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翼をください の巻

ここで、京都タワーの地下の現在に戻る。

ミー「うちはその時、不思議に思ってることがあってなあ。」

留久子「なんや不思議なことって?」

ミー「20カラットのダイヤ、ブランドもの服や小物、高級なホテルとかを使う翼くんが、どうしてこのネックレスだけ安物で古びたものを使ってんのか、すごく気になっててん。」

敏子「ホンマや!だってずっと身につけてたんやろう?」

ミー「そうやねん。だから翼くんには内緒で、後をつけたり、大学を見に行ったこともあったんや。それで分かったのが、翼くんには幼い頃病気で亡くした母親がいたことを。」


雲一つない青空を病院の窓からベットに座ったまま見ている女性がいる。

そこに小学3年生ぐらいの少年が病室に入ってきた。幼いころの桂川である。

桂川「お母ちゃんただいま!」

母「おかえり翼。今日はどうだったん?」

桂川「お母ちゃん見て!またテストで100点とったんやで。」

母「ホンマに翼はすごいなあ。お母ちゃんの自慢の息子やわ。病院の先生も看護婦さんもみんな翼のことをほめてたんや。お母ちゃん鼻が高いわ。」

桂川「ホンマに!」

母「そんな翼にプレゼントよ。はい!」

現在のスマートファンサイズぐらいの包装されたものを渡した。

桂川「やった!開けてもええ?」

母「いいわよ。」

桂川は喜んで開けた。

そこには翼の形をしたネックレスだった。

桂川「翼だ!もしかしてお母ちゃんの手作り?」

母「そうよ!」

桂川「うわーい。やった!」

母「翼には大空を自由に羽ばたいてほしんよ。」

桂川「大空を・・」

母「そうや。大空を。だれにも邪魔されず自分の思うがままに。」

桂川「思うがままに・・」


それから数日たったある日。

母親の病体が急変した。

桂川「お母ちゃん!お母ちゃん!」

桂川泣きながら、手術室にストレッチャーで運ばれる母親の横について呼びつづけた。

しかし母親の返事はない。半目で桂川を見ている。

しかし看護婦にとめれた。

看護婦「翼くんはここで待っていて。」

母親は手術室に入っていた。

桂川は泣きながら母親を呼び続けた。


それから数時間がたった頃、手術室の扉が開いた。

桂川は立ち上がって扉を見た。

中からは看護婦が出て来て、桂川に話しかけた。

看護婦は目をうるうるしている。

看護婦「翼くん。お母さんに(グスン)お母さんに最後の挨拶しようか・・・」

桂川は何も言わず、表情も変えず手術室に入っていた。

母親は目を閉じている。

桂川は横につき話し始めた。

桂川「お母ちゃん。分かる?・・・僕はこれからどうしたらいいの?・・・僕は1人なの・・・・・ねえお母ちゃん・・・お母ちゃん!」

そう言うと、母親は目を開けた。

母「つ・・・ば・・・さ・・・・」

桂川「お母ちゃん・・・お母ちゃん!」

母「あ・・・・な・・・・・た・・・・・は・・・ひと・・・・り・・・・じゃ・・・ない・・・・・お・・・かあ・・・・ちゃ・・・・んは・・・・・お・・・そ・・・・らに・・・・い・・・・る・・・か・・・ら・・・・」

桂川「お空!・・・」

母「だ・・・か・・・ら・・・ひ・・・と・・・り・・・じゃ・・・ない・・・」

ピーーーーーー

桂川「お母ちゃん!お母ちゃん!・・・あーーーーーーーー」

病院には桂川の泣き叫び声が響いた。


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