27話-1「これも出会い」
更新再開します!お待たせしました!
更新の滞りの言い訳は活動報告で……
青白い光に包まれているこの状況は何か心地良く感じる。
その浮いているような感覚は一般ではあり得ない事なのに、何故か懐かしさを思い出させてくれる。
「……到着、か」
17階層を攻略してから何もなく無事にゼロ階層の転送ゲートに到着する。
ここの景色も何回も見たな。一番最初のチュートリアルと違ってただの洞窟の景色なのが残念だけど。
「お帰りなさいませ、オクヤマ様」
「あ、ただいまです」
転送ゲートを出てすぐに、横から声をかけられる。ゲートの側に椅子を置いて座り冒険者を待っているエルフの女性に驚くこともなく、もう慣れてしまったものだ。
もちろん最初は驚いていたが知らなければ仕方がないだろう。
「本日二回目の攻略は上手くいきましたか?」
「まあ、上々ですね」
「それは良かったですね」
会話はそれだけで終り、女性は閉じていた本を読み始める。別に何か話すことがある訳ではないから良いんだが、もう少し会話が続けばと思う。コミュニケーションは取りたいものだ。
でもまあ、この人も仕事でここにいる訳で僕と話すのが仕事ではなく、冒険者の応急処置兼連絡係でいる訳だから仕方ない。
「あのー」
しかし、今日はなぜか少し話しかけようと思った。
「セシルさん、その本は何を読んでるんですか?」
「あ、すみません。今日は回復はいらないかなと思いましてすぐ本を開けてしまいました」
「え、はい。今日は怪我はないので大丈夫ですけど。えっと、その本なんですけど」
「あ、お気になさらずに」
それで話は終わる。そのままいつも通りセシルさんはまた本に目を落とした。
うーん、話が続かんな。てか、わざと話を終わらせようとしてる感じがする。
そうだなこのまま続けても自分が傷つくだけだし、今日はこれで終わっておこう。
「そうですね。ありがとうございました。じゃあもう行きますね」
「はい。お疲れ様でした」
その返事も呆気なく、淡々としたものだ。そういう人なのだろうこの人は。
しかしまあ、セシルさんには回復でかなりお世話になりそうだから仲良くしておきたいものだが、中々難しそうだ。
そんな事を考えながら僕はこの場所を出て行く。
まずはいつも通りギルドに戻るとしよう。攻略の報告とアイテムの換金など、ギルドで色々しないといけない。
洞窟内に少し薄暗い光が差し込んでいる。日本時間ではもう夕方で日が暮れ始めているだろう。ダンジョン内も同じ時間で動いているようでここを出れば夕焼けが見れるかもしれない。
「あれ? ダンジョン内って太陽あったっけ? んーと、無かった気が……」
そんな今までに気にしなかった疑問を持ちながら、少し光が眩しく目を細めて外に出る。そこはやはりいつもと変わらない景色が映っていたのだが。
「あっ……」
見たことがある二人の影が目の前を通る。
「ん?」
「あ?」
相手側も気づいたのかこっちを向き立ち止まる。
「え? あれ?」
その片方はこのダンジョンで唯一見知った顔。また会うだろうとは思っていたからそれほど驚いていないが、もう一人の顔が意外なもので疑問符が頭にちらつく。
「祐也……」
「お、おう……」
見知った顔、田城祐也と目が合い挨拶をするが、気不味い空気になる。
やっぱりあの時の事を引きずってるのはあるのだろう。
空気がちょっと悪くなる。別にこの空気にしたかった訳ではないからどうにかしたい。
とにかく喋るか。
「あー。久しぶりだな。元気だったか?」
「まあまあかな……そっちこそ……」
「お、おう。こっちはまあ順調だけど……」
ああ……僕がコミュ障だったころの受け答えを思い出すぜ。てかこいつならもっと突っかかってくると思ってたんだけどな。以前とは全然違う、テンションが低いな。
「というかまだダンジョン潜ってたんだな」
「あ? 悪いか?」
「いやいや。悪くないけど。まあな、あんな事があったし、ちょっとな」
「……まあ、そうだな」
そこで話は途切れる。こいつがこんな感じなのが調子狂う。
「ちょ、ちょっとすみません。なんだかわからないですけど、この空気やめてもらえませんか?」
と、横から話を挟まれる。内心それに助けられた。
「あ、そうですよね。すみません、幸一さん」
「いやいや、謝らなくていいけど。どうしたん祐也くんらしくないよ。なんかこの人とあったのはわかるんだけど」
「えっと、この人が前に話してた……」
「あー、あのヘルハウンドの時の」
なるほど今の話を聞く限り、大体のことは話してるのか。
「でももう終わったことだしね、切り替えないと。まあ、気持ちはわかるけど」
「そうっすよね……」
良いこと言っているけど、中々それは厳しいんじゃないか。人間関係が無かった僕でもその現場に居合わせただけで割とダメージ食らってたしな。
しかし、祐也はまだ立ち直ってない感じかな。僕と会って気まずいのは仕方ないとして、全く元気がない。このままダンジョンに潜ってもいいのかな、と思うぐらいだ。
「ええっと、すみませんね祐也くんがお世話になったみたいで。でももう大丈夫ですよ、こっちはこっちで上手いこといけると思うんで。そんなに気にされなくても大丈夫です」
む? 顔に出てたか。そんなに心配してるわけではないんだけどな、一度気にしたらちょっと気になるだけで。いや、今週一回もこいつのこと思い出してなかったっけ。
任せるも何も、今はこの人が適任なんだろう。
「そうですよね。まあ一度知り合った中なのでちょっと心配してました。でも中村さんがいれば大丈夫ですね」
「そうですね。……ん? えーっと私自己紹介しましたっけ?」
「え? してませんでしたっけ? だったら祐也が言ってたような」
「んー。まあいいです。では私たちは行きますので。祐也くん行こうか」
「あ、はい」
そう言って二人は転送ゲートに向かう。
んー、一言言っておくか。
「おい、祐也!」
「ん?」
「まあ、頑張れよ」
「おう。お前に心配される謂われはないけど、幸一さんもいるし、頑張る、わ」
そう言って歩いていく。
うーん、やっぱり変わったな、良い意味で。大人しくなった今のあいつなら何となくチームは組めそうだ。
しかし、中村さんの名前を呼んだのは不味かったな。ぎりぎり濁せたと思うけど……いや、バレてるかな。初めて会ったのに名前知ってるとかキモいし。
二人が洞窟内に消えたところを見届ける。
「さて、僕も戻りますか」