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27話-4「これも出会い」



 それからシルクさんと別れギルドを出て酒場ラポールに向かう。

 酒場ラポールはギルドから近く便利なので殆どの冒険者は行った事はあるだろう。ダンジョンの中では珍しい日本の料理を出す店で僕でも一回は来たことある。食品はダンジョン内の生き物なんだけど、味も似ていたと思う。

 ラポールと言う名前からして、様々な冒険者との交流の場としても使われてるらしい。ダンジョンからあまり出ない冒険者にとってはいい酒場と思ったらいいだろう。


 到着すると面白い看板が見える。ラポールにちなんで看板が橋の形をしているわけだ。架け橋という意味らしいから納得するが、地球の言葉をエルフたちが知っているとは思えないんだが。オーナーは日本人なのだろうか。


 ガラス張りの引き戸である扉を開ける。


「いらっしゃいませー」


 店に入ると聴き慣れている挨拶と共に奥から店員さんが歩いてくる。中は良くアニメや漫画で出てくる中世ヨーロッパ風の酒場という雰囲気ではなく、日本の居酒屋チェーン店だ。


「お一人様ですか?」


「いえ、連れがいるはずなんですけど……」


「お連れ様ですか。えーっと、あの奥の席の」


「んー、あ、そうです」


「では、ご案内いたします」


 そのまま店員さんについて行く。


「お疲れ様です」


「おー、奥山くんか! 早かったなー!」


 席に着くと待っていたのはガタイのいい男。今日ダンジョンに潜る前に会ったばかりの西川兼次さんだ。こう見るとやはり普通の人より一回り大きく見える。


「まあとにかく座り! 何飲む? ビールでいいか?」


「あ、すみません。ちょっとお酒は飲めなくて、烏龍茶的なものありますかね」


「なんや、飲めへんのか。見た目通りやな! すみませーん! 烏龍茶一つ!」


 はは、ビールも烏龍茶もあるんかい。まあ似たような味の物を使ってるんだろうが。前来たことあるっても軽い食事したぐらいだからな全然気にして無かったわ。


「あとなんかつまめる物があった方が良いよな。枝豆と餃子とあと……なにがええ?」


「あ、いや、別に何でも良いんですけど。じゃあ湯豆腐があったら」


「あー、湯豆腐はないな。冷奴でええか?」


「じゃあ、それで」


 やっぱメニューが実際の居酒屋と同じなんだけど。ここにいるといつのまにかダンジョンから出たのかと錯覚するな。


「ここに来たんは初めてか? 品物の種類に驚くやろ。まあ、ここは日本人が経営してるからな。ちなみに俺の同期がやってるんやわ。あ、そうそう。今日は俺のおごりやから遠慮なく食べや」


「あ、はい」


 まじか。ガチ日本人がやってるんか、納得するな。

 しかし、この人はやっぱり人当たりがいい。表裏が無さそうだし、安心感がある。尚且つ話しやすい。


「お待たせしましたー。ウーロン茶です。あとお通しです」


 飲み物が来る。お通しって、完璧居酒屋やな。


「じゃあ、乾杯!」


「か、乾杯」


 何に対しての乾杯なのか。


「さてさて、いっぱい食べてな。何食べようか」


「そうですね、いただきます……うん、味も日本と変わらないですね」


 ここまで気を許せる人でも、そこまで長居しようとは思ってないし早速話題に入ろうと思う。


「西川さん早速ですけど僕に何か用事があったのでしょうか?」


「ん? 兼次でええよ。そうやな、奥山くんは今何階層まで攻略できてるん?」


「えーっと、17階層をさっき攻略して来ました」


「ん? 17階層まで行ったんか!? ちなみに攻略始めてまだそんな経ってへんよな?」


「そうですね、今週は毎日潜ってますけど、まだ二週間ぐらいですね」


「そうか。それで……」


 何かおかしかったか? 進むスピードが遅いとか。人それぞれやし何か言われるのは嫌なんだけど。


「やっぱり遅いですかね。まあ、僕のスピードでするんで……」


「いや、遅くはない。決してそれはないな。逆に早い方だ」


 そう言いながら考え込む兼次さん。目は真剣だ。

 別に遅くないならいいんじゃないのだろうか。


「何か引っかかるんですか?」


「そうやな、今までに君以上に早く攻略した奴はいるが、今までの平均の中では早い。その点でも気になるところがあるんやけど、一番はパーティ、つまり仲間がいないことやな。まあ二週間の短さで無理もないけどな」


 パーティか、それは僕も考えていた事だからからわかるが。


「一応めぼしい冒険者は見つけてるんですけど、20階層攻略まではソロで行けるかなと思っていて」


「ほう、考えてはいるんやな。その成長速度なら納得か……」


 何かに悩みながら話す兼次さん。


 うーん、何か僕を見定めてるみたいで嫌だな。別に気にしてもらわなくてもいいんだが。まあ、先輩の言うことは聞いといた方が良いか。


「お待たせしました。枝豆と冷奴です。餃子はもう少しお待ちくださいね」


 頼んだ品が来る。その間も顎に手を当てながら悩んでいる。


「いただきます」


 反応は無かった。


 とにかく食べるか。

 ……うん、美味いな。


「よし! 決めた!」


「うお、」


 急に叫び出すからびびったがな。


 え、ちょっと待って。この雰囲気は何か変なことに巻き込まれる感じなんだけど。何か兼次さんの目が輝いてるんですが。


「奥山くん、明日暇か?」


「暇と言いますか、攻略しには来ますけど」


「じゃあ、朝は空けれるな!」


「え? あ、はい。別に空けられますけど……」


 やばいこのペース、勝手に決められそうなんだけど。


「あ、あの……」


「よし、決まりだ! 明日の朝、俺とダンジョン潜るぞ!」


「……はい?」


 予感は当たったのだろうか。

 なぜか急におっさんとダンジョンを潜るイベントが発生してしまった。



 

27話はこれで終わりです。

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