33話-2「最大の攻撃と最速の行動①」
「ガメェェェェ!!」
そして、もう一度カメが吠える。
「……っ!! まじかよっ!!」
同じような咆哮だが、次は複数の水の塊を吐き出して来た。
水という塊は量が多ければ多いほど物理的なダメージが増える。
それも自分が撃つ様な水球ではなくその数倍の大きさなら、潰されるだろう。
「くそっ!」
幸い初動がそこまで速くなく、走らながらなら避けられるレベルだ。
しかし威力は申し分ないぐらいで、その水の塊は地面に隕石が落ちた様なクレーターを作る。
「これもやばいって!」
避けながら悪態を吐く。
しかしここまで遠距離の攻撃があると、こっちも魔法で対応が難しくなる。
だったらどうするか。
「接近戦だろ!」
タイミングを見計らう。
「ガメェェェェ!!」
カメが咆哮し、水の塊を吐き出した瞬間に走り出す。
亀の甲羅は硬く防御力が高いが、腹側も防御力が高いわけではない。つまり、狙うなら腹部というわけだ。
あくまでも一般的な亀のことだが……。
それを信じてカメの懐まで走りこむ。
「しゃぁぁっ!!」
無事に懐に潜り込み、気合を入れる。
それも一撃で倒すつもりの威力を込めて!
「……っ!!」
しかしその瞬間、カメの手足そして頭が甲羅に引っ込んだ。
そして、真上から落ちてくる巨体は、その物量で潰そうとして、
「瞬動っ!!」
間一髪、瞬動でその場から退避する。
「……っなんだよそれ」
ギリギリで避けられたが、タイミングが悪ければ潰されていた。
元いた場所はカメの質量によって地面が埋まっている。
「懐に入れないって事か……」
一旦距離を取る。
その間にカメは甲羅から手足と顔を出し起き上がる。
「ガメェェェェ!!」
カメだからそこまで俊敏ではないが、懐に潜り込んだ途端あれ程の速さで手足を引っ込めるとは思わなかった。
接近戦に持ち込もうと懐に潜れば質量で潰される。
もし、タイミングよく攻撃できたとしても、攻撃後に潰される。だったら意味がない。
「さてどうするか」
しかし、まだ何も試してないわけで、あの甲羅に剣技が通じるのか、魔法は通じるのか検証するしかないのだが。
「とにかく一旦リセットして攻撃するか」
初めの攻撃に驚いて動いてしまっていたから、一旦冷静に分析しよう。
まあ、とにかく、
「ガメェェェェ!!」
「この攻撃は避けきらないとなっ!!」
咆哮と共に迫り来る攻撃を避けながら走る。
こっちの攻撃よりもカメの方が射程が広く、遠距離では勝ち目が薄い。
それに一つ一つの威力が大きく、3発当たれば確実に戦闘不能になるだろう。
あと、思っているより攻撃が長くて、一回の攻撃で10近くの水の塊を放つ。
でも、最初のレーザーバームの様な攻撃は今のところ撃ってこない様で、連続では撃てないと仮定できるか。
「ガメェェェェ!!」
今のところは水の塊を放つ攻撃が続く。
しかしどれだけ威力が有っても単調な攻撃なら避けられる。
そう考えるとやっぱり行動は最初と同じで、
「接近戦だろ!」
タイミングを見計らって走りだす。
遠距離で勝てる見込みがないなら接近戦しかない。
だったら試す事は先に試してみる。
9回で切れる水の塊を避け、回り込む様にカメに向かう。
「さて、まずはっ!!」
甲羅に攻撃は効くのか。
「スラッシュ!!」
カメに近づき、瞬動で加速し、飛び上がる。
そしてカメに向かって剣を振り下ろす。
「っ!!」
金属と金属がぶつかる様な激しい音を鳴らし、甲羅は剣を弾く。
「堅いなっ!」
体勢を制御しながら地面に着地する。
追撃を受けない様にその場から逃げる様に横に向かって走る。
「少しでも傷は……ついてるか」
走りながら攻撃した後を見ると少しだけ傷がついている様に見えた。
今ぐらいの「スラッシュ」であの傷なら、考えないといけないか。
「ガメェェェェ!!」
逃げている僕に向かってカメが咆哮する。
攻撃を受けて怒っているのだろう、僕を睨んで……。
「……っ!!」
前足を上げたと思ったら、地面を大きく殴りつけ、
「それは、やばいって……っ!!」
レーザービームの様な水の塊を放った。
「うおぉぉぉっ!!」
僕に向かって一直線に迫り来る水の塊を飛ぶ様に避ける。
「ガメェェェェ!!」
転がる様に着地した状態でカメを見る。
「……うそだろ!」
やばい気配がしてたんだ。
カメが前足で地面を殴りつけ、僕を睨み、大きく口を開け、
「連続かよ!!」
「ガメェェェェ!!」
水のレーザービームを放った。
ガメェェェェ!!
次回の更新は火曜日20時ごろです。