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39話-1「特別指定モンスター」


「シャロンさんいますか?」


 ギルドに帰ると早々に中村さんがカウンターに向かいシャロンさんを呼び出す。

 担当がシャロンさんだから仕方ないが、僕的にはシルクさんも呼びたい。

 そう思っているとすぐにシャロンさんがカウンターに現れた。


「あ、コウイチさんお疲れ様です。早かったですね、どうしましたか?」


 この2人の中に僕が混じっているのを見てこの前話していた通りになっているのが良かったのか、少し口元が緩んでいる様に見える。


「ユニークモンスターが出ました」


「ユニークモンスターですか?」


 言葉を復唱したシャロンさんが僕を見た。

 奥から出て来た時はニコニコの笑顔だったのに、シャロンさんがその一言で真剣な顔つきになる。


「えっと、過去に発見されているユニークモンスターではなく?」


「はい、新しいユニークモンスターだと思います」


「えっ!? 新しいユニークモンスターですか!?」


 いつの間にかシャロンさんの隣に居たシルクさんが大きな声を上げた。

 シルクさんが僕がこの2人の中にいる事に驚いていた事は横目で確認していたが、すでに隣に居るとは。いつも通りと言えばいつも通りだけど。


「シルク静かにして。それでコウイチさん、ユニークモンスターというのは……」


「俺が最初から遭遇したわけではないので……奥山さんお願いします」


「了解です」


 ここからは僕が話すことになる。

 中村さんにはさっき話しているが僕から話した方がスムーズに進むだろう。


「シュンさんが、ですか。たしか別のユニークモンスターの討伐依頼を受けられていたかと思うんですけど……」


「そうですよ! シュンさんはユニークゴブリンの討伐を受けていましたよ。それなのに……」


「えっと、そのタイミングで別のユニークモンスターに遭遇してしまって……」


「「えっ!?」」


 シルクさんとシャロンさんが同時に驚く。双子の様に似ている顔立ちをしているから驚く顔もそっくりだ。しかしこの2人が一緒にいるのは珍しいな。


「一つの階層でユニークモンスターが2体も出るのは珍しいですね……それでそのモンスターの名前は?」


「ウェアハウンドです」


「「えっ!? ウェアハウンドですか!?」」


 再度同時に驚く2人。

 声もそろっていて見事にシンクロしていた。


「シルク、マスターに報告を! すぐに!」


「は、はい!」


 シャロンさんの言葉でシルクさんが奥に走っていく。


「詳しく話を聞きたいんですけど、たぶんこの話はギルドマスター案件になります。なので、シュンさんとコウイチさんとユウヤさんはここで待っていてください。で、他の野次馬は自分の事をしてください」


 少しきつめに言うシャロンさんの言葉で周りに集まっていた人達が離れて行く。その中には兼次さん達もいた。

 離れ際に兼次さん達が僕に声をかけた。


「俊、かなり大変な事に巻き込まれてる感じするけど、後で話聞かせてくれよ」

「そうだよ。奥山君ってこういうのに巻き込まれる体質なのかな?」

「俊くんは、そうね……頑張って!」

「俊、今の話なら機密案件も多いやろからな無理するなよ。話せる部分は共有してくれると助かるな」


 それぞれがそう言って離れて行った。


「奥山さん、あの方達が今のパーティーメンバーですか?」


「そうです。みんな僕よりレベルが上なので追い付こうとしている状況ですけど」


「なるほど……」


 そんな話をしていると奥からギルドマスターがやって来た。


「オクヤマシュン、あんたまたとんでもない情報を持ってきたね」


 出会い頭のその言葉と少し眉間に皺を入れた表情で一歩引きそうになる。


「とにかく3人ともこっちへ来な」


 有無も言わさずギルドマスターは前と同じく親指で後ろを指す。

 それに従って僕達はギルドマスターの後をついて行った。


 ギルドマスターの後ろついて行くと、前と同じように応接室に案内される。

 着いて早々僕達3人はソファーに座る様に促され、中村さんを真ん中にして指示通り座る。もちろんギルドマスターは対面に座り、その後ろにシルクさんとシャロンさんが立っている。


「で、オクヤマシュン。説明してもらおうか」


 少し威圧を感じるように前のめりになったギルドマスターが鋭い眼光を僕に向ける。その目を向けられると少し萎縮してしまう。


「え、えっとですね。どこから話せばいいですか?」


「全部だよ。あんたが、今日ユニークモンスターのゴブリンの討伐に向かってからのこと全てだよ」


「あ、はい。わかりました」


 ギルドマスターは全ての内容をご所望のようだ。

 僕は数時間前の出来事を一つ一つ思い出しながら話した。



「なるほど。そういう事かい。そりゃ災難だったね」


 僕が話せる全ての事を話し、ギルドマスターは納得したように息を吐く。そしていつの間にか置いてあったカップに手を伸ばし少し一息を入れた。


「マスターそのウェアハウンドは確実に……」


「そうだね。確実にネームド入りだね」


 シャロンさんの問いにギルドマスターが返した。


「ネームド……ですか?」


 その初めて聞いた言葉に僕は聞き返す。

 その言葉で想像できるが今までに聞いた事がない。


「奥山さん知らないんですか? ネームドとは二つ名を持つユニークモンスターの事ですよ」


 横で黙って聞いていた中村さんが声を上げた。

 言葉に少し含みを感じたのだけど、中村さんに限ってはそんな事なく、純粋に聞いたのだと思う。


「二つ名ですか?」


「そうです。先に断りを入れておきますが、前にあなたの事を少し調べさせていただきました。一時期噂になっていたようですね。その噂であるプレステージダンジョンであなたが倒したオーガがそれです。『虐殺のオーガ』ですね」


「あいつの事か……」


 あの時のオーガを思い出す。

 大体僕が戦闘時にモンスターの力を比べるのはあの『虐殺のオーガ』となので、常に思い出すことで鮮明に覚えている。というか、あのモンスターを覚えていないわけがない。

 そして二つ名を持つと言う事は、通常のモンスターより頭一つ以上抜けているモンスターの事を言うのだろう。

 そこにギルドマスターが口を挟む。


「まあ、あれは少し違うんだが、ナカムラコウイチの言う通りさ。二つ名を持つユニークモンスターの事をネームドモンスターと言っている」


「なるほど。ユニークモンスターの危険度でネームドに変わると言う事ですか?」


「そう言う事だね。ネームドは通常のユニークモンスターではない個体を見分けやすいように付けた名前だよ。ユニークだけでも厄介なのにそれ以上に厄介な奴らって事だね」


 ユニークでは表せない危険度って……かなりやばいモンスターじゃないか。


「ちなみに、ネームドって今までに何体いたんですか?」


「5体。今回のウェアハウンドで6体目になるね」


「6体だけですか……」


 その数の少なさに驚く。

 それもそうか、他にもあんな自由で強い個体がうじゃうじゃいたら冒険者が生き残りにくい。ユニークでもすぐに討伐依頼が出るのに、ネームドが大量にいたら冒険などしてられない。

 しかし、その5体の中にあのコボルトもといウェアハウンドが入るとは……かなりの確率を僕は引いてしまったんじゃないだろうか。


「はははっ……」


 乾いた笑い声が口から漏れた。

 前に聞いた限りでは『虐殺のオーガ』も滅多に出ない個体だし、今回のウェアハウンドもそうだと。

 まだダンジョンに入って1か月ぐらいでレアモンスターに2度も会うなんてツイているのかツイていないのか……。




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