34話-3「最大の攻撃と最速の行動②」
振り抜いた剣は肉を切り裂く感触を手に伝える。
「ウザァァァァッ!!」
「っ!! ぐっ!」
しかし、ウサギは掴まれていない逆脚で僕を蹴り、その場から逃れる。
僕は蹴られた勢いでたたらを踏みながらもウサギからは目を離さない。
これぐらいの痛みなんか、最初のオーガと戦った時に比べたら我慢できる。
確実に当てた感触はあった。しかし、それは相手の息の根を止める程ではなく、血を流しながらもバックステップで離れ、怒った目で睨むほどの余裕はあるようだ。
だが、スラッシュが完璧に決まるとは思ってない。決まればラッキーぐらいで、少しでも隙を見つけられればいい。
「で、やっばりその位置なんだな!」
今までの動きとして、攻撃したら必ず元の位置に戻る。ヒットアンドウェイの攻撃方法で僕を攻撃していたのは見ていたら直ぐにわかっていた。
しかし、それをどうやって攻略するか。
それを考えると自ずと答えは出た。
「ウザァァァァァァァ!!」
ウサギの咆哮に関わらず、僕は手を地面に当てる。
さっきからウサギが動くたびにするぱちゃぱちゃという音。その音はさっき放った「ウォーター・ボール」による水溜り。
しかしウサギは何も感じていないのか僕に威嚇しているのみ。
だったら、気にせずに攻撃する。
そして魔力を練り上げる。
イメージするのはカメをも行動不能にした雷。
「『サンダー・ボルト』!」
そう声に出し放った雷は目の前にある水溜り……ウサギの足下まで続いている水溜りを伝い、ウサギを感電させた。
「ウザァァァァ……ッ!!」
そして感電したウサギは悲鳴を上げながらその場で固まる。
「完璧だな」
そう言って地面から手を離し腰を上げる。
考えた結果この方法が1番だった。
剣だけで戦うのであれば、タイミングを見てのカウンター狙いか、自分の身を削りながらの攻撃しかない。
魔法なら遠距離で狙いながら様子を見て弱らせて、全体攻撃の後に一撃を狙う。
だか、僕が今期待されているのは最速の行動。
ただ魔法だけを撃ち続けるなら消耗戦になるわけで、隙も見せてくれないだろう。なら、わざわざ攻撃させてカウンターを狙い相討ちはどうなのか。
その相討ちが成功したらラッキーだが、失敗しても少しだけでも傷をつけたら反応が変わる。
それは最初のカウンターが当たった時に離れた位置で威嚇してきた。だったら、次もその可能性があると考えてもいいだろう。
どちらもできる僕らしい戦い方とすれば、両方を混ぜ込む。その中での一番の効率的な方法と言ったらこれになる。
で、それは成功した。
まあ、いい感じに攻撃がヒットしたからその分反応が大きくなり、隙は増え、確実に「サンダー・ボルト」が通ったわけだ。
はっきり言ってこの攻撃パターンは王道だから何とも言えないんだけど。
「さて」
確実に意識を飛ばしているウサギを見てその場で構える。
あの巨大なカメでも意識を飛ばしていたんだ、ウサギが飛ばさないとは考えられない。
でも、直ぐに意識を戻さないとは言い切れない。
だから、
「瞬動」
足で地面を思いっきり蹴り、一瞬でウサギに近づき、その勢いを殺さずに、
「スラッシュ!」
追い越し際に剣を振り切り、全力でウサギを斬り飛ばした。
そしてそこから数メートル先に着地し、剣を払い、鞘に収める。
「うん、いい感じだな」
そう言いながら振り向いた先では、他のモンスター同様にウサギは光の粒子となり消えて行った。
少しずつだが戦い方が良くなってきた気がする。
同じボスとしてさっきのカメよりはいいペースで倒せたと思う。
作戦的には泥臭いかもしれないが、これが僕が考えられる最速だったから、及第点はあげてもいいだろう。
まあ、僕との相性が良かったとも言えるが。
「ほんまに早かったなぁ……」
そしてカメの時と同じく入り口の扉が勝手に開き、兼次さんの声が聞こえた。
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