翼をください の巻
またも現在に戻る。
ミー「だから翼くんは、翼がほしかったのよ。」
徳メン「だからネックレスを肌身離さず持っていた。」
福ノ山「窃盗団の名前もスカイスワロウだった。」
留久子「お母ちゃんのそばに行きたかったんや・・・・・私気持ち分かるで・・・」
敏子「・・・・・・」
【ある日、うちは、友達の家に遊びに行って始発で帰ってきたことがあるんやけど、その日、駅の近くのブランドショップでツバメの口のようなマスクをした数名の人を見てん。うちは思わず隠れたんやけど、それでこっそり覗くと、その1人がこっちを見てきたから、とっさに隠れた。また見るともうおらへんかった。でも、そこに光るものがあったから見てみると、そこには翼くんの翼のネックレスが落ちていたんや。】
ミー「うちは前からもしかしてっていうのは感じてたんや。だってプレゼントされるものが、盗まれているというニュースを見るから。でもさすがに違うやろうってどっかでたかをくくってたんよ。だって確証はなかったし信じられへんかったから。でもあの日、それが決定的となった。」
留久子「そうなんや・・・」
敏子「あと、いい子は夜遅く遊んじゃダメやで。」
福ノ山「そうやけど・・・今言わんでもええやろう。」
【私は迷い続けた。警察に出頭すべきかどうなんか。その後も翼くんは私にプレゼントを渡し続けた。そのたんびにテレビやラジオ、ネットを見るのが怖くなったんや。だってくれるものが、毎回盗まれているから。】
桂川とミーはホテルのソファーに座っている。
桂川「ミー、他に欲しいものあるか?」
ミー「え…ほしいもんか・・・」
桂川「どうしたんや。最近元気がないやないか。」
ミーは悩んでいたが、自分の思っていることの1部を話した。
ミー「ね!翼くん。もうやめようや。こんなプレゼントなんていらへん!ね。別にこんな高級ホテルじゃなくてもいいんよ。お互いの家とか、鴨川沿いを歩くのでもええし、遊園地とかも別に貸切じゃなくていい。普通に並んだりするのもいいと思う。ね!」
桂川「なんやそれ!俺のすることはミーにとって迷惑なんか・・・」
ミー「違んよ!そういうことじゃないんよ!ただ、お金とかかけなくても・・・」
桂川は立ち上がり上着を着だした。
ミー「翼くん。どこいくの?」
桂川「しらけた。今日は帰るわ。」
ミー「翼くん。ごめん。そうじゃないの!」
バターン
翼は怒って出て行った。
ミー「あーーー」
ミーはうずくまった。
徳メン「好きな人にはまっとうな人間であってほしい。だから罪を償わせたい。しかしそれをすればもう2人は会えなくなる。まやかしでも幸福がそこにあったからなあ。」
桂川は家にいた。お風呂上り上半身裸で髪を乾かしている。
その時、桂川は、あるはずのネックレスがないことに気づく。
桂川は部屋をひっくり返し探し始めた。
しかし見つからない。
桂川はもしかするとあそこにあるかもしれないと感じ始めた。
桂川は窃盗した現場、ミーが見てしまった、あの場所にやってきた。
桂川はネックレスを探していた。
警察「桂川!そこで何をしてるんや!」
桂川は警察を見て、何もなかったように去ろうとする。
警察「ここがどこか分かって探し物してるんか?・・・・ここは窃盗団スカイスワロウの犯行現場やで・・・・フン。何か犯行中にモノでも落としたんか!」
桂川「話す必要はない!」
警察「ここにいるっちゅうことは、私が犯人ですって言ってるようなもんやなあ!」
桂川「犬が!空も飛べない犬がそれを確かめられるのか・・・」
警察「ふん・・・・・時間の問題だ!」
桂川「犬はずっと散歩してなあ!」
そう言って桂川は去っていた。
警察「フン・・・」
ミーは鴨川を歩いていた。そしてたどり着いた先は警察署だった。
そこに先ほど警官が現れた。
警察「あなた、桂川翼の彼女ですよね。ついに話す気になりましたか?」
ミーはその警察の方に振り返った。
ミー「・・・・・・・」
警察「気づいているんですよね。しかも証拠品を隠し持っている・・・違いますか?」
ミー「・・・・・」
警察「好きな人が犯罪者でいいんか!彼女やったら正しい道に導くべきやろうが!」
ミー「うち・・・・うち・・・・うちは・・・・何も知りません!」
そう言ってミーはその場から逃げていた。
警察「フン・・・」
ミーは走って京都大学に向かった。
キャンパスを歩く桂川を後ろから呼び止めた。
ミー「翼くん!」
桂川は振り返って見つめ合った。
2人はひとけのない教室で横並びになって、1つ開けて座っている。
ミーは翼のネックレスをだして、1つ開けているつくえのところに置いた。
桂川は特に驚く様子もない。
ミー「これをエルメスショップの裏で拾った。しかも犯人グループが去ったすぐ後に・・・・・・・」
桂川「・・・・・・」
ミー「その日の夜、翼くんがくれたのはエルメスのバックやった。これは偶然?」
桂川「・・・・・」
ミー「カルティエをくれた日のニュースはHalf Egg、赤のツイストをくれた日はヴィトンが、着物をくれた日は銀京が、他にもたくさん・・・・どうしてや?なんでや、なんでそうも一致するねん。どうしてや!教えてえや。納得できる理由で違って、違って言うてや!・・・」
ミーは涙を流しながら話している。
桂川「・・・・・・・・・・・・違わない・・・・・」
ミー「え・・・」
桂川「俺は窃盗団スカイスワロウの団長だ。仲間たちと8ヵ月ぐらい前、大学入って少したった頃、退屈してたんや。だから何か面白いことないかって。最初は小さな八百屋のお金を盗んだことからだった。でも俺の考えたやり方は警察にはまったくバレへんかった。それでいて話題になって楽しかったんや。警察なんてたいしたことないって思って、どんどんやることが大きくなった。そんなときにミーに出会った。そこからはミーを楽しませたくて、喜ばせたくって・・・・ミーの為にやってるって思ってたんや・・・でも・・・自己満足やったってことに気づき始めたんや・・・すまないミー。」
ミーは自分が目をそらしたくて、夢であってほしいことが現実となってしまった。ミーはもう立ち直れない。
その時だった。教室の扉が開いた。
警察が突入してきたのだ。
桂川は捕まった。
ミー「翼くん!翼くん!」
ミーが呼ぶのも虚しく、桂川は警察に連れていかれた。




