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29話-1「ニシカワケンジ」



「どうした?」


「ちょ、ちょっと待って下さい。訳がわからないですって。別に兼次さんと戦わなくてもいいでしょ」


「いや、俺は戦う事は意味があると思って言ってる。早く構えろ」


 まじか、このタイミングでってミノタウロスを倒したばかりなんだけ……そうか、このためのポーションか。

 それにしても戦うことに僕は意味を見出せないのだが。


「まず、完膚なきまでの敗北ってどういうことですか。負けたとしても、そんなの兼次さんとなら当たり前って思いますよ」


「ん? そうか? そう思わへんくらいに負けさせるつもりやけど?」


 何言ってんだよこの人。


「つまりは僕を殺すつもりって事ですよね。いや、殺さないでしょ」


「そうやな。さっきまでは死んでほしくなかったしな。でもまあ、もし死んだら死んだでそんなもんかもしれんな。俺の見る目が悪かったって割り切るわ。ミノタウロス倒せてもなーって」


 そう言って兼次さんの威圧が一層強くなる。


 わけわかんねーよ。さっきまで死んだら元も子もないって言ってたやんか。


「じゃあ、今じゃなくてもいいんじゃないですか? ミノタウロス倒したばかりですし」


「何言ってるんや? そんなにダメージ無いやろし、ポーションも飲んだやろ」


 わかってたけども!


「やっぱり戦う意味な……」


「そうか、やっば俺の思い過ごしやったわけか。残念やわ……」


 そう言って剣を下ろす兼次さん。


「俊、お前は最初だけ粋がるどこでもいるチキン野郎やったんやな。そこらへんで雑魚モンスター狩ってる奴と一緒か。あーあ、俺の目も悪くなったもんやなぁ」


 ちょっと待て。それは言い過ぎなんじゃないか?


「……雑魚か」


「……は?」


 その言葉には流石に頭にきた。


「兼次さん。流石にそれはないでしょう。訂正して下さいよ」


「お? 聞こえたか? でも本当のことやろ? レベルが上の奴には勝てないって思って戦おうともせず、弱いものには強気で出るんやろ? 雑魚やんか」


 笑いながら言う。

 二回言われたその言葉に対して深く怒りがこみ上げて来る。


「流石に貴方にそこまで言われる筋合いはないです、よ」


 剣を抜きながら言う。


「お? やる気になったか? 雑魚山」


「っ! ……ぶっ飛ばす」


 地面を蹴り全力で走る。


「……やっとやな」


 何か聞こえたが関係ない。ここまでイラついたのは初めてだ。全力で、一瞬で決める。


 走りながら手を前にかざす。初見ではかわせないだろう、自身はある。

 走りながらだと魔法はあまり安定しないが、これは魔力を込めるだけでいける。

 最初に習った基本の魔法。


 タイミングを見て左手で目を覆う。


「『ライト』」


 日常で使う生活魔法とは違う威力の魔法は、かざした右手の先で弾けるように光輝き目の前を光で埋め尽くす。


 そしてすぐにスキルを発動する。


 魔法は言葉にする必要があるがスキルは慣れれば念じるだけでいいから便利だ。

 瞬間にスキル瞬動を使い兼次さんの裏に回る。


 この一瞬が勝負。間髪入れずにスラッシュを発動する。初見でこれは避けられないだろう。「ライト」による目眩しからの距離を詰め攻撃をする。今までの僕の魔法の使い方を見てこの発想は浮かばない筈だ。

 殺しはしない。動けなくすればこっちの勝ちだ。

 これで決ま……


「……甘いな」


 言葉が聞こえた瞬間激しく金属と金属かぶつかる音が響く。


「……っ!」


 は? 防がれた!? 嘘だろ!

 盾によって防がれた一撃。その現状に一瞬思考が止まる。


「一瞬でも止まるんじゃねぇよ。次が来るぞ」


 その言葉で我に帰り状況を把握するが、


 懐に潜り込まれる。


「シールドバッシュ!」


「ごはぁっ!」


 訳もわからず吹き飛ばされる。


 思考が定まらない。そのまま地面に打ち付けられ転がる。


「……っか、はっ」


 肺に入っていた空気が全て出てしまい、苦しくてその場でもがく。


「戦いでは一瞬の隙が命取りになる。人ならまだしも本能で動いているモンスターならなおさらだ」


 息も吸えない。何を言っているのか聞こえない。耳が遠くなってる。


「……はっ、はっ、はっ」


 少しずつだが、やっと息が吸えるようになり呼吸をする。


 今でも何が起こったのかわかっていない。攻撃を防がれたと思ったら吹き飛ばされた、そして今地面に転がっていることだけ。


 あの完璧だと思った攻撃を防がれたことが理解が出来ていない。


「ちなみに今のでお前は一回死んだな。あと何回死ぬやろか」


「……はあ、はあ、はあ」


「はははは! そんな睨むなって! ん? なんや、なんで防がれたのか聞きたそうな顔してるな」


「……はあ、はあ、はあ」


 思考が! まとまらねぇ……


「あの技は良い選択やったよ。まあ、「ライト」を閃光玉みたいに使うのは攻略していけば気づくことやからな対処はできるよ。しかもな目を隠したらあかんよ。あれはバレる。ましてや盾職にあんな大きな動きはダメや余裕で対処できるわ。その後の瞬動からのスラッシュの流れは良かったけど見えてたら対処はできるわな。そういう事や」


 わけわからんわ。目を隠すタイミングはバレても対処できないタイミングにしたはずだ。それでも対処できるのはレベルの差が物語ってるのか。


 少しずつだが頭がはっきりしてきた。


 立ち上がる。


「お! 立つんか」


 ダメージは大きい。ポケットから回復薬を出し飲む。

 構える。


「いいね」


 兼次さんも構える。



 

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