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52話-1「パーティの全メンバー」



 ギルドマスターとの特別稽古が終わり、それだけで精神的な疲労と体力的な疲労が残った僕達は当初の予定とは違い、46階層をちらっと見ただけで戻って来た。

 そしてその後する事はただ一つ、魔法の訓練。あれだけ凄い魔法を見たのだ、練習しないわけにはいかない。

 なので土曜日は、魔法の訓練だけで終わった。

 ギルドマスターも罪な人だ。





 そして、約束の日曜日がやってくる。

 河合さんは初めてではないが、僕は大樹さん達以外の残りのメンバーとは顔合わせが初めてなので、緊張していた。


「奥山君、そこまで人見知りじゃないでしょ。営業でも自宅訪問してるし、飛び込み営業だし」


「仕事とプライベートは違うんだよ。別に会う事自体は大丈夫だけどさ、ここダンジョンだし、屈強な強面の人が来たらビビる」


「大丈夫よ。全然そんな人達じゃないから」


「どちらかと言うと兼次さんの方が強面だよな」


「そうなんですか。だったらいいですけど」


「ちょっと奥山君? 私もそう言ったよね?」


「言ってたけど、河合さんも数回しか会ってないって言ってたし。ずっとメンバーだった大樹さん達の意見の方が信憑性が高いからなー」


「なんだとー。って、そんな事言ってたら私も緊張して来たんだけど。奥山君の言う通り私も2回ぐらいしか会ってないし」


「緊張は伝染するから」


「させないで」


 そんな冗談を交えながら僕達はギルドの待合場で残りのメンバーを待っていた。




「おっ、来た来た。兼次さん! おはようございます!」


 入り口を見ていると兼次さん達が来たようで、大樹さんが立ち上がり手を上げる。


「おう! おはようさん! 全員集合してるな!」


 そう言った兼次さんの後ろには3人ついて来ていた。男性二人に女性一人か。


「じゃあ、さっそくやけど自己紹介やな。お前ら座り」


 そう言われて、全員席に着く。

 机を挟んで4対4で、僕ら今までのメンバー4人と兼次さん達紹介メンバーが4人。


「よし、じゃあ、ちゃちゃっとしよか。まずは俊からやな。加入が一番最後やし。名前と戦闘スタイルだけでいいわ」


「わかりました」


 兼次さんに言われて席を立つ。


「奥山俊です。剣と魔法を使います。一応自分ではオールラウンダーのつもりなんで、後衛もアタッカーもできます」


「へー、あなたが奥山俊くんね。噂が凄いから早く会いたかったんだよね」


 そう言った女性が隣の男性に「ねっ」っと声をかける。


「そうだけど。それより、俺らは後で自己紹介するから、先に河合だろ」


「そうだね。ごめんごめん。じゃあ、河合ちゃん」


「はい」


 男性に注意された女性は河合さんの名前を呼ぶ。それに頷いて河合さんが立った。


「河合真由です。魔導士です。彰さんと美優さんは2回ほど顔合わせさせてもらってますけど、そこの君は初めてだね。よろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします」


 河合さんの向かいの席に座っていた若い男性が少し照れたようにお辞儀をする。


「オッケー。じゃあ、佑」


「はい」


 次はその若い男性だ。兼次さんに呼ばれて立ち上がった。


「桐島佑です。回復魔法と補助魔法専門で、彰さんに声をかけて貰いました。よろしくお願いします」


 この男性と顔合わせが初めてなのは僕と河合さんだけか。大樹さんも小百合さんも知った顔をしている。


 それにしてもこの人は若く見えるな。髪型はマッシュルームカットで前髪を真ん中で分けている、大学生って感じだ。見た目のままが年齢なら祐也と同い年ぐらいの印象だ。


「よし、簡単にやけど新メンバーの名前はわかったな。後は、俊が初めてなのは彰と美優だな」


 そう言った兼次さんは隣に座っていた男性の肩を叩く。そして、その男性が座りながら自己紹介をした。


「辻本彰だ。武器は大剣。いわゆるアタッカーだな。奥山、お前の噂は聞いてる。期待してるぞ」


「は、はい。よろしくお願いします」


 その話し方には少し威圧感がある。

 少しぶっきらぼうな話し方は短髪と吊り上がった目尻が相まって少し怖く感じる。河合さん、怖くないって言ってませんでしたか……。


「じゃあ、私ね」


 そう言って彰さんと同じく座ったまま話し始めた女性は、ふんわりしたボブカットで可愛らしい印象だ。


「辻本美優です。武器は短剣、このパーティでは準アタッカーとして動いてるよ。あとは、苗字でわかるかもだけど、彰とは夫婦です。夫婦でダンジョン潜ってます」


 まじか。この二人夫婦なのか。

 偏見の目はそこまで無いつもりだけど、この可愛らしい女性にこの強面の男性か。何と言うか、世の中はわからないものである。

 ……少し羨ましい。


「夫婦って珍しいですよね」


「そうかな。割といるはずだよね。小百合ちゃんの所も元々は夫婦でダンジョン潜ってたもんね」


「そうよ。まあ、旦那が先に死んだから私一人になっちゃったんだけどね」


 先に死んだって未亡人の言い方だけど、「今頃せっせと外で働いてるわ」って言葉が違和感しかないのがおもしろい。


「ってことで、自己紹介は終わりやな。これからパーティ組んでくから徐々に仲良くなったらええし、それは実際に一緒に攻略した方が早いやろからな。じゃ、早速やけど、今日とこれからの方針を話し合おか」


「了解です」


 真剣な話に変わりそうだったので少し背筋を伸ばす。


「まずは50階層までについてや。50階層までは土日をメインに行動する。理由は真由と俊が土日しかまともにダンジョンに来れへんからや」


「え? 兼次さん本気ですか? こいつらまだ外で仕事してるんですか?」


 兼次さんの言葉に彰さんが呆れた顔をする。


「おいおい、彰そんな顔すんなや。今から一緒にパーティ組むってのに空気悪くなるやんけ」


「そうだよアキ君。私達よりダンジョンに来て短いんだからそりゃそうでしょ?」


「……そうだな。でもな、奥山も河合もこの短期間で45階層だろ? ダンジョン一本かと思うだろ普通」


「まあね。でも奥山くんなんてダンジョンに来てからまだ2か月も経ってないんでしょ?」


「……えっと、1ヵ月半ぐらいだと」


「まじかよ! そんな短期間で45階層かよ!」


 僕の発言に驚く彰さん。河合さんも半年で45階層だから早いって言えば早いけど。


「ま、そう言う事でや。50階層が直近の目標やからそこを突破するのに重点置いて、46階層からは俺ら8人の連携も兼ねて土日に一気に攻略する。46階層は今日攻略するけど、47~49階層までは来週の土日で一気に攻略するって形でええか?」


 兼次さんの問いかけに全員が頷く。


「あっ、兼次さん」


 今の兼次さんの説明に疑問を持ったので手を上げる。


「どうした俊?」


「49階層まで一気にって事ですけど、帰還ゲートは今まで通りなら50階層にあって、49階層にはないですよね? 今回は49階層にあるんですか?」


「そやな。俊は40階層も一気に攻略したって聞いてるからわからへんよな。大体の冒険者は40階層と50階層に行く時は、手前の階層で一回引き返す事が多いんや。だから今回も49階層を攻略したら一旦引き返そって思ってる。ボス戦の前にボロボロの状態やったら勝てる確率も下がるやろ? ボス戦は万全の状態で挑むべきやからな」


 まじか。僕の40階層のボス戦は39階層攻略の勢いで進んだけど。あっ、だから河合さんも大樹さんも「大丈夫か?」って聞いてたのか。その時に教えてくれたらよかったのに。

 と、思いながら大樹さんを見ると、


「あの時は俺らもいたから、フォロー入れば大丈夫かなってな。別に大丈夫だっただろ?」


「まあ、大丈夫でしたけど。河合さんはその事知ってたの?」


「うん。奥山君が気絶してた時に聞いた。だから心配だったけど、奥山君やる気満々だったから止めにくかったんだよね」


「……すみません」


 次からはもっとしっかり周りの意見を聞こうと反省します。


「そう言う事でや、ダメージ負ってる状態やったら、はっきり言ってボスを倒すより階層を戻るほうが楽やからな。それに、毎回49階層でダメージ負うんやったら、49階層を安定的に進めるようになってから50階層に挑んだ方がいいやろ? その前提で動くわけや」


「わかりました」


 ボスに挑戦するなら準備を入念にするに越したことはないけど。


「あれ、でも兼次さん達は49階層は普通に攻略できるんですよね? つまり、今回49階層で引き返すのは、僕達の様子を見る為ってことですか?」


「そやな。俺らは49階層は突破はできる。少しは怪我するし疲労はあるやろうけど、少し回復すればそのまま50階層のボスに挑戦は全然できるレベルやな。やし、今回は俊達が49階層でどれだけ疲弊するかを見るのも兼ねるわけや。全員が40レベルになったら挑む予定やったけど、そうじゃなくてもええかなって思ってるしな」


 なるほどな。だったら僕達もダメージを負わなかったらそのまま進んでもいいんじゃないのだろうか。

 聞いてみよう。


「わかりました。じゃあ……あっ。もし。もしですよ。僕達がほぼダメージ無しで49階層を攻略できたらそのまま50階層に挑戦するって判断もありますか?」


 その言葉に辻本夫妻が反応した。


「はあ? 何言ってんだよ奥山! 49階層をダメージ無しで初見突破ぁ? 無理に決まってるだろ!」


「そうだよ! 流石にここまで一気に攻略してるって言っても流石に49階層をノーダメージは厳しいでしょ!?」


 それに対して大樹さんと小百合さんは驚いていない。

 河合さんに至っては「奥山君、こういう時は思ってても上長の指示に従ってた方がスムーズに行くんだよ。自分の意見言い過ぎだよ」と小声で言っている。


「大樹、小百合。お前らが俊の発言に驚いてないのは、その可能性があるってことなんか?」


「……はっきり言って、そうだな。ここまで一緒に俊と行動してるけど、全部初見で危なっかしい所はなかったな。あると言えば、『独眼のウェアハウンド』の時ぐらいだな。でもあれは誰でも危険だからな」


「大樹の言った通りね。俊くんそれにまゆちゃんもかなり成長してるし、ボス戦以外なら無傷で魔力も抑えて攻略できる可能性は十分にあると思うわね」


 大樹さんと小百合さんの冷静な判断に辻本夫妻が瞬きをする。


「おいおい。まじかよ。そこまでかよ……」


「小百合ちゃん、ほんとに?」


「ほんとよ」


 小百合さんの言葉で呆れたような感心したような表情で二人同時に背もたれに寄りかかった。






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