27話-2「これも出会い」
転送ゲートからギルドまでは少し距離がある。その間に色々な冒険者とすれ違う。
今日が平日なのにこの人の量は多いのだろう。20人はすれ違ったと思う。
この人数が全員今までの階層内で会わなかったという事は僕よりも攻略してるのだろう。攻略していくと後々この人達と出会うのだろうか。
しかし、ぱっと見そんなに強そうな奴は見当たらないな。断然今の僕よりは強いだろうけど、手が届きそうな感じだ。大体のレベルが25前後。来る途中に絡まれたおっさんと同じぐらいのレベルだ。そうなるとそこまで脅威に感じない。僕もすぐに追いつくだろう。
そう考えるとあの西川さんの38レベルは他と差があるんだと感じるし、レベルの差だけではなく何か根本的に違うとも感じた。
そんな事を考えながらギルドに到着する。
今日1日の成果は割といいと思う。体力はかなり使ったが、その代わりモンスターを大量に狩れた。落としたドロップアイテムは全て持ち帰れたわけではないが、昨日よりは多いだろう。
「あ、シュンさん! おかえりなさい!」
ギルド内に入るといつものようにシルクさんが走って来る。
「只今戻りました。今日は上々でしたよ。その分大変だったんですけど」
「うん、うん」
「でも思うんですけど、シルクさんこうやって毎回毎回迎えに来るのも面倒じゃ……」
ん? あれ? 何か違和感が……
この人、シルクさんじゃない。
「え? え? ……えーっと」
見た目はシルクさんと瓜二つだが、少し違う。少しこの人の方が声が高いし、もしかしたら背丈も違うだろう。何よりも髪の色が違う。シルクさんは薄い黄色でレモン色と言うのか僕が知っているエルフらしい髪色だが、この人は純白の白だ。シルクの様な神秘的な色だ。
ふむ、どちらかといえばこの子の方がシルクって名前が合うかもしれない。
「えー? どうしたんですかシュンさん。何か別人でも見るような目をしてますけど? 私シルクですよ? あ、そうですよね、お疲れですね!」
「シルクさん? いやいや。えーっと、すごく似てるけど違うよね? ゲームとか何かしてる感じ? ここまで似てるってことは魔法かな」
この子はシルク言い張るがもう違うとわかってしまったら覆せない。ただ髪を染めてましたーとか言われても話すと違いがよくわかる。決定的なシルクさんにあるドジな部分が感じられない。
「へー、騙されないんですね。普通もう少し騙されるんですが、中々ですね。あ、ちなみに魔法ではないですよ。……うん、シルクにはもったいないな」
え? 魔法じゃない。ってことは、姉妹か何かか?
それよりも。
「もったいない?」
シルクさんにとって勿体無いとはどう言うことだろうか。
「はい、もったいないですね。あなたかなり強い人間になれると思いますよ。すぐに中級になれるぐらいは」
「へー、本当に?」
ほう。そこまで僕の力を買ってくれるとは素直に嬉しい。
「本当に。今対面して確信しました。あなたは才能ありますよ、冒険者の才能が。でもそれはシルクのところにいる限りは難しいでしょう。かなり苦労すると思います」
「え? ちょっとまって、それってどういうこと?」
「いや、そのままですよ。シルクには人を成長させる才能がないですから。サポート能力はないですよ、あいつには。シルク担当の大体の冒険者が途中で断念して辞めていくのはその証拠です」
ちょっと待て、そんな話は知らないが。シルクさんにサポート能力がない? いやいや、今のところすごく助かってるのですが。
「だから早めに担当を変えた方が良いと思いますよ」
「担当変更?」
「そうです、担当変更。ギルドで手続きすれば変えられますから。あなたも知ってる人でしたら、ユウヤさんがこの前私の担当と変更になりましたし。シルク担当ならギルドがすぐにでも許可しますよ」
「え? あの祐也が?」
まじか、あの祐也がシルクさんの担当を変えたのか。考えられん。
「はい。まあ理由はあるんですけどね。新人でナカムラコウイチさんって人が私の担当となったんでパーティを組むにあたって担当変更となったんですよ。ユウヤさんも別に気にしてなかったようですし」
「え、ちょっと待って。話が急過ぎて、一瞬待って」
「はい、どうぞ」
中村さんと祐也が一緒にいたのは想像してた通りパーティを組んでいたと言うことで、そうなれば。
「パーティ組むのにあたって担当が違うとダメなんですか?」
「そうですね、本格的に組むに至っては」
まじか。そんな落とし穴があったとは。色々と考えないといけないことが多くなってきたな。
「ということでシュンさん、私のとこに来ませんか?」
「……はは。なるほどね」
「ふふ。シュンさんの想像している通りですよ。来てくださればかなりのメリットがあると思います。と言いますか、まだこのタイミングならメリットしかないです」
ふむ、この子賢いな。僕が今考えてる基本的なことはわかってる感じだな。言ってる通りシルクさんよりは育成の才能はあるかもしれない。少し腹黒そうだが。
「僕が誰とパーティ組むとかわかってるみたいだけど」
「ふふ、選択肢がそれしかないので」
「ははは。君賢いね。君が言う通り君が担当になった方が効率はいいと思うわ」
「ですよね。シュンさんならそう言うと思っていました。では、私のところに……」
「いや、それはちょっと考えるわ。あと、この話はシルクさんも交えてした方がいいと思うし」
「シルクですか。それはいいんじゃないですか。こういうことは冒険者様主体で考えられるものなので」
ん。ここまで強く押すって事は何かあるのかな。それか嬉しい事だけど、ただ単に僕を強引にでも自分の担当にしたいのか。
「そこまで押されるとなー。まあもう少し考えるわ。それと……」
「ちょっと! シャロン!」
そのタイミングで大きく割り込んで来る声。
「何してるの! 私の担当に何か用?」
「あっ、シルク……」
走って来たシルクさんの登場だ。多分もう少しで来ると思っていたから、驚きはしない。
「もしかして!」
「ん? 何もないよ? 噂のルーキーが気になっただけだから、じゃあ私は行くわ。シュンさんまたよろしくお願いしますね!」
「ち、ちょっと! シャロン! ……逃げたな」
シャロンと呼ばれていた子が走って行く。
あの子シャロンというんだな。
「何なのあの子……あ、シュンさんお疲れ様です。ところで何を話していたんですか?」
そう言いながらシルクさんはぐいっと顔を近づけ問い詰める様に聞いてくる。
「あーそうだな、これからの攻略について聞かれたかな? もしかして他の担当の人と話したらダメな決まりでもあった?」
「いえ、そんな決まりはないんですけど。やっぱりあの子話したんだな……」
シルクさんが下を向く。