2.教育実習生
「今日か2月くらいまで、私の代わりに授業をしてくれる教育実習生の湯足柑奈先生です」
「初めましてというかお久しぶりの人もいますが、とりあえず初めまして! 教育実習生の湯足柑奈です! この学校の卒業生で、ボランティア部に入ってました! よろしくお願いします」
柑奈が、彼女の担当の教師である先輩の紹介で、その先輩教師のHRクラスで元気よく挨拶する。その後も軽く自己紹介を行い、今度は生徒たちの名前を覚えるため、生徒は逆に先生に名前を覚えてもらうために、一人一分の持ち時間で自己紹介を行った。
……が。始まって数分後、とある生徒が拍手と共に座りかけた直後にそれは起きた。
ガタッ!
「フッ、我の名は黒の邪神・ユースティティア! この世を統べし人間共を征服し、悪の帝国を創り上げた神である!」
「莉那ちゃんね、よろしく!」
「そ、その名を言うな!」
クスクスと周囲からあがる笑い声。莉那の中二病はいつもの事であった。
残りの生徒の紹介を聞き終え、今度は生徒たちのためにと授業時間を減らす工夫として、柑奈はいくつか質問を受け付けることにした。
「はい、じゃあ先生に質問とかあったら答えられる範囲で答えます。何か質問はあるかな? あ、ちなみに質問が多いほど授業時間が減るよ? じゃあ……はい、そこのあなた」
「はいは〜い! 先生って彼氏彼女いますか?」
「残念ながらいませ〜ん」
数人の手が即座にあがる。その中から適当に当てていく。
「先生はおいくつですか?」
「大学3年生、21です。4つ年上だから、中等部からの娘は何人か知ってる顔もこのクラスにいるなぁ〜」
「あっ! あの柑奈先輩!?」
「久しぶりね!」
なんて話が弾み、気づいたら授業終了のチャイムが鳴っていた。
「残念だけどおしまい! 他に何か聞きたいことがあったら、どんどん聞いてくださいね! ……じゃ、いいよ」
「起立! 気おつけ……礼」
「「「ありがとうございました」」」
「はいありがとうございました」
挨拶を終え、担任に付いていく柑奈を見つめていた莉那は、にこっと自分に向かって柑奈が微笑みかけてきた……気がした。