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一夜

 真純は斎藤と1枚の寝床に入り、彼の胸に顔を埋めていた。そこある無数の傷をなでながら、真純は考え事をしていた。

 雨に濡れた斎藤を家に招き入れ、専左衛門夫妻にあらためて斎藤を紹介した。新選組の斎藤と知った専左衛門は快く着替えと部屋を用意してくれた。真純が酒を持って斎藤の部屋の前に立った時、真純は思った。この障子を開けたら、もう後戻りはできないと――。

 斎藤は、帯を解き上半身があらわになった真純の肩を抱いた。行灯の光が真純の首元を照らし、唇を這わせていくと生々しい傷跡があった。真純の白い肌に縫い目の赤い線が入っている。傷跡に動揺している斎藤に気づき、真純は向きを変えて首元を隠そうとするが斎藤が止める。

「すみません・・・。」

「なぜ、あんたが謝る。…いつ誰に斬られたのだ。」

「官軍が、土方さんの首を斬ろうとした刀がここに・・・。。」

「・・・そうか。せめて、俺があんたを守ってやりたかった。」

 と言って体を横に向けた時、真純ははっとするが遅かった。

「池田屋でやられた傷か。」

 真純の背には、池田屋事件で袈裟懸けに斬られた傷が残っている。斎藤は黙ってその傷跡に優しく触れ口付けた。

「あんたの体には、土方さんの生きた証が刻まれている。やはり土方さんはあんたに惚れていたのだろう。あの人にはかなわない・・・だが、俺は生きている。」

 真純は胸が一杯になり、自分から唇を重ねた。

 やがて、斎藤の愛撫の手が下半身へ及ぶと真純はその手に自分の手を重ねた。

「斎藤さん、もし私が・・・未来から来た人間だとしたら、どうしますか。」

 真純は今までずっと斎藤に言えなかった事をぶつけた。

「どうした、突然。」

「いえ、その…なんとなく。」

 斎藤は一諾斎の話を思い出した。真純が未来から来て、土方と沖田の死のことは知っていたと。斎藤ははっとした。真純は昔、江戸で旗本を斬ったのは本当かと自分に尋ねた。誰も知るはずのない出来事を、なぜか真純は知っていた。未来から来た人間だからこそ、知り得たことなのだと悟った。

「どうするかと言われれば…どうもせん。どこで生まれ育とうが、真純は真純だ。今のあんたを俺は信じる。あんたと出会った事で、本来起こるべきことが変わったとしても、俺は受け入れる覚悟だ。」

「…斎藤さん、私は20XX年、壬生寺にお参りして目を開いた時、この時代に来ていました。いつかまた目を閉じて開いた時、20XX年か別の時代に行ってしまうかもしれません。それが、怖いです。」

「あんたは、自分が生きていた場所に戻りたくはないのか。家族も待っているであろう。」

「私は、斎藤さんのそばにいたいのです。」

「…あんたがその不思議な力に巻き込まれそうになったら、引き止める。万が一にもあんたが消えてしまったら、俺はどこまでも探し続ける。これまであんたがそうしてくれたように。」

 斎藤は真純の手を握り締めた。

「斎藤さん、ありがとう。」

 真純は斎藤の歴史を歪めている不安を感じながらも、斎藤への思いを断ち切ることができなかった。斎藤と自分が結ばれることが罪となるなら、どんな罪でも受け入れる覚悟でいた。

 真純は斎藤の腕の中で深い眠りに落ちた。


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