30話-2「冒険者に」
「パーティメンバーですか……」
「そっ、パーティメンバー。色々と考えてるとは思うけどここから先はやっぱ仲間が必要になるんやわ。俊の実力は個人なら十分だと俺は思うけどな」
そう言ってくれるのは素直に嬉しい。しかし、パーティか、それは必要だとわかっている。やっぱと言うのはこっちが考えてるのはわかってくれているのか。でもそれを今言うってことは。
「実際俊はここまで仲間となりそうなやつと話してないんやろ? まあ、ダンジョンには来たばっかやし、同期も少ないし、同じレベルのやつと話せなかったやろ」
「うっ……。その通りですけど」
「せっかくやし俺も考えてはいるんやわ。当てはあるぞ。まあ、それは戻ってからにしよか」
「え? そう、ですね」
そう言って兼次さんは目の前の転送ゲートに乗り込む。それに続いて僕も乗り込む。
いつも通り青白い光に包まれ転送される。転送に掛かる数秒の間に先程言われた事を思い出す。
自分に何が足りないのか再認識させられた。
パーティを組まないといけない。普通当たり前のように組むのだろうが、ここまで一人でなんとかなっていたわけだ。しかし、ここから先は一人だけで進むことは難しくなってくると感じる。
ある程度までは行けるだろうがそれも限界があるのは理解している。少なくとも仲間がいれは色々と分担が出来る。今回も後衛がいるだけでオーガを倒すのも楽だったと思うし、逆に自分が後衛に回れるし。必要性は感じる。
あとはやはり自分の実力だ。兼次さんには充分な強さだと言われてたけど足りないものが多い。思うのは剣技とスキルの数。今回兼次さんは魔法を使わず剣技とスキルだけで戦っていたらしい。しかもスキルを使っていたことは数回ぐらいしか僕にはわからなかった。
今回の結果、スキルを知る事で対人戦は有利になると思う、あまりないだろうけど。この戦いの兼次さんは前衛、タンクだと思っていたから距離も僕の魔法が届く距離にいたのだが、それを一瞬で詰められた。そんなスキルは僕が知る中で瞬動しかない。誰でも覚えられるのかそれとも兼次さんが剣スキルレベルを上げでいるのか、知らないことが多すぎる。
まあ、どちらにしても磨けば、レベルを上げれば、スキルは覚えられるという事だとわかった。剣技もスキルレベルに影響するだろう。つまり自分のスキルを磨かくことが一番の近道ってわけか。まだまだ弱いんだと認識した。
まあ、逆に考えればもっともっと強くなれるという事だな。まあ、まだ始まったばかりだから強くなる要素しかないんだけどな。
そう色々と考えていてもやはり重要なのはパーティメンバーか。仲間がいることで自分にない部分を補うことが出来る。パーティメンバーをどうするかは一応自分の中では決まっているが、それは自分の中で決まっているだけで、どうなるかはわからないわけで。そして兼次さんにはそこを見抜かれていたと。
しかし、内心この件も兼次さんにお世話になると、ここから先ずっとお世話になりそうで怖いところもある。
そうなっても別に良いのだろうか。兼次さんはどう思って、
「おーい、何してるんや。着いたぞ?」
「あっ」
色々と考えいたら転送ゲートを降り兼次さんは歩いていた。
「すみません、ちょっと考え事してて」
転送ゲートから降り、走る。
「そうか。じゃあ、後処理さっさと終わらせよか。別にまだ早いけど今日は疲れたやろし?」
「そうですね。いつもより疲れました」
戦った数はそんなに多くなかったが精神的に疲れた。兼次さんとの戦いがきつかったな。
すぐギルドに到着する。
「あ、お帰りなさいシュンさん。と、ケンジさん」
「ただいまです」
「おー、ただいまー」
カウンターにいたシルクさんに声をかける。ん? カウンターにいるの始めて見た気がするな。新鮮。
「ケンジさんといるってことは昨日無事に話せたんですね」
「はい」
「かなり有意義な飲み会になったな! シルクちゃんも伝言ありがとうな」
「いえ、私の担当ですし、仕事ですからね」
少しシルクさんのテンションが高い気がする。
「今日の成果報告と素材の買取なんですけど、すぐ出来ますか?」
「大丈夫ですよ。今日はどこまで行かれました?」
「20階層をクリアして終わりました」
「20階層ですね。えっと、ケンジさんも一緒にですか?」
「いや、こいつだけやで。俺は一緒にボス部屋入っただけ。強化版のミノタウロスと一人で戦わせた」
「へー、一人でですね……ほ、本当ですか!? 一人でですよね!? ちょっと待ってください、本当に凄くないですか!」
なんかすごい褒められてるみたいだ。別にそこまでミノタウロスは強くなかったけど。褒められると気持ちいい。
「やっぱりシュンさんは凄いです。あとでギルドカードを確認させて頂きますね。もちろんケンジさんのも一緒に。シュンさん、ギルド内でも話題になってますし! あっ、すみません興奮してしまって……えーっと、今日は20階層で終わったのですね」
「そりゃシルクちゃんも驚くよな。まあ、後で見といて」
ここまで驚くとは強化版は凄いんだろうな。
「はい。それで今回の素材等はそこまで多くないですけど、あっ、本当にミノタウロスの角がありますね。これは全部売却でいいですか?」
「あ、すみませんその角だけはちょっと持っておきます。何かに使えるかもしれないんで」
「そうですね。ミノタウロスの角は新人にとっては貴重な素材ですからね。わかりました。これ以外は売却ですね。……えっと、少しお待ちください」
そう言ってシルクさんはメモを持って奥に消えていった。