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48話-3「3連休は全てダンジョンに潜ります」



 攻略もスケジュール通りに進んでいる。

 本日は3連休の最終日だ。

 この3日間全てダンジョンにいて、ダンジョン内に泊って過ごしてきた。何という充実した3日間なのだろう。

 しかし最終日だ。これが終われば明日からまた仕事なのだと思うと憂鬱になるけど、まだ丸一日あるんだと思いながらダンジョン攻略に勤しもう。


 と、思いながら今日攻略するのは44階層と45階層だ。

 このまま順調に行くだろうと44階層を進んで行く。


 しかし、44階層は少し毛色が違った。


「今回も蜘蛛でしたね」


 剣で止めを刺し、光の粒となって消えていくモンスターを見て呟く。


「そうだな。44階層はそういうエリアだ」


 そう言うのは、この44階層に入ってから出てくるモンスターが蜘蛛のモンスターだけだったからだ。他のモンスターはいない。極端に少なかったゴブリンなども全くいない。


「と言う事は、まさか蜘蛛のモンスターしかいないんですか?」


「そう言う事だな」


 蜘蛛のモンスター『コブウェブスパイダー』は直径50センチほどの大きさで、蜘蛛の糸を出して蜘蛛の巣を作りながら攻撃と移動をしてくる。

 蜘蛛の糸も直径が5ミリほどあり、通常の剣では切りにくい。なので、今は新しい剣を使っている。


「この糸は火に弱いから燃やせばいいんだけど、森の中で火はあまり使いにくいからな。一度火を付けたら糸を伝って周りの木にまで引火する」


「ですよね。もう少し私も魔力を上げれば風魔法で切れるんですけど、魔力の温存と考えたら……」


「後々を考えれば魔力を温存する方がいいものね。俊くんの剣で切れるならそれを使った方がいいと思うわ。でも、ごめんね俊くん」


「いいですよ。使えるモノは使わないとです」


 と言う事で、今僕は大樹さんの代わりに先頭に立ち、張り巡らされている蜘蛛の糸を切っている。コブウェブスパイダーは同時に数体現れるのでその周りは蜘蛛の糸だらけになる。それを切らないと進めないので、切って道を開く作業中だ。


「どうだ? 俊の剣ならスキルを使わずに斬れるだろ」


「斬れると言えば斬れますけど、一応微力に『スラッシュ』は常に使ってるんですけどね。使った方が斬りやすいですし」


 SPを増やすためにもスキル使う事は悪くないから、この作業も受け入れる。

 そう言えばSPの数字が気になるな。今日の終わりに見てみるか。


「ちなみに、大樹さん達だけの時はどうしてましたか?」


「俺らは『スラッシュ』で必要最低限の蜘蛛の巣を切ってた。糸の数が多いからな、おのずと必要SPが多くなるし、4人で交替で対応してたな」


「そう言えば、魔法職いなかったですもんね。小百合さん以外は全員剣だったんですか?」


「そうだな。盾剣の兼次さんと俺、アタッカーが大剣と短剣で一人ずつ。で、弓に小百合だからな」


「ほんとに剣だけですね。でも、その人数だったらそのローテーションもできますね」


 全員攻撃隊みたいな構成だ。そうなると小百合さんの役割も大きくなる。


「小百合さん以外剣だったら、魔導士が入ったらかなり戦闘の幅が広がりそうですね」


「そうよ。やっぱり魔法は必要よね。それに今あっちには新しく回復役が入ってるから、よりいいパーティになるわよ」


「そうなんですね。回復役かー、8人って大人数かなって思ったけど、バランス取れそうですね」


「あっ、だったら奥山君って剣よりも魔法がメインになりそうじゃない?」


 そう聞いて考える。


「あ、それはそうかも」


「この機会に杏子さんが言ってたように魔導士に転職する?」


「いやいや、まだまだ剣は捨てられないよ」


 剣も魔法も使ってのダンジョン攻略が楽しいんじゃないか。魔法を極めるのもありだけど、剣はまだまだ捨てがたい。


 しかし、大樹さんが笑う。


「それは大丈夫だぞ。俊はオールマイティに動けるしアタッカーにもサポートにもなるからな。剣は捨てずに両方動ける方が作戦を組みやすいからな」


「だって、河合さん。魔法だけはまだまだ難しいみたいだよ」


「わかってたけどねー。杏子さんに報告したら落ち込みそうだけど」


 ふふっと笑いながら河合さんがそう言った。


 そんな感じで話しながら蜘蛛の糸を斬る。


「よし、斬れました。こんな感じでいいですよね」


「おう。サンキューな。じゃあ、進むぞ」


「はい」


 そして先に進む。





 それから2時間弱進んだところで急に小百合さんと大樹さんの静止が入った。

 進めば進むほど、コブウェブスパイダーが多くなったわけではない。常に一定の数が時々出てくる。


 しかし、それに大樹さんと小百合さんが違和感を覚えていた。


「大樹、やっぱりおかしいわよね?」


「だな。数が圧倒的に少ない。コブウェブスパイダーがこんな数しかいないのは初めてだ」


「大樹と兼次さん達で何回か潜ってたものね。その時もここまで少なくはなかったの?」


「なかった。今日は今までの4分の1ぐらいの数だな」


「……それは、やっぱりおかしいわね」


 そう二人が話しているが、ここまでは順調に進んでいる。

 モンスターの数が少なくて僕達は少し楽しているし。それにこういう時は最後に強いモンスターが出てくるのが相場だと知っているから特に違和感があるわけではない。


「この蜘蛛だけで終わりってわけじゃないんですよね? このあと強いモンスターが出るんじゃないですか?」


「うーん。真由の言う通り、通常なら出口の前に一体巨大な蜘蛛のモンスターがいる。そいつが強いから厄介だけど、元々そうだからな。あいつがかなり強化されてるとかか?」


「それでも、この数の少なさはおかしいでしょ。考えられるとしたら、私達以外に他に強い冒険者が来てるとか?」


「そんな話シルクさんが言ってませんでしたよね?」


「一応41階層以降にもう一組パーティが潜ってるって聞いてましたけど」


「言ってたな。うーん。だったらその可能性が高いか? そっちに分散されて大半が行ってるとかか? でも、あいつら極端に強いわけじゃないし、俊の方が注目浴びてるからな。それに、たぶんまだ44階層には到達してないと思う。今日44階層潜っているパーティがあるって聞いてないよな?」


「聞いてないわ」


「だろ? だったら、何なんだ」


 大樹さんと小百合さんが「うーん」と唸る。

 でもここで悩んでても進めない。


「でも、とにかく進むしかないですよね? だったら進みませんか?」


「それもそうよね。俊くんの言う通り進みましょうか。周りに注意しながら進めばこのパーティなら大丈夫でしょうし」


「……そうだな。よし、進むか! 小百合ここまで通り『ペネトレイター』も……『独眼のウェアハウンド』か!」


 大樹さんがハッとしたように声に出した。それを聞いて小百合さんも目を開く。


「……っ! そうかも! それがこの階層で暴れてるとか? 金曜日の時点で43階層だったから44階層に到達している確率は高いわね。そうなると……一層注意しないといけないわね」


「えっと、ってことは、この階層に『独眼のウェアハウンド』がいるって事ですか? でも今は『ペネトレイター』に反応してないんですよね?」


 河合さんが心配そうにそう言って、小百合さんが『ペネトレイター』を見る。


「反応はないわね……。今はこの範囲内にはいないってことだけど」


「先に居る可能性があるか……この道順じゃない所にいるか……」


 大樹さんが悩むように口に手を当てる。


「どうする? でもこれは想像でしかないんだよな。まったく関係が無い可能性もある。今は少しでも先に進みたいからな。俺らの実力ならこの階層は十分攻略できるはずだから、その要因だけで今日は戻るってのはな……。俺としては、注意深く索敵して、反応があったらすぐに逃げるって事で進みたいんだが、どうだ? 俊と真由の意見も聞きたい」


 大樹さんが今からの方針を僕達にも聞いてくれた。


 でも僕の意思は決まっている。


「僕はそれで大丈夫です。先に進みましょう。それに『ペネトレイター』で先に『独眼』を見つけられるなら逃げれると思いますし。河合さんは?」


「私も進むで大丈夫です。奥山君と同じで先に進むのが目的なんで。小百合さん、索敵お願いしますね」


「ふふっ。みんながそう言うなら私も反対はできないわね。でも、それでいいと思うわ。索敵はしっかり私がするから安心して」


「よし。じゃあ、進むぞ。ここからは一段気を引き締めてな」


「「了解です!」」





 それから探索しながら進み、1時間強が経った。

 しかし『ペネトレイター』には全く反応ず、44階層の出口付近まで到着していた。


「……違ったか」


 大樹さんが呟く。

 今僕達は出口の前の森の中で出口付近を見ている。そこには大樹さんが先ほど言っていた巨大な蜘蛛のモンスターが出口を塞いでいた。それも、コブウェブスパイダーの蜘蛛の巣が出口に張り巡らされていて、尚且つ数十体のコブウェブスパイダーもいる。そして、その中央に仁王立ちする様に巨大な蜘蛛は立っていた。


「『ジージュファング』……あいつ自体は蜘蛛の糸を出さないけど、名前に『牙』付く通り、かなりの牙を持ってる。物理的に盾や鎧を貫通する威力だから、かなり強い」


 脚の先までを入れると体長3メートルを優に超えている。田舎で見た事があるアシダカグモの様な見た目だ。つまり、かなり凶悪である。


「ひっ……」


 隣で河合さんが声を抑えながら引きつっていた。でもわかる。あれは怖い。


「大樹、あれがいるって事は『独眼のウェアハウンド』が今暴れてるからコブウェブスパイダーが少ないって理由になる?」


「いや、違うと思う。というか、今のあの現状が理由だ」


 そう言って大樹さんが出口にいるモンスターを指さす。


「通常はあんなに蜘蛛の巣を張る事もないし、コブウェブスパイダーがあの数いる事も無い。いても10体未満だし、今までのほとんどがジージュファングだけだった」


「なら、これが理由でこの階層に出ていたコブウェブスパイダーが少なかったわけね」


「こうなってる原因はわからないけどな。少なくとも、ここの付近に『独眼のウェアハウンド』はいないって事はわかった」


 ここにはあいつはいないのか。かなり強くなっているから戦いたくないが……実は少し罪悪感がある。

 始めて会った時僕がさっさと倒して入ればここまで騒ぎにはならなかった。少しの興味がこの状態を招いてしまった。それについてはかなり反省している。だからこそ僕が倒さないといけないとも思っていた。

 今回はいいタイミングだとも思ったが、まだその時ではなかったみたいだ。


「よし、じゃあ気を引き締めて倒すぞ。今はあいつらだけに集中しても大丈夫だろうからな」


「わかりました」


 大樹さんが作戦を言う。


「手っ取り早く進む。出口付近だから、俊と真由の前の火魔法で燃やせるか? それでコブウェブスパイダーは全滅できると思うんだが」


「大丈夫です」


「よし。でも、ジージュファングはそれでは倒せないだろうから、炎から飛び出た瞬間、小百合が牽制して俺が止める。魔法から離れられるなら俊は俺の援護にすぐ回ってくれ。真由は魔法が終わり次第合流して一撃大きいの食らわせてやれ」


「「わかりました」」


「じゃあ、始めるぞ!」


 そして『ジージュファング』の討伐が始まる。






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