35話-3「中級冒険者へ」
「あっ、お帰りなさい皆さん!」
「シルクちゃん、ただいま」
25階層から帰還してギルドに報告をしに戻って来た。
「どうでしたか! いい感じでパーティは回りましたか?」
僕達がギルドに入ったら、机などの整理をしていたシルクさんが気付き、駆けつけて来る。
「いい感じやな! 俊が凄い大物って事がわかったわ」
「ですよね! シュンさんは期待の新人なんですから!」
シルクさんが嬉しそうに胸を張る。
「本当にシルクさんが担当になってくれてよかったよ」
「本当、シルクちゃんのおかげって行っても過言ではないわね」
「私のリアルの同期が仲間になるってわかった時はびっくりしたけど、あれは凄かったよ」
それぞれ僕の感想をいい、褒めてくれる。
褒められていない僕はむず痒さを我慢できなくなる。
「皆さん褒め好きですよ! 僕なんてそこまでじゃないですって」
「いや、シュンさん。皆さんの言葉は過大評価じゃないですよ! 普通に評価しただけですからね!」
「そ、そうですか」
シルクさんがグイっと近づきいつも以上に褒める。
そこまで言われたら自分でもすごいって思ってしまってもいいのだろうか。
「まあ、シルクちゃん。今日の成果を持って帰ってきてるから手続きお願いしたいんやけど」
「あっ、そうですね! すぐに用意します! カウンターへどうぞ!」
そう言ってシルクさんと僕達はカウンターに向かう。
カウンターで今日のドロップアイテムを渡し、ついでに受けていたクエストの完了を告げる。
僕はそれに加えて攻略階層を伝える。
「えっ!! 25階層まで攻略ですか!?」
かなり驚き、作業していた手が止まる。
「……本当ですね、これギアルタートルの甲羅ですから、24回層は攻略してるとわかりますね。ちなみに、25階層のドロップアイテムは何でしたか?」
その目は疑いの目ではなく期待の目だった。
「先に言っておきます。驚かないでくださいね。騒いだら大変な事になりますから」
「それほどの物ですか」
「ほんまやで。シルクちゃん驚くし、今から口押さえてた方がええで」
冗談を言いながら兼次さん達は僕を囲むように立った。
「じゃあ、出しますね」
そして、スキルオーブをカウンターの上に置いた。
「っ!! えっ! これって……ええっ!!」
「しっ!! シルクさん声声!」
「いやだって、スキルオ……むぐっ」
カウンター越しに河合さんがその口を咄嗟に押さえる。
「駄目だよシルクちゃん!」
「むぐっ……。そ、そうですね。すみません」
少し騒いだ事で周りの冒険者達がわらわらと近づいてくるが、兼次さんが追い払う。
「えーっと、これが25階層でドロップしたのは、初めてですね。すみませんが、これはギルド長に報告しないといけないません。シュンさん、よろしいですか?」
そうなる可能性は薄々思っていたからいい。その代わり、
「いいですけど、周りの冒険者には伝えないようには出来ますか?」
「大丈夫です。知るのは私達ギルドの職員のみです。この事が周りにバレたらシュンさんが大変な事になりますから、他の冒険者には伝えません」
一瞬大きな声で叫びそうになったシルクさんだが、嘘はつかない子だから信頼はできる。
「少し時間がかかると思いますので、先に報酬をお持ちいたしますね」
そう言ってスキルオーブ以外のアイテムを持ってシルクさんは奥に消えた。
僕はスキルオーブを片付ける。
「あんなに驚くものなんですね」
「当たり前だろ! 簡単には入手できないアイテムだぞ?」
「うん。俊くんはもう少しダンジョンの常識の勉強をしないとね」
「すみません」
そう言われてもまだ1ヶ月も経ってない事で大目に見てほしい。
でも、常識は覚える必要があるよな。攻略ばかりじゃなくて街の方も見て回った方がいいかもな。
「あっ、そうそう。奥山くんもしよかったらステータス見せてくれない?」
「ステータスを見せる?」
河合さんに急に言われて言葉を繰り返す。
それはどうなんだろうか。個人情報を簡単に見せてもいい物だろうか?
「全部ってわけじゃないよ! 一部だけだから。これからパーティで色々と役割を決めるに当たって知っておいた方がいい事があるからね。HPと魔力だけは知りたい」
「そうやな、それだけは共有しといた方がいいな」
「そうそう、これはパーティ組むなら常識って思っておいた方がいいよ」
「だな。ステータス全部見せるのは仲間内でもなしだな。流石に全て曝け出す必要は無いからな。あとは、ギルドガードで簡単に見れるから、ギルドガードも気をつけた方がいい」
「ステータス見られたらそいつの得意がわかるからな。あまり良く無いな」
「ってことだから、私からから言ったほうがいいよね」
そう言って河合さんがHPと魔力以外を隠してギルドガードを見せた。
次回の更新は火曜日の昼頃です。