31話-2「パーティ編成」
「まじか! もう20階層突破してるのか! 流石期待のルーキーだな!」
「凄いね。私が20階層突破したのは1ヶ月掛かったわよ? それも二人組でだけど」
「……そうなんですか」
その言葉を聞いて自分の攻略スピードが速い事に驚く。
兼次さんの言ってた通りなんだ。
僕達は21階層を歩きながら話している。
「ちなみに皆さんは何階層まで攻略されてるんですか? それと3人でパーティ組まれてるんですか?」
「あーそうやな、それも話さないとな。一応パーティは組んでるんやけど、2グループに分かれててな」
「そう、一応私と大樹は固定だけどね。他に毎日来れない人達のパーティがあるわ」
「俺達は毎日ダンジョンを攻略してるけど、普通はそこまでできないだろ?」
「まあ、普通の生活してたら……」
そりゃ毎日ダンジョンに潜れる人は少ないだろう。外の世界での生活がある。
つまりこの2人は外で仕事してないんだろう。そうなると色々と気になる所が……。
「お? 今「お前ら廃人じゃ?」みたいな事思っただろ?」
「えっ! そんな事思ってないですよ!!」
「あははっ! そりゃ毎日行楽してるって聞いたら思うよね!」
「いや、思ってないですって!」
「まあ、その通り廃人みたいなもんやからな。でも、こいつら結婚してるぞ? 俺はしてないけど」
「……えっ! そうなんですか!?」
「おいおいその反応やっぱ思ってただろ」
「あっ……! すみません」
「ふふふっ、謝らなくていいよ。普通はそう思うから。私達は仕事がダンジョン攻略だからね。私なんて旦那より稼いでるわよ」
「本当ですか!?」
「ほんと、ほんと。元々旦那も一緒にダンジョン攻略してたんだけどね、死んじゃったから今は外でジムのインストラクターしてるよ」
そうなんだ。
死んじゃったから外で働いってるって言い方、かなり新鮮だな。
「俺は建設業辞めて来たからな。内心こっちの方が断然楽しい」
「中級冒険者になれば大抵外の世界の一般ぐらいは稼げる様になれるわ。40階層のクエストを受けてたら外に家持ってても、俺みたいにダンジョンの中でアパートぐらい借りれるからな。昨日話してた通りそんな良いアパートじゃないけど」
「ほぉぉ……そうなんですね!」
その言葉を聞いて本当にダンジョン攻略が仕事になるんだと思えてきた。
ちょっと夢が膨らんできた気がする!
「まあ、俊もいつかこうなるから頑張れよ! 仲間に早くなれる様にな!」
ここでの仲間は多分廃人の事だ。
だったらあまり嬉しくないが、もしかすると遅いかもしれない。
一歩は踏み出してる気がする。
「頑張ります」
「とにかく他のパーティメンバーは後々紹介するわ。あとパーティ全体で最高到達が49階層やな」
「49階層ですか」
凄い。あと少しで50階層は中級冒険者の中でも強い部類に入るんじゃ。
「まあ、50階層のボスがかなり強いからまだ攻略出来てないんだけどな」
「そうなんですね」
ボスが強いって事は聞いているが兼次さん達でも50階層のボスは倒せないのか。どんなモンスターなんだろう。
「ちなみにボスはどんな……」
「そうだな。まだ先の事だし言ってもええか。いい目標になるだろうしな」
そう言って兼次さんはニヤリと笑った。
「ワイバーンだ」
「……おお」
その言葉に一瞬胸が高鳴った。
ワイバーンと言えばファンタジーのお約束モンスターだ。ゴブリンもお約束だがワイバーンと言えばカッコいいイメージしかない。
少しワクワクする自分がいる。
「それは、強そうですね」
「ああ、強い。5人では対処できないレベルやからな。今はレベル上げで攻略はストップしているけど、全員のレベルが40を超えたらもう一度挑戦するつもりや」
「40レベルですか」
僕のレベルの2倍ちょっとか……。
そこでふと思った。49階層を攻略するのに40レベルなくても出来ている事に。
その階層ごとの適正レベルは階層数字の前後5レベルだと聞いていたのだが。
「パーティを組むとやっぱり戦闘効率は上がるんですね」
「当たり前や。パーティは個人の足りない所をみんなで補う事が重要やからな。やし、俺の見立てでは今の俊のレベルでもこのメンバーなら30階層までは余裕で攻略できるやろな」
「そんなにですか」
その言葉で再度パーティの重要性が理解できた。
自分一人で何でも出来るとは思っていないが、少しパーティ組むだけでもそこまで変わるのだろう。
「そんな話してる間に俊くん、手頃なモンスターが出てきたわよ」
「おっ、オーク3体か。ルーキーの様子見にはいいな!」
目の前にいつも通りのオークが歩いてくる。
「よし、じゃあまずは俊一人の実力を見せたれ」
「わかりました!」
そして僕は魔法を打つために左手を構えた。
あと1話続きます。
次の更新は来週火曜日の夕方ごろです。