってるな」


 それともう一つ。剣のスキルレベルが1つ上がりレベルが3に上がっていた。これで『リア・スラッシュ』というスキルが使えるらしい。

 しかし、このスキルが使えるのをあの時に知っていたらもう少し戦いやすかったのではないだろうか。もう少しそこらへんはこまめに確認するべきだろう。


 後でこのスキルも試してみたいと思う。それに他にも色々と確認したいこともあるし、攻略もしながらだと1時間では済まない気もするな。


「おー。俊じゃねーか」


「あれ? 俊くん? 平日なのに来てたの?」


 と、僕が自分のステータスを確認していたら声をかけながら正面に男性と女性が座ってきた。


「あ、大樹さんと小百合さん、お疲れ様です」


「お疲れ。なんか唸ってたけど大丈夫か?」


「お疲れさま。兼次さんから俊くんって平日はあまりダンジョンに顔を出さないって聞いてたけど。何かあったの?」


 そういう二人に手を「いえいえ」と手を振りながら答える。


「あー、大丈夫ですよステータス見てただけなんで。それと、今日はちょっと会社の方でストレスがマックスになったんで気晴らしに。今日は平日ですけどたまたまです」


「あははっ。そっか、サラリーマンしてたらそんなことはあるわね。私も前まではそうだったけど、今はそんなことないわ。冒険者は自由だからね。冒険者で食べていけるようになったらそんなことも気にしなくていいわよ」


「そうだな。俺も外で仕事してた時は親方にどやされてたからなー。ここの方が断然快適だ」


 現時点でダンジョン攻略だけで生計を立てている二人からその声が聞こえるとやはりダンジョンはいい所なんだと認識できる。


「ですよねー。僕も冒険者だけで食べていけるようにと考えてるんですけど、まだ僕の到達階層では目途が立たないですからね」


 僕がそう言うと二人が「何を言ってるんだ?」と言いたげな顔をする。


「いやいや俊くん、あなたもう中級冒険者よ? なったばかりで先に進んでないから感じないでしょうけど、俊くんの実力ならすぐに稼げるようになるわよ」


「ほんとですか?」


「ほんとほんと。ね、大樹?」


「そりゃそうだろ。俊の実力なら十分稼げる。というか、俺らで稼げてるから俊にできないわけない」


 少し過大評価しすぎだと思ってしまうが、大樹さんと小百合さんがそう言うならそうなのだろう。

 今から稼げるんだと思うとわくわくしてくるから、やはりダンジョンに来て正解だった。その言葉だけで会社で与えられたストレスが軽減された気がする。


「で、俊くんは今から潜るの?」


「そうですね。気晴らし程度なんで1階層だけ攻略したら終わろうかと思ってるんですけど……」


「えっ、一人で? まあ、今までの攻略見てるとソロで十分対応できてたから大丈夫でしょうけど……」


「おいおい、小百合。俊なら大丈夫だろ。レベルはソロ適正よりも低いけど十分通用するだろうし。と言うか、十分通用してたからな。俊もその考えなんだろ?」


「そうですね、兼次さんも30階層までは僕だったらソロでも大丈夫だろうと言ってたので、油断さえしなければ大丈夫と思います」


「そうね。俊くん自身がそこまで自信を持ってるなら心配しないけど。まあ、30階層までで死にはしないわよね」


「死なないだろ。流石に大量のモンスターに囲まれたら物量で死ぬかもだけど、30階層までは十分ソロで対応できる数しか出なかっただろうし」


「そうなんですね。だったら安心してソロで攻略してきます」


 自分的にも30階層まではソロで対応したい。というか、今までソロでいて、25階層まで一緒に行動していたけど戦いはソロで対応していたし。まだパーティとして連携は……そこまでしていないな。

 それにソロの方がやっぱり楽だし、自分のしたいことができる。


「ちなみに大樹さん達は攻略の帰りですよね? 二人だけですか?」


「あー、そうだな。俺らは攻略と言うよりレベル上げしに来たかんじだな。連携の訓練しようにも今日集まれたの二人だけだったし、今は兼次さんからレベル上げの時間って言われてるからな」


「そうそう。私達の到達階層が49階層だからその先は50階層のボス。でも兼次さんと40レベルにならないと50階層に挑戦しないって決めたらね。今はレベル上げ中」


「そうなんですね。40レベルって少し先になりそうですよね」


「そうね。あと4,5レベル上げる予定だかから少しかかるかも。俊くんみたいにソロでボス倒したらレベルは上がるから、荒療治だけど頑張るしかないわね」


「えっ、ソロでボス討伐ですか。危ないですよ」


 僕のその言葉に大樹さん達が「はぁ?」と声をこぼす。


「おいおい、俊がそれを言うのかよ! お前、ここまでソロだろ」


「そうよ。それにボスをソロで倒したらレベル上がりやすいってわかったの俊くんのおかげなのよ?」


「でも、僕がソロでボス倒してたのってまだ低階層ですから。中級になったらソロで攻略しようとは思ってませんでしたよ」


 と言ったが、ソロで攻略できるならそうしようかなとは思ってたけど、たぶん無理なのは感じている。

 それに僕がソロで倒したボスはミノタウロスだけだ。ヘルハウンドは祐也と倒しているし、小ボスはボスじゃない。


 そんな僕の内心とは裏腹に二人はどうのこうのと言っているから、無理やり話を変える。


「そう言えば、兼次さんと一緒に行動してないって珍しいですよね?」


 そう言うと二人の顔に影がかかった。


「そっか、俊くんは知らないのよね」


「そうだな。昨日の今日だからな知らなくて当たり前だろ」


「どうしたんですか?」


 二人の意味深な言葉に僕は首を傾ける。


「兼次さんが『独眼のウェアハウンド』を討伐しに急遽向かったでしょ? その時に兼次さんボロボロになって帰って来たの」


「えっ!? 兼次さんがですか!?」


 あの西川兼次という男がボロボロになったという、言葉に衝撃を受けた。




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