24話-4「再戦と再会」
叫んでいるおっさん。
またかと、ため息をついてしまう。
うるさいし、同じ様な光景を見るのは迷惑だ。
というか僕の時あんなことがあったのにまだ懲りないのか。人に絡まないと生きていけないのか?
「で、どうしてくれるんや? 慰謝料高くつくで?」
「……は?」
慰謝料とか同じような事を言ってるし。
えーっと、絡まれている方は……割と地味っぽいな。体格差はかなりある、僕とあまり変わらないな。もしかすると年齢も変わらないんじゃないか、青年だ。
「は? って、お前なめてんのか? 今のお前の立場わかってんのか!」
「……はあ。なんですか?」
あいつ、むっちゃ喧嘩売ってるやん、大丈夫か?
ん? てか、あいつ見たことある気が、
「おまっ! 喧嘩売っとるんかぁ! なめてるといてまうぞ!」
「はあ……」
「っ!! くそガキがぁぁぁぁ!」
やべ!
おっさんが振りかぶった、まじでこれやばく……
「ぐあぁぁ」
……って、まじか。
見た光景に驚きが隠せなかった。
その光景は誰が見ても驚いたと思う。
はっきり言ってレベル差はあった。おっさんはレベル23、絡まれていた方がレベル8で僕とあまり変わらないレベルだった。「サークナ」で見ていたからより驚いた。
意外なことに、飛ばされた方がおっさんだったからだ。
殴りかかったはずのおっさんが青年の後方に飛ばされた。きれいに宙を舞うように、地面に叩きつけられた。
見ていたから分かるが体術ではない。ボソッと呟いた言葉、あれは完璧に魔法だ、風属性か。
「いってぇ……なんだよ、何が起こった」
おっさんは自分の状況がわかってないみたいだ。ただわかっていることは自分が転けていることだけ。
周りにいた野次馬の冒険者やギルド職員も驚いていた。
「お前、何した? なんで俺が転けてるんだよ!」
「……え? はあ、わからないとか終わってるな」
おっさんの叫びに対して青年が呟く。
へぇー。この青年中々強いな。
地味な見た目しているのに心が強い。普通あの体格差ならビビるだろうが冷静に淡々としてる。そして魔法の使い方もいい。
うん。かなりいいな。
「じゃあ、俺行くんで」
青年は叫ぶおっさんを気にせず、そのまま後ろを見ずにギルドから出て行った。
「あのガキぃぃ、くそがぁ! おいこら!見せもんじゃねぇーぞ!」
おっさんがキレてる。そして立ち上がって叫びながらギルドから出て行った。
ガチで負け犬の遠吠えだな。これは笑える。
「うん、いいもの見たな」
今の光景に呟く。
しかし今の青年は中々いい。まだ僕より攻略はしていないと思うが、すぐに追いつくだろう。
別に僕の攻略が早いわけではないからな、近い。
「えー、シルクさん、今の人って」
「あ、モリナガさんですか? あの人新人見るといつもああなんですよね。かなり困っちゃってます。でもその割には大したことないレベルなんですよね」
「え、あ、違います。あの青年の方ですけど……」
あ、そうか。あの光景ならおっさんの方に目線が行くよな。てか、あの人森永って名前なんだ。どうでもいいけど。
てか、やっぱりギルドでも厄介者なのか。
「あ、すみません。あの青年ですか。えーっと、シャロンが担当の新人さんなのですが。えーっと、確か、ナカムラさん? だったと思います」
「ナカムラさんかぁ、へぇー」
ぼそっと呟いてしまう。
「シュンさん気になるのですか? でしたらどういう方か聞いておきましょうか?」
「え? ああ、別に大丈夫ですよ。自分で聞きますから」
シルクの提案を素直に断る。
はっきり言って興味はある。
理由は僕と雰囲気が似ていること、レベルが近いこと、そしてレベルの割に強いこと。僕がパーティを組むに至って好む条件が揃っているからだ。
次あった時には声をかけたいなと思う。
しかし、見たことあると思ったらあれだ。初めて見た時とかなり印象が変わっているからわからなかったが、僕が変わるきっかけとなったあの出来事の時の人。
電車に飛び込んだあのサラリーマンの男性なんだ。
これで24話終わりです。次は25話!