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6話「ゴブリンとハウンドとレベルアップと」



「はあ、はあ、はあ」


 全力で階段を駆け上がる。

 あと少しで出口だ。


「っはあ、はあ、追いかけて来てっ、ないよな」


 ようやく出口に到着する。

 膝に手を当て立ち止まる。かなり苦しい。

 全力ダッシュはもう限界だ。


「やべえ、後少しで捕まるところだったわ」


 本当に後少しだった。

 ブラックハウンドが見える前から全力で走ったのだが、相手は犬系のモンスターだ。走りで勝てるわけない。

 1階層への階段の手前で一瞬噛みつかれかけたが、間一髪の処で階段に転がり込めた。そのまま、1階層まで駆け上がったのだが、ブラックハウンドは追ってこなかった。

 半信半疑だったが、深い層のモンスターは浅い層に上がってこれないだろう予想は的中した。上がって来る途中に一瞬だけ振り向いたが、ブラックハウンドは階段の手前で吠え続けていた。

 もう大丈夫だと思ったが、一応1階層まで上がっておいた。念には念をだ。


 安心して座り込む。


「あの数は一旦逃げて正解だったよな。流石に作戦を立てないと」


 まだゴブリンを数体しか確実に倒せる自信がない。その中で複数体に囲まれたら一巻の終わりだ。

 しかし、どうするか。

 一撃で倒していくしか考えられない。


「うーん……ん?」


 何か聞こえる。階段側でなく奥の方からか。


「ごぅぁぁぁぁ」


 ゴブリンだ。

 奥から2体向かって来る。


 この階のゴブリンは倒した筈なのだが。


「あ、なるほど。リセットされるか、時間か」


 多分だが2階層に降りたことでリセットされたか、時間によって増えていったか。

 どちらでもいいが、もしかしてこれは経験値稼ぎにはなるんじゃないか?


 数メートル先にゴブリンが居る。剣を構えながら立つ。


「ラッキーだな」


 ゴブリンには残念だが、経験値の糧になってもらおう。ゴブリンなら2体同時でも捌けていたからな。

 体力は回復している。


「ちょっと違うこともしてみるか」


 駆け出す。とにかく先手を取る練習だ。カウンター狙いでは遅いと感じた。


「まずは。おらあぁぁぁぁ」


 1体目に横薙ぎで当てる。ゴブリンは飛ばされながら血飛沫を上げる。今回は斬る事に成功したようだ。


「この調子、で、もう、一体!」


 仲間が飛ばされた事に戸惑って居るゴブリンには蹴りを入れる。


「ぐきゃ」


 ダメージはそんなにだが、怯ませる事に成功する。そのまま間髪入れず横薙ぎ。

 一応連撃は成功し、2体のゴブリンを倒した。


「うん、割とありだな。武器だけで一撃で倒すのは流石にずっとは難しいだろうし、体術を組み入れながら戦おうか」


 ゴブリンはもう確実に倒せるだろう。


 先程通りならあと1体いる筈。


「ちょっと歩こう」


 ゴブリンを探しに歩き出す。まぁ、道も直線だからすぐに出て来ると思うが。


 しかし、独り言が多くなったな。新しい出来事ばかりだから話さずにはいられないのか。驚きばかりだ。


 っ! いた!


 少し歩いたところでゴブリンがうろついていた。

 次はゴブリンの攻撃を避けてみようと思う。


 落ちている手頃な石を拾い上げ、ゴブリンに投げつける。


「お、当たった」


「ごぅぉぉぉぉぉ」


 石を当てられたゴブリンが吠える。そのままこっちに向かって走って来る。


 剣で受けるか、避けるか。避けたほうが後に繋げやすいな。しっかり見極めろ。


「ぐぎゃぁぁ」


 ゴブリンの突進。

 爪でも牙でもないただの突進は避けやすい。

 これまでもカウンターを当てていたんだ、避けられる。


 右に避ける。追撃はせずゴブリンの様子を見る。

 ゴブリンは避けられた事で体勢を崩すが、そのままこっちを見る。


 爪での攻撃。

 左から右への単純な攻撃は避けられる。

 少しバックステップを踏み、避ける。


「ん。これぐらいら余裕だな」


 避けるのはもういい。構えていた剣をいつも通りに横に振る。同じ繰り返しの攻撃は命中率を上げる。最後のゴブリンも倒せた。光の粒となって消えていく。


「慣れたな。この調子で経験値を……」


『レベルがレベル2に上がりました』


 頭の中に言葉が流れる。この不意な言葉にも慣れてきた。


「んっ!ここでレベル上がったか」


 レベル1になった時に感じなかった体に違和感がある。


「少し体が軽く感じる」


 体の軽さ。少しの変化だがそれだけで高揚する。レベル1の時はあまり感じなかったから余計思う。

 やっぱりレベルが上がったと感じれば嬉しくなる。これのためにダンジョンに潜ったみたいなものだし。


「てことは、このまま2階層に再チャレンジしてみるか。次は行けそうな気がする」


 レベルが上がって楽観視してるわけではないはず。


 その気持ちのまま再び2階層に降りて行く。







 目の前に3体のブラックハウンドがいる。後ろには2体のブラックハウンドがいるが、光の粒となり消えそうだ。


「このままなら、行ける」


 噛み付くように1体ブラックハウンドが走って来る。それを避ける。そのままそいつは置いておき、奥の1体に駆け出す。

 一撃では仕留め切れていない手負いを先に潰す。

 しかし、無視されたと思った最初の1体が方向転換をし飛びかかる。

 その瞬間後ろを振り向く。


 それは格好の獲物だ。飛んだなら方向は変えられない。

 飛びかかったブラックハウンドに向かい剣を横に振る。


「はあぁぁぁぁ!」


 斬りとばす。

 綺麗にヒットした剣はそのままブラックハウンドを吹き飛ばす。

 光の粒になるのを見届けず、残り2体に向き直す。手負いの方は足を攻撃しており、動けない。もう1体の方が飛びかかって来る。

 足元を狙った攻撃に対しそのまま蹴り上げる。蹴り飛ばすことはできないが少しでも動きを止めれたら上出来だ。

 動きが止まった隙に斬りとばす。


 僕の攻撃は大体が横薙ぎだ。縦真っ二つにしてしまうと割とグロいからだ。それは置いといて、


 残った最後の1体に向かう。



「くぅーん」


 犬のような鳴き声を発した。助けて欲しいと。こいつはこの5体の中で弱い個体だったのだろうか。それで最後まで庇われていたと。

 しかし、こいつも最初は僕を襲ってきたのだ。勿論殺すつもりで来ていた。じぁ仕方ないと割り切る。


 モンスターがどのようにして産まれているのかは知らない。動物のように産まれるのか、それともダンジョンが産み出しているのかわからない。

 はっきり言って殺生はあまり好きではない。もしかすると僕がこのダンジョンに入ってきた侵略者なのかもしれない。でも、こっちもここにいる限りは生きるために殺すしかないと割り切っている。自分を正当化していると思うが、当たり前だろう。まあ、ほとんどはレベルアップのためなのだが。


 そんなことを考えながらブラックハウンドに最後のトドメを刺す。

 綺麗に光の粒となって消えて行く様子は割と綺麗だ。しかも、これが僕の経験値として入って来るのは面白いことだ。


「よし、これで2階層も2周目終わりだ」


 あの後2階層での出来事は普通に終わった。

 レベルアップの影響か、1回目とは全く違う動きが出来たことで比較的にやりやすかった。ブラックハウンドの動きにしっかり対応でき、1体1体相手取ることができた。

 そして、5体倒して3階層に降り、再び登ってきた。2回目は複数を相手するためにだ。


「でも、思ってる以上の動きが出来てると思う。レベルアップすげーな」


 感心する。やはり、倒せた理由はレベルアップだ。思っているより動きやすくなっている。


「で、最後のハウンドも今消えたと……」


 少し離れたところで今絶命したと思われるブラックハウンドが光の粒となって消えていた。


『レベルがレベル3に上がりました』


 レベルアップの声が聞こえた。


「お、これでレベルアップか! うん、やっぱり感覚が違ってると思う」


 2回目のレベルアップ体の変化はやはり感じる。レベルが上がるのはやっぱりすごく嬉しい。

 しかし、このタイミングでレベルが上がったということは、1つの階層を2周すればレベルが1上がるのだろうか。多分そうだろう。


 じゃあ、この調子で、


「3階層も行っちゃいましょうかっ!」


 そのまま階段に向かう。

 さっき降りた時3階層のモンスターは見ていない。

 今の状態なら何がきても大丈夫だろうと少し楽観視もしていた。







「で、この階層もゴブリンか?」


 階段を降りてから歩いたところ少し開けた場所にでた。そこの中央にはチュートリアルの時のようにゴブリンが立っている。違う事があるとすれば、


「今回のゴブリンは武器を使うと、」


 そのゴブリンは右手に棍棒を持っていた。黒く錆びている見た目だから、そこまで怖くない、ボロい印象しかない。でも初の武器持ちだ。気持ちを入れ替える。


 武器を使うということはこっちと対等の力を持っていると考えよう。周りには何もないし、相手はこの1体だけなのだろう。少しボス戦みたいだな。


 剣をいつも通り横に構える。

 先手必勝だ。


「うおおおぉぉぉぉ」


 気合いを入れながら駆け出す。一撃では無理そうだ数当てることにする。

 まずは左からの横薙ぎ。


「ぎぎぁぁぁぁ」


 横薙ぎが棍棒で受け止められる。

 それは想像していた。

 ぶつかった反動で一旦距離を取る。しっかりと踏ん張り、剣を上から振り下ろす。

 それもまた受け止められる。


 思ってるよりやるゴブリンだ。


 しかし、攻撃は最大の防御。とにかく攻撃される隙を与えない。ここから、息が切れるまで連続攻撃だ。


「はああぁぁぁぁぁぁ」


左からの横薙ぎ。右に転じて右からの横薙ぎ。振り下ろし。右によれながらの振り上げ。右からの横薙ぎ。

 攻撃するたびに体勢を崩すゴブリン。

 これだけの連続攻撃でも腕はもう限界だ。が、最後の左からの横薙ぎをクリンヒットさせる。

 しかし、威力が足りなかったのか吹き飛ばす事までは出来なかった。疲れている。


「はあ、はあ、ふぅー。強いな」


 大きく息を吐き剣を構え直す。中々手強い。

 しかし、ワクワクする。なんかしっかり戦っている感じがする。まだ気持ちに余裕があるのだろう。


 次は一撃一撃を真剣に、気合いを入れて。


 体勢を立て直したゴブリンは棍棒を振りかざして来る。武器を持ったとしても単調な攻撃だ、避けられる。

 左に避ける。

 まずは振り下ろし。


「ぐぎゃぁぁぁぁ」


 ゴブリンの悲鳴。見事クリーンヒットした攻撃はゴブリンの右腕を半ばから切断する。後はもういける。

 ゴブリンは右腕を抑えながらその場で立ち尽くす。抵抗はない。


 右半身を前に剣を左に流すように構える。全力の一撃を与えるため、大きく溜める。


「うおぉぉぉぉぉ」


 横一線。

 全力の一撃は抵抗のないゴブリンの体を半ばから上下に両断する。

 出来るとは思わなかった切断が出来た事には歓喜があるが、思っていたより真っ二つはグロい。致命傷、即死の一撃だったのかすぐに光の粒となって消えたのでそこまで引きずる事はないが。

 しかし、まあ疲れた。なんというか、精神力を削られた感じだ。会心の一撃と言えばそうかもしれないが、ただ全力を出しただけだ。そこまで疲れるようなことではないと思うが。


「これで3階層もオーケーか。思ってるよりすんなりと行けるものだな」


 周りを見渡しながら思う。今回のゴブリンは武器を持っているだけで強いわけではなかった。まあ、これから武器を持っているモンスターが出てくるだろうからそれの予行演習みたいなものだろうな。


「で、今回のドロップアイテムは……球? 黒色? 欠けてるし、なんだろ」


 黒色の球体を手に取り見る。すぐにピンと来るのは魔玉だろうか。ドロップで玉と言えばそうだ。こういう素材をエルフが金と交換してくれるのだろう。これは割と換金率が良さそうだ。

 ドロップアイテムを拾いポーチに入れる。今まで拾ったアイテムを換金するとどれぐらいになるか楽しみだ。まあ、世間ではそこまで稼げないとの事だからそこまで期待をしない方がいいのだが。


 もう一回この階層でレベルを上げて4階層に向かおう。

 奥に階段が見える。そのまま階段に向かい歩く。この階層はこの部屋しか無いようだ。


「このまますんなりと5階層も突破して終われればいいんだけどな」


 そう思いながら4階層に降りていく。



 

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