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32話-4「攻略のためのメンバー」

もう1話続きました。



「ターニングポイントですか?」


「そうや、ターニングポイントや」


 23階層を難なく攻略しながら進み、目の前には23階層の出口、つまり24階層の入り口が見えてくる。

 この階層ではここまで来ると周りにモンスターの姿は見えない。


 ひと段落付きそうなタイミングで、さっき聞いた言葉を聞き返す。


「中級冒険者になる為にはパーティを組み、自分ができない事を補なって行くんやけど、自分ができる事も増やさなあかん」


「そうですね。個人の力が弱かったら、仲間におんぶにだっこ状態ですもんね」


 自分でできる事が少なければ周りに迷惑をかけるし、逆にできることが増えればその分周りにも貢献できる。


「せや。だからこそ、この24、25階層が存在するわけや」


 その言葉に僕は周りの顔を見る。


「そうだね。中級冒険者になるにはここは越えないとね」


 隣にいた河合さんがそう言う。


「と言うか、物理的に越えないといけない所なんだよねー」


「物理的に?」


「そ、物理的にや」


 その言葉に疑問符が頭に浮かぶ。

 物理的と言えばモンスターを倒すから物理的だけど、今回言っているのはそういう意味ではないんだろう。


「この24階層と25階層は1人で攻略しないといけないんや」


「……どういうことですか?」


 1人で攻略しないといけない?

 つまり、一人でボスに挑まないといけないと言うことか?


「言葉通りで、ボスの部屋に入れるのは1回に1人しか無理なんや。他のボス部屋は誰かが入っていても扉を開ければ入ることができる。一応マナー的には入らない様にしているけどな。でも次のボス部屋は1人が入ったら本人がその部屋から出るまで扉は開く事がない」


「……なるほど」


 1人しか入れずに、出なければ次も入れない。

 つまり、1人の実力を試すって事で、この階層の意味は。


「振るいにかけるって事ですね」


「そういう事やな」


 そういう事なら、25階層以上攻略した者が中級冒険者と言われる意味が分かる。

 この壁を越えなければ本物の冒険者にはなれない、物理的な壁が目の前にあると言うことだ。


「わかりました。でしたら、僕がここを攻略できればやっとの一人前という事ですね」


 今まではお試し冒険者みたいなもので、ここからが冒険者と言うことか。

 しかし、中級冒険者になる為には攻略しないといけない物理的な壁なら、そう簡単に越えられるものなのだろうか。かなり強いモンスターが出てくると考えてもいいんじゃないだろうか。


 それに、違う疑問も浮かぶ。

 1人で攻略するなら、


「……だったら、ここまでパーティを組んだ意味は?」


 20階層を越えてからパーティを組みここまで来ている。

 どっちにしても24、25階層を1人で攻略しなければならないなら、パーティを組むのはまだ後でも良かったんじゃないのか。

 殆ど僕一人で戦ってきたみたいなところもあるが、1人で攻略していた方が戦闘経験としては多くなっただろう。

 まあ、パーティを組む事でレベルは上がったのは事実だが。


「そうやな。別にここまではパーティを組む必要は無かったな。俊1人で攻略してきても良かったんやけど……」


「だったら……」


「別にお前にとってこの24、25階層が壁ではないと思ったからな。普通の冒険者が中級になるには壁ってだけで、俺から見たらお前の実力ならここは普通に越えられると思っている。別に壁や無いんやったら気にせんでいいし、先にメンバーと合わせられた方が良いと思ってな」


「……そう、ですか」


 その言葉が少し嬉しく感じた。


 僕にとっては壁ではない。

 つまりは僕の実力なら24、25階層は余裕で攻略できると言っているわけだ。

 それにここまで言い切ってくれて、


「わかりました。でしたら、さっさと24、25階層を攻略して、早く先に進める様にします!」


「お前ならそう言うと思っていたわ」


 そう兼次さんが言う。


 僕の事をここまで買ってくれている人に、ここまで期待されたら裏切りたくはない。

 と言うか、元々ソロで行こうと思っていたんだ。せっかく1人で攻略するボスなら余裕で倒さないとここから先、自分の実力では進めなくなるだろう。


「俊なら余裕だと思うぞ。俺でも攻略できたボスをお前が攻略できないとは思わないからな」


「そうね、俊くんなら大丈夫だと思うわ」


 そう大樹さんも小百合さんも言ってくれる。


「私でも1人で攻略してるから、期待の新人の奥山くんならできるよ!」


 河合さんも笑いながらそう言ってくれる。

 少しからかわれている気もするが。


「わかりました。じゃあ、気合入れます!」


「おう! じゃあ、24階層ボス戦、攻略開始やな!」


 そう言って兼次さんが目の前の24階層へ続く階段に目をやる。


 少し気を張っているのかその階段からモンスターがいる気配がする。


 しかし兼次さんは言っていた。僕なら普通に攻略できると。


 その言葉を信じて一歩踏み出す。

 僕に続き兼次さん達が階段を降りていく。

 





      

33話に続きます。


次回の更新は火曜日の昼ごろです。

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