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学園長登場!

 俺と寧子は玲奈の助けもあって何とか森を抜けることができた。

「もうあんな森、二度と行きたくないよぅ」

 森を抜けてからも寧子は拗ねていた。

 よほど他人の力を借りたくなかったのだろう。

「まあ、森から抜けれたんだしよかったと思うぜ?」

「まあ、それはよかったけど……けど……」

 俺は必死に寧子を励まそうとしたが、さらに落ち込ませる結果に繋げてしまった。

 立ち直るのにはまだ時間がかかりそうだった。

「ところで玲奈、ここに建物なんて見当たらないぞ」

 俺は玲奈にここに学園があると説明されてついてきたが、どこにも学園らしき建物は見当たらない。

「まあ、見てなって」

 そう言って玲奈は何もないところに立つ。

 そこで三回足踏みをした。

 俺はその足音が土の上では鳴らない音だったことに気付いた。

 玲奈が二、三歩離れると地面が大きく揺れながら玲奈がさっきまで立っていたところが少しずつ開いた。

「こんなとこに隠れ穴があったのか」

「んじゃまあ、ついて来いよ」

 地面が開き終わる前に穴の中に入る玲奈。

 俺も穴に入ろうとしたが、寧子がどうなってるか気になって後ろを向いた。

「私だってちゃんとすればいろんなことできるんだもんあの時だって……」

 まだ立ち直っていなかった。

「寧子、行くぞ」

「ふぇっ!?あ、うん」

 俺の一言で我に返った寧子は、慌てて俺の後をついてきた。

 俺は寧子がついてきたのを確認して穴の中に入った。

 中は火の光しかなかったので少し薄暗かった。

 ところどころに不気味な人形や石像が置かれているのを目にする。

「なんかダンジョンみたいな造りになってないか」

 不安になった俺は玲奈に気になったことを聞く。

「ここの学園長は探検が趣味らしいからな。こんな不気味な人形とかも学園長が探検の中で集めたコレクションみたいだからな」

 探検が大好きな学園長が造った穴か。

 でも、そこに新しい疑問が浮かび上がった。

 その質問は本人に聞いた方が早いのかな。

「お、着いたぞ。やっぱ、ここまで来ると明るさが違うもんだな」

 玲奈が立ち止まる。

 俺も合わせて立ち止まる。

 そこには地下にあるとは思えないほど大きく立派な学園が建っていた。

「これが、学園なのか」

「そう、うちら生徒が通うテンジン学園さ」

 想像以上な迫力があり、俺は見とれていた。

 すると、後ろから何かがぶつかってきた。

 後ろを振り向くと額を押さえている寧子がしゃがんでいた。

「いったーい。もう、立ち止まるなら何か言ってよ」

「悪かったよ。ほら、立てるか」

 寧子の前に俺の手を差し出す。

 寧子は恥ずかしそうに顔を赤くしながら俺の手を握って立ち上がる。

「さて、うちは先生に報告しなきゃいけないけどお二人さんはどうすんだ」

 そんなやり取りを楽しそうに見ていた玲奈がからかうように言ってくる。

 俺は恥ずかしくなかったが、寧子は恥ずかしかったらしく俺の手から素早く離した。

「わ、私も急いで先生に戻ってきた報告をしないと。ウミ君はどうするの」

「どうするって言われても特に何も言われたわけじゃないからな」

 手を組んで悩む。

「そうなんだ。じゃあ、先に学園長にあった方がいいと思うよ」

「そうか。じゃあ、そうするよ」

「ちなみに学園長室はエレベータで最上階に行けばあるからな」

 そう言って、校舎の上を指さす玲奈。

 なんか、相当高くないか。

「エレベータは昇降口を入って右に向いたところにあるから」

 後付けでエレベータの場所を教えてくれる寧子。

「二人ともありがとな。後は俺が何とかするわ」

 そう言って二人と昇降口で別れた。

 右を向くとすぐ奥に大きなエレベータを見つけた。

「あれがそうなのか」

 俺は歩いてエレベータに向かった。

 遠目でエレベータがやたらと大きく感じてはいたが、見た目だけで二メートルくらいあるのがわかった。

「流石に大きすぎやしないか」

 エレベータの前に来てその大きさがさらにすごいのがはっきりとわかる。

 やがて、エレベータの扉が開く。

 そこには、エレベータとは思えないほどの空間が広がっていた。

 壁面は一面ガラス張りで天井は夜空をイメージして作られていた。

 俺はボタンを押そうとしてあることに気付いた。

「ボタンが二つしかない」

 このエレベータが学園長室にしか繋がっていないことに気付いたのだった。

 どのくらい経っただろう。

 俺はまだエレベータに乗っていた。

 そろそろ着いてもおかしくないくらいに時間は経っているはずだ。

 これだけ長いといらつきも溜まってくるものだった。

 急にエレベータが停止した。

 いきなりのことで油断していた俺はバランスを崩して尻もちをついた。

「いってて。着いた……のか?」

 立ち上がって扉が開くのを待った。

 ようやく扉が開いた。

 そこは光が少なく、かろうじて足元が見えるくらいにしか明るくなかった。

「これも学園長の趣味ってやつか?」

 少し歩くと大きな扉が目の前に現れた。

 どうやらここが学園長室らしかった。

 俺は一呼吸してから扉をノックした。

「はいはい。どうぞ」

 若い声が聞こえてきた。

「失礼します。あんたが学園長でいいのか」

「おやおや。初対面の相手をいきなりあんた呼ばわりか。いやー、最近の若者は口が悪いなぁ」

 俺に背中を向けている男がこちらに顔を向けた。

 顔はひょっとこみたいな顔をしていた。

「あれあれ。驚かないの?顔を見たらこんなひょっとこ顔なんだよ」

「それ、祭りかなんかで買ったお面だろ」

「あら、君は見た目以上に冷静なんだね。こりゃ一本取られたよ。ははは」

 甲高い声で笑いながらお面を外す。

 お面の下はとても若い顔に眼鏡をしていた。

 見た目二十代後半くらいに見えた。

「初めまして。僕がここテンジン学園の学園長だよ。ちなみに年齢は四十近くだから接するときはお手柔らかにね」

 ウインクをしてくる学園長。

 四十だとは全く思えない。

「そうか。俺は出雲海斗だ。わけもわからずにここに来た男子だ」

「それはお疲れ様。ここまで来るのに大変だったでしょ。お茶を出してあげるよ」

 そう言って奥の部屋に姿を消した。

 改めて学園長室を見まわす。

 骸骨や藁人形、不気味な仮面などが大量に置かれていた。

「おや、まだ突っ立ってのかい。椅子があるから座っていいんだよ」

 奥の部屋から湯呑を持った学園長が戻ってきた。

「じゃあ、学園長のお言葉に甘えるよ」

 手前にあった椅子に座る。

 俺の座った椅子の手前にあった机に湯呑が置かれた。

「なあ、何か変なものを入れてないよな?」

「あらあら、君はこの学園長を疑うのかい。悲しいね。何も入れてないよ」

 俺は何も入れてないことを確認するとお茶を飲む。

「ちなみに少しだけ精力剤を入れといたよ」

 俺は盛大にお茶を吹いた。

「思いっきり入れてんじゃねーか!」

「何を言ってるんだ。ここまで来るのに疲れたでしょ。それにこれから君は女子だけの空間に放り込まれるんだ。いつそういった場面に遭っても大丈夫なように今から準備しとかないと」

「あんた学園長だろ!そんなこと言っていいのかよ!」

「でも、女子ばっかりの中にいるのは思春期の男の子にとっていいことでしょ」

「そりゃあ、好きか嫌いかで言われたら好きだ」

 迷いなく言えたのは相手が男だからだろう。

 それよりも今の会話の中で気になることがあった。

「なあ、今女子だけって言わなかったか」

「うん?言ったけどそれがどうしたの」

 学園長にとってその環境は当たり前のようだった。

「何で女子だけなんだよ」

「そうか。君は国から詳しいことを聞いてなかったんだね」

 学園長の雰囲気がすぐに変わった。

 かけている眼鏡が怪しげに光った。

「君は『動物占い』を知ってるかな」

「ああ、俺が小学生の時に流行ってたよ」

 やり方までは全く覚えていない。

「実はね、その占いが呪術みたいなんだよね」

 学園長が眼鏡をかけ直す。

「呪術?呪いとか超能力みたいなやつか?」

「まあ、大まかに言ったらそうなるね。でもね、その占いの呪術は国が封印していた呪術と同じ呪いの効果があったみたいなんだ」

「それがこの耳と尻尾なのか?」

「ご名答。この耳と尻尾はちょっと厄介な呪いでね。時間が経つにつれて、自身に生えている動物になってしまうんだ。ほんと厄介な話だよね」

 学園長は困り顔を作った。

 俺は雷に打たれたような気持ちになった。

「それじゃあ、人によっては危ないやつがいるんじゃないか?」

「それは大丈夫だよ。この学園は特殊な呪文がかけられているからね。それに、生徒たちには月に一回特殊な薬を飲ませているから何か刺激がない限りは動物になることはないよ」

 学園長の見た目からは考えられないほどの慎重な対応だった。

「この呪いって一生解くことはできないのかよ」

「いんや、解く方法はあるよ。というか、ようやく条件が揃ったんだよね」

「条件が揃った?俺が来たことで?」

「そうなんだよね。でも、その呪いの解き方がこれまた厄介でね。君が呪いのかかった女子生徒とキスしないといけないんだよね」

 学園長が怪しげな笑みを浮かべる。

「はあ!?なんだよそれ!」

「残念だけどこれは避けられないんだよね」

「他に方法ないのかよ?」

 必死に他の方法を聞き出そうと頑張る。

「残念だけどこれ以外方法がないんだよね」

 これ以上抗っても無駄なことが学園長の口ぶりからわかった。

「でも、女子とキスって、いくらなんでも……」

「言い忘れないうちに言うけど、君の場合はこの学園の女子生徒全員とキスしないと直らないからね」

 学園長の眼鏡が怪しげに光った。

「無謀にもほどがあるだろ」

 学園の女子全員とか無理に等しいと思う。

「ははは。まあ、時間はいっぱいあるから少しずつ減らしていけばいいさ」

「キスをするだけでいいのか?」

「単にキスするだけじゃだめだよ。相手が君に好意を抱いてないと効果はないよ」

 さらに困難が増している。

 なんて面倒な呪いなんだ。

「そうか。じゃあ、ほんとに時間をかけないと無理なんだな」

「まあ、時間が経てば他に解決方法が見つかると思うからね。気長に呪いを解いてもいいんじゃないかな」

 学園長の言葉に少し安心する。

 でも、他の方法が見つかるまで待つのも我慢にならないな。

「よし、わかった。覚悟できたよ。俺、やってやるよ!」

「おお、やってくれるんだね。助かるよ。これで僕にくる負担が少し減るよ」

 安堵の表情を見せる学園長。

 何かよからぬことを言っていた気がしたがあえて無視した。

「じゃあ、今日はこの辺にするかな。君はまだ手続きが残ってるんでしょ。流石に長く話しすぎたよ。いや、なんせ同性の子と話すのはいつぶりか覚えてないくらいだからね。今日は楽しかったよ。ありがとね」

「俺も楽しかったよ。後、聞きたいあるんだけどいいか」

「いいよ。なんせ、僕は今、心地よい気分だからね」

 手を大きく広げて体をくねらせる学園長。

 その動きは気持ち悪かった。

「学園に女子って何人いるんだ?」

「ざっと十人だよ。でも、日本にはまだ何人かいることが確認されてるから頑張ってね」

 聞いたことを今、ものすごく後悔した。

「ああ、体力が続く限り頑張るよ」

「頑張ってね。無理そうだったら、またここに来るといいよ」

「ああ、その時は頼らせてもらうぜ」

 俺は椅子から立ち上がり、扉の前に立つ。

「じゃあ、戦地に行ってくるぜ」

 そう言い残して、俺は学園長室を後にした。

「出雲海斗……か。面白い子がうちの学園に来たもんだね」

 エレベータを待つ間、背中の悪寒が止まらなかった。

「登場人物」

・学園長…年齢不詳(本人は四十代と言っている)。男。テンジン学園の学園長。なぜ学園長になったのか理由は誰にもわからない。行動や活動も謎に包まれている。身長一八〇センチ。

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