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5話「モンスターとの初接触」



「あれは、ゴブリンだよな」


 目の前で仁王立ちでいるのは、いわゆるゴブリンと言われているモンスターだろう。最弱といえば某ゲームのスライムが代表だが、人型といえばゴブリンだろう。コボルトもか。どっちが最弱なんだろうか。まあ、それはいいとして。

 実際は妖精の部類に入ることもある。

 言葉を発するか発さないかで分かれているのか、大体はモンスターとして扱われているのが多い。

 今回は後者の方で、しかも見た目は動物寄りだと思う。というかかなり怖い。

 猿の方が人に近い見た目をしている。それほど人には程遠い見た目をしている。ただ二足歩行の人型なだけなのだろう。


 しかしまあ、これは問題だ。初のモンスターがゴブリンというのは正直かなりきつい。

 ゲームでは躊躇せず倒すのだが、リアルならそうはいかない。


 ダンジョンに憧れてはいたが、僕も普通の人間だ。狩猟など動物も殺したことのない一般の人間が倒す、つまり動物を殺すということは倫理的に嫌悪感を抱くだろう。しかも人型だからな。

 実際に相対して見ると、はっきり言って怖い。

 こういう風にゴブリンを観察しているのも、距離がかなり空いているから。それとゴブリンが一向に近づいてくる気配がないからだ。

 こう眺めているだけであれだが、


「チュートリアルステージてなんやねん」


 本当にゲームみたいな仕様だ。もしかするとエルフ達との言葉が違うから、訳すとこういう意味だっただけなのだろうか。


 しかし、こう考えているだけではただ時間が過ぎていくだけだし、もうそろそろ行動しようと思う。


 少しある怖さを噛み締め剣を構える。


 一歩前進する。


「ごぅぁぁぁぁ……」


 ゴブリンがゆっくりと動きだす。


 やっぱり怖さはある、が少しずつ慣れてくる。

 ゴブリンの動きを見ながら距離を詰めていく。


 ゴブリンは何も持っていない、素手だ。大丈夫いける。


 後5メートルぐらい近づいたところ、急にゴブリンが走り出した。


「っお!」


 変な声が漏れる。

 別にゴブリンは動かないと言っていない、ただ自分の間合いになったから動き出したのだろう。距離が詰まる。

 動きはそこまで早くない、普通の動物の速さだ。犬と変わらないスピードなら、目で追える。


「落ち着けよ……」


 腰を落とし、カウンター気味にゴブリンの行動に合わせ、剣を横薙ぎに振る。


「ぐぎっ……」


 無事に剣はゴブリンに当たり、吹き飛ばす。

 その反動で自分もよろめく。


 ゴブリンは飛ばされたまま動かない。


「思ってるよりあっけないな」


 ゴブリンに近づきとどめを刺そうと剣を振り上げる。

 大体ここでゴブリンの反撃があるのだが、それもなくそのまま剣を突き刺す。するとゴブリンが光の粒となり消えていく。


「あぁ、こういう倒れ方か。マジでゲームだな」


 光の粒を見ながら呟く。


『レベルがレベル1に上がりました。初のモンスター討伐によりダンジョンに適用されます。レベルの上昇に伴いステータスが上昇します』


 突如頭に直接声が聞こえる。レベルが上がった? まじか。レベル制なのか。


「本当にゲームみたいだな、おい」


 というか、元々はレベル0だったのか。

 手を握ったり開いたりしながら自分の体を確認する。ステータスが上がったと聞こえたのだが、そこまで変わらない気がする。


 しかし、ここまでゲーム制が強いということは、


「素材とかは出ないのかな?」


 そう思っていると、ゴブリンが元いた場所に何か落ちている。


「あるな。うーん、これは牙かな。調べる手段がないからわからないけど。あー、牙って実際に見るとそんなにいい感じはしないな。ゴブリンだからか?」


 そう思いながら拾い上げたゴブリンの牙らしきものをポーチに入れる。


 あっけない終わりに少し残念さが残るが、無事に終わったことに安心する。


『チュートリアルステージのクリア条件を満たしました』


 再び、頭に直接流れる様に言葉が聞こえた。

 すると初めに立っていた場所の方がが青く光る。


「なるほど、これで戻る感じなのね」


 入り口らしき場所に向かう。


「さて戻りますか。防具とか揃えないといけないし、色々聞きたいこともあるからな」


 しかし、このゴブリンで一般の人は戸惑うのだろうと思うが、倒せなくはない。しかも倒した後の後味は別に辛くない仕様だ。

 どうして冒険者の数が少ないのか。稼げないからが理由ではないだろうし。

 少し疑問が残りながらも青い光をくぐる。







 一瞬の白い光にまぶしさを感じたが、目を開ける。

 目の前に広がるのは先ほどと変わらない洞窟の景色だ。


「……は? どういうこと」


 てっきりこのまま元のゼロ階層に戻るのだと思っていたのだが、周りは何も変わらない洞窟の景色。


『プレステージ1階層。このまま5階層までクリアしてください』


 頭に流れる言葉に驚く。


「……まじか」


 あのチュートリアルステージが終わればチュートリアルが終わりで戻れるのだと思っていたのだが、一旦休憩というわけではないらしい。普通なら本ステージに行くために色々準備が必要なのだが、ここはそういう仕様ではないという事だ。

 しかし、この状態で5階層まで行くのは骨が折れそうだ。

 まあ、実はこの状態には納得がいっている。ほとんどのダンジョンに潜った人がすぐに辞める理由が、思っているよりきつかったという事だったのだろう。

 あとここで死んだかだ。この装備で5階層まで進むのは難儀だと思う。そして、最後にはボスではないが、小ボスぐらいの何かがいるはずだろう。で、そこで殺されるか、それまでに諦めてしまうという感じだな。諦めた場合はどうやって戻るのだろうか。


 洞窟の奥を見る。1階層は1本道の様で楽に進めそうだ。


「よし、進むか」


 奥に向かって歩き出す。すぐに奥から1体ゴブリンが出てきた。


「さっき通りにすれば、いけるだろ」


 剣を持ち直し、今回は走り出す。


 先手必勝、横薙ぎでゴブリンに当てる。


「ぐぎっ」


 見事当たりゴブリンを吹き飛ばす。


「やっぱりゴブリンは雑魚と定義付けてもいいのかな」


 ゴブリンが光の粒になる。

 チュートリアルから合わせての2体目もあっけなく倒せた事に安心して前進する。


「お、次は2体同時か」


 奥から出てくる2体のゴブリン。そいつは先程と変わらず武器は何も持っていない。


「1体ずついけば大丈夫。落ち着けよ、俺」


 深呼吸して剣を構え駆け出す。それに合わせて1体ゴブリンも駆け出す。それでも早くはない。


「このゴブリンはアグレッシブだっ、な!」


 先程と同様に横薙ぎをするか、当たりが浅かったのかその場でよろめくだけだ。


「っ、あっ」


 2体目も向かってくる。


 一撃で倒せなかったのは痛い。


「落ち着けよ、落ち着け、俺」


 自分に言い聞かせる。1体目はまだ動こうとしない。なら、そのまま2体目を倒す。


「うおおおおお」


 気合いを入れるように叫び、2体目を攻撃する。

 叫んだ事に戸惑ったのかゴブリンの動きが一瞬停止する。

 その隙を狙い横薙ぎで吹き飛ばす。

 飛ばしたゴブリンは置いておき、1体目に向き直る。ゴブリンは走って来ていた。


「ごぎゃぁぁぁぁ」


 落ち着いて剣を横に振り切る。綺麗に決まった横薙ぎはゴブリンを吹き飛ばす事に成功する。

 そのまま飛ばされた2体のゴブリンは光の粒になり消える。


「ふぅ、ぎり倒せたな。危なかった」


 剣を地面に刺し体重をかけながら一息つく。

 周りを見渡してもゴブリンは出てこない雰囲気だ。


「それと、今回も素材は無しか」


 素材が出なかった事が少し残念に感じる。


「んー。よし、とにかく1階層は終わらせようか」


 そのまま休憩はせずに奥に向かって歩き出す。休憩するなら2階層に入る入り口前でと思ったからだ。


「っと、気合いを入れたんだけどなー」


 少し歩いたところ奥の方に赤い光が見える。

 見渡したところゴブリンもいない様だ。


「2階層の入り口は階段なのか」


 目の前にある下りの階段を眺める。本当に潜る感じのだろう。


「思っているより疲れてるのは確かか。うーん、少し休憩してから降りるか。モンスターも出そうにないしな」


 その場に腰を下ろしポーチから水を出す。量が限られているから節約して飲む。


「にしても剣って難しいな。切る行為をしても切れない、切り傷は付けられるけど切り裂けない。難しい」


 剣をまじまじ見ながら考える。慣れれば切り裂ける様になるだろうから深くは考えていないが。


「もうそろそろ行きますか」


 言いながら立ち上がる。向かうは2階層。そのまま階段を降りていく。







「で、変わらないと」


 階段を降りた先も変わらず洞窟内の景色だった。

 が、聞こえる音は違う。奥から微かに聞こえる音は獣の鳴き声らしきもの。これはオオカミっぽい。


 気を引き締めながら進んでいく。


「ぐるるるるるるるる」


 奥から出てきたのは犬の様な狼の様なモンスター。見た目はかなり凶悪だ。


「割と怖いなこいつも。

 多分なんとかハウンドっていうんだろな。うーん、ブラックハウンドと呼ぼう」


 わかりやすい様に勝手に名前を付ける。


 思っているよりも凶悪な顔にびびる。しかし、相手は1対。これはラッキーと思うしかない。戦いやすい。

 剣を下段に構える。


 まずはゆっくり近づきながら相手の出方を見る。


 途端、ブラックハウンドは走り出した。先手を取られたが元々カウンターを狙うつもりだ。自分で動くより当てやすい。それにゴブリンより速いが、そこまで速いスピードではない。ぎりぎり目で追えるレベルだ。


 よく見て狙う。逃さない様に。


「っ!」


 目の前、後少しで届きそうな時ブラックハウンドは方向転換した。

 素早い動きはブラックハウンドを一瞬見失わせた。


「っな! くそ!」


 死角に移動したブラックハウンドの横からの攻撃を咄嗟に剣でガードする。ガードするが威力は伝わる。飛び掛かられたまま押し倒される。


「ぐあっ……」


 背中に衝撃が走る。

 油断はしていたわけではない、ただ動きに慣れていなかっただけだろう。


「がる、ぐるる、があ」


 ブラックハウンドが上で暴れ出す。咥えられている形で、口は剣で防げているがピンチだ。


 思ったよりもでかい。中型犬より少し大きいか。力も強く腕だけでは振り切れない。


 このままだとやられる。


 咄嗟に足を胴体に滑り込ませ蹴り上げる。


「っ、ぎゃん」


 綺麗に決まったことで、ブラックハウンドが後方に飛ぶ。

 すぐに立ち上がり剣を構える。


 ブラックハウンドはすでにこちらを向いている。ダメージはなさそうだ。


「くそ、死にかけたぞ。まじか、怖え」


 今の攻防に冷や汗が流れる。今までしたことなかった命のやり取り。ゴブリン戦では無かった命の危機。一瞬だが行動することに躊躇する。


「がおぉぉぉぅぅぅぅ」


 ブラックハウンドの雄叫び。

 そのままブラックハウンドはこっちの様子を伺っている。

 咆哮というわけではないのか。まさか、仲間を呼んだ?

 

 やばい、やばい。1体だけでもやばいのに、数体相手は無理だ。


 落ち着け、落ち着けよ。まずは他が来るまでにこいつを倒すべきだよな。僕のスピードでは逃げ切れないし。いくしかない。


「はあああああああ」


 気合いを入れ叫びながら走り出す。剣は横薙ぎの構え。一撃で仕留めるつもりで。


「がおおおおおおおう」


 それに応えるようにブラックハウンドも咆哮し向かって来る。


 落ち着け。一度あったことは二度食らうな。


 思った通り目の前でブラックハウンドが方向転換する。


「らああああああ」


 右に転換したブラックハウンドを見定め、剣を振り抜く。


「ぎゃうっ」


 確実にヒットした横薙ぎはブラックハウンドに大きなダメージを残した。


 吹き飛ばされたまま、動かない。光の粒にっていないということはまだ生きてるってことだ。走り出す。


「く、うおおおお」


 剣を突き刺す。最後の一撃。

 ブラックハウンドはそのまま光の粒となって消えた。


「はあ、はあ、はあ。やばかった」


 肩で息をする。ゴブリンの時とは違う、確実に命が危なかった。


「流石にこの経験は怖いわ。一旦落ち着こ……」


「ぐるるるるるるるる」

「ぐぁうぅぅぅぅぅ」


 奥から響く複数の唸り声。


「そうだった、仲間呼ばれてたんだったよな」


 背中に伝う冷や汗。

 徐々に唸り声は近づいて来る。


「どうする……」


 選択肢は決まっている。この距離ならまだ間に合うと思う。

 行動は、


「逃げる」


 そのまま後ろの元来た道を、入り口に向かい走り出した。



 

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