1.嵐の襲来
第三弾、始まりますよ!
「やっほー! 莉那ちゃんいますか〜?」
「我は莉那ではなく、黒の邪神・ユースティティア! 名を間違る愚か者、我の眼前にひれ伏すがい……って、柑奈先輩!?」
「元気にしてた? ……それよりもまだそれ続けてるのね?」
「まだ言うなし!」
「それに相変わらずちんまいねぇ……♪ はぁ……前にも増して可愛くなっちゃって……食べちゃいたいわ♪ もちろん性的な意味で」
「あなたも、……ごほん。そなたも相変わらずだな」
生徒会室にいた自称・黒の邪神ユースティティア、櫻井莉那の下へ駆け寄ってきて後ろからガバッと抱きついたその主は、三年以上前、莉那が中学生の頃、一方的に絡まれ続けてきた先輩である湯足柑奈だ。
散々迷惑をかけられて、気付いた時には卒業してしまっていた柑奈の再来に、莉那は嫌そうな顔をしながら手にしていたペンを机に置いた。
「ちょっとは成長したんだから! 具体的には今の莉那ちゃんくらいの娘がターゲットなだけで」
「……はぁ、全く変わらぬな。いい加減にせんか? ここは生徒会室だぞ?」
「つれないなぁ。……おねーさんと三年前の続き、したくないの?」
一瞬ザワつく室内。五人ほどいた生徒会役員と莉那が連れてきた風紀委員の娘たちが、チラチラとこちらを見つめながらこそこそ何かを話している。
「なっ……! あ、あれはただあなたが卒業して寂しいから手を繋ごうと……!?」
「なーんだ、覚えてくれてるじゃない」
「……。どうしてのこのこ舞い戻ってきたかは知らぬが、此処は我の聖域だ! 出て行くが良い!!」
ガタッ! と音を立てて莉那が立ち上がると、そのまま柑奈の背中を押して教室の外へと追い出すと、思い切り扉を閉めた。そして「ふんっ!」とマントを翻しながらくるりと振り返ると、元の席へと戻って仕事を続けるのであった。
一方、追い出された柑奈は……
「ふふ、莉那ちゃん、元気そうで良かった。……相変わらず、邪神のくせに聖域とか言ったり、設定ガバガバなんだから」
とつぶやき、三年前の、初めての あの感触を思い出し、夕日に照らされながら微笑んでいた。