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27話-3「これも出会い」



「……はぁ」


 シルクさんは考え込む様な、落胆する様な表情になる。


「えーっと、なんかまずい事でも?」


「ま、まずい事って! シュンさんも言われたんじゃないんですか? あの子、シャロンのところに来ないかって! 私の所にいたって成長しないって。そう言われたんじゃないん、ですか……」


 最初は僕のことを怒鳴る様に声をあげていたがどんどんと声に力がなくなってくる。シルクさん的にはかなり深刻な問題なのだろう。


「シャロンに声かけられたら大体の人はそっちに行っちゃって。この前もユウヤさんも行っちゃいましたし。このままじゃシュンさんも……」


 そうか、あの祐也が行ったらそりゃ心配になるわな。


「そうですね、声はかけられました。内容はまあ、僕にとっては良いことでしたけど……」


「やっぱり……」


 うわ、やべ。むっちゃ涙目やん。


「はっきり言ってメリットはありました。でも一つ疑問がありまして」


「疑問ですか……」


「はい。えーっと、パーティを組む時なんですけど必ずそのパーティの担当は一人じゃないといけないルールがあるんですか?」


「あ、パーティですね……固定パーティを組むなら担当は一人しかつけません。大体はその代表の担当になることが多いですが」


 やっぱし、固定パーティは、か。


「じゃあ、固定パーティを組まなければどうですか? 例えば一時的な臨時パーティとか」


「固定じゃなく臨時なら別にそういう決まりはありませんけど」


「わかりました」


 そう言って僕はシルクの頭に手を乗せ、ぽんぽんと叩く。


「……えっ」


「じゃあ大丈夫です」


「それって……」


 涙を溜めた目で僕を見るシルク。


 うお、やばい。これは破壊力がやばいぞ。この表情は理性をおかしくさせてしまう。

 頭に手を乗せたのも可愛くて乗せたかった願望が先走りしただけで、何も意味はないというのに。


 と、とにかくここは我慢して。真面目な表情を保って。


「はい、もちろん担当は変えませんよ。シルクさんのままです。 別に変える意味もそんなに感じなかったですし、シルクさんにはかなりお世話になってますからね」


「シュンさん……」


 実際にお世話にはなっている。魔法のサポートも悪く無かった。後々何かあるとしてもタイミングもある。何しろ性格が合っているのが一番の重要項目だ。


「これからもよろしくお願いします」


「……はい!」




 と、そんな告白紛いなやり取りをギルド内でしていたことに後々恥ずかしくなり、どちらも今赤面中である。

 一部始終見ていた冒険者やギルド職員さんからヒューヒューと声が聞こえる。カウンターで見ていたシュナさんも言っている。


 むっちゃ恥ずかしいわ。


「あ、じ、じゃあシュンさんも帰って来られたばかりですし、まだ後処理は何もしてないでよね。わ、私用意しますので待っていてください!」


 そう言ってまだ赤い顔のままギルドの奥へと走っていく。カウンターに戻ったシルクさんがシュナさんにいじられている。


 やはり可愛さは重要なのだと思います。


 そんな事を見ながら思っていたのだが……

 って、それは置いといてだ。シルクさんの反応。あれは本当に自分が落ちこぼれだと言われている反応だ。別に対応が悪いわけでもない。説明は丁寧だし、愛嬌はあるし、中級までならこれ以上のサポートはいらないと感じられる。

 サポート面ではシャロンが言うほど悪いことはないと思う。ただ良い冒険者に恵まれてないのだろう。まさかと思うが、それも誰かの陰謀なのだろうか。

 少なくともシャロンはシルクさんの担当を掠め取って行ったのは事実だしな。



「はあ、はあ、はあ。お、お待たせしました。では攻略の報告と換金ですね」


 こうやって走る必要がないのに走ってくる事も頑張っている感もあるし、健気さも伝わってくるし、なんでだろうか。




 今日の攻略の報告などの処理が終わる。やはり今日の成果は上々で、モンスターの素材やらクエストやらでお金は手に入れられた。素材は今までの攻略と同じでそこまで大した事ないが。あるとすればオーガの素材ぐらいだが、それもこの量ならまだ何の武器も作れない状態だ。売ってお金に変える方が今の選択肢としてはいいだろう。武器は良いのを持ってるわけだし。


「ってことで、今日はまだ時間が早いのでちょっとぶらぶらして帰ろうかと思ってるんですけど」


「それはいいですね! ダンジョンの中を知って欲しいですし」


「そこで、シルクさん時間があればどうです? ちょっと付き合いませんか?」


 と、僕らしからぬ発言をしてみる。まあ、さっきのもあったし甘いものでも食べて愚痴でも聞いてあげようかな、と思ったんだが。


「え! 本当ですか! ちょっと聞いてきます!」


 と少しテンションを上げたシルクさんは奥へと消えていく。

 この反応はかなりの好感度だと思うんだが、どうだろうか。


 お、戻ってきたけど……あれ、少し残念そうにしている。


「シュンさんすみません、今日はちょっと空けれないみたいで……本当に残念ですけど」


「そうですか。ちょっと残念です。じゃあまた誘いますね」


「はい! お願いします!」


 そうか、ちょっと残念だな。でもまた誘ってもいいみたいだし次に期待するとしよう。


「あ! 後ですね、すみません忘れていたんですけど、ちょっとシュンさんに伝言がありまして」


 何だろか。


「ケンジさんってご存知ですか? ニシカワケンジさんという方なのですが、今日の朝に広場で会ったとおっしゃってたのですが」


「あー、知ってます。中級冒険者の」


「そうです。そのケンジさんからですね、「酒場ラポールで22時頃まで待ってるから時間があれば来て欲しい」との事でした」


 待ってるって、何かあるのかな。てか、長いこと待ってるな、あの人も。


「すみません、先に言うべきだったんですけど、実はさっきまで忘れてしまってまして。シュンさん時間がある様ですし、思い出した時、丁度良いのかなと思っちゃって」


「なるほどね……まあ、色々あったしね」


 いやいや、丁度良いって。そう言うわけでもないけど。

 まあ、行くけどさ。別に時間があるし、面倒くさいけど。


「わかりました。じゃあ、行ってみます」


「はい、ありがとうございます。一応ケンジさんは私の担当の中で一番レベル高いので、色々と教えて下さると思います。シュンさんの先輩になりますね」


 へー、シルクさんの担当なんだな。あの人がいるなら別にそこまで落ちこぼれって感じでもないと思うけどな。そう見たら別に良い人も居るんじゃないか。



 

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