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57話-1「51階層」



 目の前に広がる洞窟の様な空間を順序良く進んで行く。


 最初はその広さに驚いていたが、先に進むにつれより広い空間へと変わっていく。それと、ここまでの道は迷う要素がない一本道だ。


「また広くなったな。この広さやったら、この広さにあう大きめのモンスターが出てくるってことなんか?」


「それだったら巨大すぎだろ」


 兼次さんの言葉に大樹さんが返す。

 兼次さんの言う通りなら、天井に届く大きさのモンスターが出てくる可能性がある。それはやばい。

 もしその大きさのモンスターが出てきたら僕達は全滅する。出てこないでほしい。


 そう考えていてもここまで歩いて数分、まだモンスターとは遭遇していないが……『サークナ』に引っかかった。

 小百合さんの索敵にも引っかかったようで、全員に呼びかける。


「みんな、モンスターの登場よ。前から5体近づいてきているわ」


「わかった。小手調べや。いつも通りの連携で行くで!」


「「了解!」」


 桐島君の支援魔法が全員にかけられた。

 そして戦闘が始まる。


 目の前に出て来たのはホブゴブリン。しかし、いつものホブゴブリンとは違い5体とも武器を持ち、統率が取れている様に見える。


「噂のホブゴブリンソルジャーか? 気ぃつけや! 連携してくるで!」


 僕達を見つけた途端、ホブゴブリン達が動いた。

 兼次さんが言った通りホブゴブリンの動きに規則性を感じる。

 一番後ろにいたホブゴブリンが杖を構えて火の魔法を放ち、それに続き弓を持っていたホブゴブリンが矢を放った。

 その攻撃は兼次さんと大樹さんが盾で受けきるが、そのタイミングで剣と盾を持った2体のホブゴブリンが二人に接近していた。そしてそれを囮にする様に双剣を持ったホブゴブリンが横から回って美優さんを狙う。

 兼次さんと大樹さんがホブゴブリンと盾と剣で打ち合う。小百合さんと河合さんが弓と魔法で奥のホブゴブリンを牽制する。

 そして唸り声を上げながら双剣のホブゴブリンが美優さんに迫ってきた。


「美優しゃがめ!」


 その声に反応した美優さんがしゃがみ、その上を切り裂くように彰さんが大剣を横薙ぎに振り切る。しかし、その攻撃は二本の剣で受け止められた。


「美優! 二人でこいつを倒すぞ!」


「うん!」


 それを見て僕は奥の二体をターゲットにする。

 大樹さんの横を過ぎ、魔法と矢が振ってくる中を走り抜ける。


「瞬動!」


 一瞬で距離を詰め、そのまま横薙ぎに剣を振る。


「リア・スラッシュ!」


 魔法を使うホブゴブリンをその一撃で沈める。

 こいつらの耐久力は大したことない……なら、このSPの量は多い。調整だ。


 隣に居た弓使いのホブゴブリンが逃げようとするが、その行く先を河合さん達の魔法と矢が塞ぐ。そして、もう一度『リア・スラッシュ』で弓ホブゴブリンを沈めた。


 あとは、3体。

 そう思い振り向くと、3体とも倒された瞬間だった。

 光の粒となって消えていくホブゴブリン達を見て兼次さん達が剣をしまっていた。


「一瞬連携に焦ったけど、大丈夫やったな」


「だな。連携してくるモンスターか。こっちの人数が多い分余裕はあったか?」


「一番強い双剣のホブゴブリンを倒せた時点で、俺らの勝ちは決定してただろ。まあ、これぐらいなら二人で余裕だな」


「だよね。一番に狙われたのはちょっと解せないけど、充分倒せる相手ではあったよ」


 戻るとそんな話が聞こえていた。

 僕も「お疲れ」と声をかけてくれた河合さんと小百合さんにお礼を言う。


「河合さんも小百合さんも牽制助かった」


「まあね。奥山君が走って行ったから大きい魔法を使わなかったけど。さっさと倒すなら使ってもいいかもね」


「でも、俊くんが自由に動けるなら魔力節約で今の感じでもいんじゃないかしら? 十分に対応できるし、もしもの時は佑くんも魔法で応戦すればいけるわけだし」


「そうですよ。俺は支援魔法ばかりなのでまだまだ余裕があります。もしもの時は回復用の魔力を攻撃魔法に使えるので! 任せてください!」


「なら、今のままでもいいのかな」


 話をしながら、僕達はホブゴブリンのドロップアイテムを拾って先に進む。




 それから数十分進むと、出て来たのは同じような連携してくるホブゴブリン。しかしそれはさっきと同じようにこっちも連携すれば難なく倒すことができた。

 まだ数十分だがここまで順調に進めている。


 油断をしないように進めば大丈夫だろう。

 でも、もう少し余裕を持てるようにするには、今の連携をもう少し細かく決める事ぐらいか。一応兼次さんに伝えておこう。


「兼次さん、相手の数が増えたらこの状況も難しくなりますよね。うちの牽制できる後衛が狙われると厳しいんで、どうするか先に打ち合わせした方がいいですね」


「そやな。人数がこっちが勝ってたら今の状況でもいいけど、数の有利がなくなった時の事も考えとくか。真由と俊の大規模魔法も視野に入れて、誰が攻めるか守るか話し合おか」


「「了解です」」


 シルクさんの説明していた事を思い出す。

 51階層と49階層のモンスターのレベルの差は大きいというのはこの連携してくるのが要因だろう。それに一体一体の強さも強くなっているのは確かだ。これがホブゴブリン以上の強いモンスターに置き換わると、ワイバーンクラスになると言っていたのも納得できる。

 51階層はシルクさんの意見を取り入れて、今までとレベルが違う前提で進むのが得策だ。


 そして僕達は51階層の第一次探索を4時間かけて終えた。







「反省会するでー」


 ギルドのミーティングスペースで全員着席し、今日の反省会が始まる。


「反省会って言っても良かった事ばかりやから反省するところもないんやけどな。みんなの意見を聞かせてくれ」


 そう言って兼次さんが話を進める。


「まずは、最初に51階層を進めるかどうかや。みんなはどう思った?」


 兼次さんの問いかけに、まず彰さんが答えた。


「今日出て来たモンスターが連携するホブゴブリンだけだったからな。同じようなレベルなら進んでもいいと思うけどな」


「私もそう思うよ。今の手ごたえだとあと数体増えても倒せると思うし」


「美優ちゃんと彰くんの言う通りね。遠距離からの支援と牽制しかしてないけど、まだ余裕があるわ」


「彰の言う通り、出現するモンスターがそうなら俺も進むでいいと思うぞ」


 古参4人の意見が進めるで統一していた。


「ちなみに、51階層の攻略想定時間は何時間だったっけ?」


「たしか、13時間ぐらいだったかしら?」


「大体それぐらいやな。やし、今日はまだ2割進んでへん感じやな」


「だったらこの先どんなモンスターが出てくるかはまだ分からないってわけか」


「そうなるけど、大体は読めるんじゃないか? 今までと同じならボスモンスターが出てくるわけじゃないし、少し強いぐらいだと思っていいと思うけど」


「それでも過信しすぎないってことやな。シルクちゃんが言ってた通り、ワイバーンクラスやと思っといた方がええって場面はあるやろな。今のところそんな事なさそうやけど」


「まあ、備えあれば患いなしだから。慎重に行くのはいいと思うわよ」


「私達のパーティらしくね。でも、それを含めても私は51階層は大丈夫だと思うけどな」


「そやな。4人の意見の通り、俺も大丈夫やと思うで」


 兼次さんの言葉に頷く。

 すると兼次さんがこちらを向いた。


「まあ、俺らで話し合うのもええけど、佑らも話に入りや」


 そう言われて桐島君が頬を掻く。


「話に入りたいんですけど、5人の皆さんが話す内容で大体の話が終わってしまうので、俺は大丈夫かなって……」


「私も桐島君と一緒ですよ。ベテラン5人が話し合ってればしっかりした計画になるんで。もし気になる事があれば私も言いますけど、今回は私も明日1日で51階層攻略の方針で良いですし。ね、奥山君」


「そうですね。僕も明日1日かけて51階層攻略でいいと思います」


「まあ、3人がそう言うならええけど。意見あるならどんどん言ってや」


 その言葉に3人が頷く。

 まあ、河合さんが言うにここは5人を立てた方がいい場面だ。その方がスムーズに進むし。別に方針は僕も同じだから反対意見もない。もしあれば、いつも通り兼次さんに言えばいい。


「じゃあ、明日は1日51階層攻略の方向で。次は、どう連携してモンスターを倒すかやな。なんか意見はあるか?」


 戦闘に関する反省意見だ。


「まあ、今のところはないな。佑の支援魔法による強化で余裕持って戦えてるし。俺と美優で大物倒して、大樹と兼次さんで足止め。遠距離攻撃のモンスターは小百合と河合で十分足止めできてるし、そいつらは奥山が倒せるだろ? これで十分な連携じゃないのか?」


「そうだよね。さっきも言ったけど、あと数体モンスターが増えても対応できるでしょ。たぶん、連携して来るならオーガの時みたいに永遠に増えるってわけでもないだろうし、数は限りあると思うんだけど?」


「そうよね。相手が連携してくる前提ならこの状態でも十分だと私も思うわよ。安定してるしね」


「俺もその意見だな。今の所は不満はないし。それに、大量に来たら前みたいに俊と真由の魔法で蹴散らすか、大物ならワイバーン戦みたいで大丈夫だろ」


 まあ、その意見には僕も賛成だ。

 でも一つ意見を言えと言われればあるけど……。


「ん? 俊は何かあるんか?」


 兼次さんは鋭い。


「えっと、あります」


「なんや、言ってみ?」


「今のモンスターの数と連携ならこれでいいですし、ただ数が増えるだけでもこれで大丈夫だと思います。でも、相手が二組以上で連携してくる場合も想定した方がいいと思います。今日の4時間では一組ずつしかモンスターが出てこなかったですけど、出てくる可能性はあると思います。数だけ増えたって思って、魔法を撃つ前に牽制されたらとか、二組一気に連携してきたとか、そこまで想定した方がいいかなって」


「なるほどな。考えておくに越したことはないわな」


「そうね。シミュレーションはするべきよね」


「連携してくるモンスターの数が増えるか。今までのモンスターと同じって考えない方がいいからな。俊、なんかいい案ないか?」


「一応あります」


「じゃあ、俊の意見から聞いて行こか。他も何かあったら随時話していくことで」


「「はい」」


 そして、戦闘のパターンを話し合う。

 二組、三組と連携するモンスターが増えていった場合を想定して、様々な意見を上げていく。そうする事で攻略も安心してできるだろう。あとは、想定より強いモンスターが出てくるかどうかが攻略のカギとなると思っている。






 そこから2時間ほど話し合い、案を出していった。

 今日の攻略が5時間程度なので、充分にミーティングの時間はあった。


「よし。ここまで話し合えば十分やろ。これで終わりにしとこか。あとは、寝て、明日に備えるで」


「「了解」」


「俺らは戦える。明日1日で51階層は突破や!」


「「はい!」」


 明日の為に今日はここで解散となった。




 そして、すぐに明日は来る。






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