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遠征前の余興

 俺は両腕に違和感を感じていた。

 右腕には豊満な膨らみが腕を刺激し、左腕には右腕ほどの刺激はないが、代わりにシャンプーのいい香りと肌触りのよい感触が俺を刺激する。

 俺は目を開きたい。

 しかし、俺の目はそれを拒否する。

 というか、もしかすると自分から目を開けるのを拒否してるのかもしない。

「どうしよう」

 このまま寝るふりをするのもいいかもしれないが、目を瞑っているので時間が見れないという致命的なことに気付く。

 俺には目を開けて起きるか、このまま寝過ごすか決めるしかなかった。

「でも、遅刻はしたくないしな。しょうがない、起きるか」

 俺は諦めて目を開けることにした。

 瞼を開くとまず、天井が俺を迎え入れてくれる。

 俺は身体を起こそうとするが、やっぱり起こすことができない。

 その時、タイミングよく両腕が解放されたので、身体を起こすことができる。

 身体を起こして、毛布を剥がす。

 そこには、玲奈と美沙紀が気持ちよく寝ていた。

 しかし、もう少し警戒すべきだったと思った。

「ちょ……は、裸!?な、ななな、何で裸なんだよ!!??」

 俺はその場から離れようとしたが、服をがっちりと掴まれていて離れられない。

 その時、美沙紀が瞼を開けた。

 起こしてしまったようだ。

「ん……あ……おはよ……です」

 目をこすりながら、挨拶してくる。

 行動は可愛いんだけどな。

「あ、ああ。おはよう。じゃなくて、何でお前は俺の部屋のベッドで裸のまま寝てんだよ!!」

「え、いや、その……これは、れ、玲奈さんがこれなら海斗さんの気を引くことができると……教えてくれたのです」

 顔を赤くする美沙紀。

 やっぱり、玲奈の差し金か。

 というか、こいつの中では一体俺はどういう人間だと思われてんだ。

「お、朝からいい思いしてんじゃん、海斗」

「玲奈、寝たふりはやめてくれないか」

「それを言ったら、海斗だって寝たふりをしてたじゃないか」

 けらけら笑いながら、俺に近づいてくる玲奈。

「待て待て、何で隠さないんだよ!美沙紀もそろそろ服を着ろよ!」

「美沙紀に裸で寝ることを教えたのはうちだぞ?そのうちが何で隠さないといけないんだ」

 その通りですね、はい。

「それで海斗。うちと美沙紀、どっちがいいよ」

「はぁ!?何言ってんだよ!?」

「何って、もちろん魅力だよ。でも、うちは胸があるからこれで海斗もイチコロだけどな」

「む、胸……」

 確かに玲奈の胸は大きい。

 見た目でもその大きさははっきりとわかるし、服の上からでも豊満な胸は嫌でも見てしまう。

「か、海斗さん。私には胸はないです。でも、私だって海斗さんの為なら、なんでもできますです」

「な、何でも……か」

「え!?な、女の子に……その……もう一度言わせる気ですか。海斗さんって意外とドSなんですね……」

 顔を赤くしながら、もじもじと身体をくねらせる美沙紀。

 裸だからこそ、エロさが増していて、美沙紀をまともに見れない。

 すると、急に玲奈が俺の右腕に抱き付いてくる。

「ちょ、玲奈!だ、抱き付くな!む、胸が当たって……!」

「当たってるんじゃなくて当ててんだよ」

「あ、玲奈さんだけずるいです。わ、私だって……えい、です!」

 美沙紀は俺の左腕に抱き付く。

 胸がないと言っても、膨らみがないわけではないのでそこに意識がいってしまう。

「で、うちと美沙紀、海斗はどっちが好みだよ」

 俺の顔との距離を縮めてくる玲奈と美沙紀。

「とりあえず服を着てくれええええぇぇぇぇぇぇ!!!」

 朝から寮には、俺の叫び声が響き渡った。


 結局、俺たちは時間ぎりぎりに来ることになってしまった。

 二人を押さえるのに無駄な体力を使ってしまった。

「何とか間に合ったか。なんか疲れた」

 これから地上に出て、美羽を救おうというのにいったい俺は何をしていたんだろう。

 この疲れが後々に影響しなければいいと思いたい。

「まあ、朝からあんなに叫んだり暴れたりしたんだ。疲れない方がすごいわ。ちなみに、うちは逆に元気をもらったよ」

「誰のせいだよ、全く。てか、聞きそびれてたけど何で俺の部屋に入ることができたんだ?俺、昨日ちゃんと鍵をかけたはずだぞ」

「それは、まあ、色々とあるんだよ」

 うん、今完璧に誤魔化したよね。

 遠征が終わったら、玲奈に理由を尋ねないとな。

「美沙紀もそうだぞ。なんでこいつの言うことを聞いたんだ」

「私は、その……玲奈さんに誘われてです。でも、一回は断ったんですよ!?断ったんですけど」

 まあ、それも含めて玲奈に聞くしかないか。

 そんなことをしていると、中庭に水野が現れた。

「全員集まったな。それでは、これから遠征に向かう。その前に前衛、中衛、後衛にわかれる」

 また聞いたことのない単語が出てきた。

 まあ、今回は教えてもらわなくてもだいたい理解はできる。

「まずは前衛から」

 水野は生徒の名前を読み上げていく。

「神崎原、出雲。ここまでが前衛だ」

 俺と美沙紀の名前が呼ばれた。

 ここでも行動を共にするみたいだ。

「うちは中衛かな。全く、美沙紀が羨ましいよ」

「な、何言ってるんですか!せ、先生だってその、私が海斗さんの講師だから一緒にしただけなんですよ。そうですよ」

 まるで自分に言い聞かせているようにしか聞こえない美沙紀の言い分。

 美沙紀の顔も少し赤くなっていた。

 まあ、俺にとっても美沙紀と一緒の方がいいと思うんだけど。

「よろしくな、美沙紀。また、色々と教えてくれな」

「え、は、はいです。その、こちらこそです……」

 目を逸らして俺に手を差し出す。

 俺はその手を握る。

 とても柔らかくて、強く握れば割れてしまいそうなくらい繊細で小さな手をしていた。

「い、いつまで手を握っているのですか」

「え、ああ、悪いな」

 俺は美沙紀の手を離す。

 恥ずかしそうに俺が握っていた手を握る美沙紀。

「手、手を握られちゃったです。どうしようです。恥ずかしいのに、すごく嬉しくて顔がにやけちゃうですよ……」

 何か小さい声で呟いている美沙紀。

 何言ってるのか全く聞こえない。

「何言ってんだ」

「ふぇえ!!??い、いや、何も言ってないですよ!?海斗さんのことなんて全くこれっぽっちも言ってないですよ!!」

 強く否定された。

 何も言ってないならそれでいいけど、強く否定されたことにショックを受けた。

 俺が少しへこんでいる間に水野は中衛と後衛のメンバーを発表していった。

「うちはやっぱり中衛だったか。出来れば前衛がよかったけどな」

「仕方ないですよ。先生だって何か作戦を考えての編成なのですから」

「でも、美沙紀は海斗の講師ってだけで前衛に選ばれたんだろ。本来なら後衛にいてもおかしくないんだろうけど」

「そ、それとは全く関係ないのです!!」

 顔を真っ赤にして玲奈の言葉を否定する美沙紀。

 今更だけど、笑ったり怒ったり忙しいやつだよな。

「さて、メンバーも決まったところでそろそろ遠征に出る。言われた順番に並べ」

 水野に言われて生徒たちは、整列し始める。

「じゃあ、俺たちも並ぶか」

「そうですね。並ぶのに遅かったら、先生に怒られてしまうですね」

「そんじゃ、うちは中衛だからこっちだな」

 俺と美沙紀は玲奈と別れて自分たちの場所に並ぶ。

「俺たちって最後の方に呼ばれたよな」

「そうですね。確か、海斗さんが最後に呼ばれたんですよね」

「そうだったな。じゃあ、並ぶか」

 俺は美沙紀の後ろに並ぶ。

 なんか、後ろに並んでいるのにどうしてこうも居づらいんだろ。

 男だからかな。いや、関係ないのかな。

「それじゃあ、これから遠征に行く。その前に確認だ。遠征と言っているから知っていると思うが、今回は地上戦だ。ということは、魔法の加護がないことになる。そうなると、死なないという考えが通用しないことになる。油断をせずに遠征に向かうように」

 そう言って、水野は地下道に向けて進む。

 生徒達も後に続いて歩いていく。

 俺も美沙紀の後をついて行く形で歩く。

 いくらか歩き続けると道が薄暗くなってくる。

 外の太陽の光が射さなくなってろうそくの光だけになる。

「やっぱりここだけは雰囲気に慣れないな」

「海斗さんは一昨日にここを歩いてきたんですよね」

「まあな。それに学園長室には、一昨日昨日と行ったわけだしもう暗いところに行きたくないのかもな」

「そんな頻度で行ってれば、そう考えるのも無理はないですね」

 苦笑いをする美沙紀。

 たぶん俺も今、美沙紀と同じように苦笑いをしているだろう。

 そんなことをしていると、急に前が止まる。

 俺も止まろうとしたが、足元に大きめの石があり、その石に足を引っ掛けてバランスを崩す。

 転ばない様に踏ん張ろうとしたが、それが結果としてさらにバランスを崩すことになった。

「ぅおあ、ああ」

「きゃ」

 俺は小さな悲鳴を上げた誰かと一緒に転んだ。

「……ってて。あれ、なんだ。この固い地面と対照的な柔らかさと決して大きくはないが手頃サイズのこの膨らみは」

 右手は地面に着いていたが、左手は地面ではない何かを掴んでいた。

 俺が顔を上げると、美沙紀が顔を赤くしながら何かを我慢しているような顔をしていた。

 俺はそれでピンときてもう一度左手を見る。

 左手は明らかに美沙紀の胸を触っていた。

「あ、わ、悪い!そ、その全く悪気はなかったんだ。だから、その……」

「あの、そういうなら私の体から降りてくれませんですか。重いんですけど」

 俺は今更になって、美沙紀に馬乗りになっていることに気付いた。

 俺は素早く美沙紀の上から飛び降りた。

 周りの目は女子だけという状況だったこともあって、視線が俺に刺さっていた。

「出雲、そういうことは私や生徒がいないところでやれ」

「違うんです!俺はワザとこんなことをしたわけじゃないですよ!?」

「わかったから黙れ。黙らなかったら、ミンチ状に仕上げるぞ」

 水野の言葉に俺は何も言えなかった。

 俺は美沙紀を立ち上がらせて、並び直す。

 未だに痛い視線が俺に突き刺さる。

「さて、これから地上に出る。出雲みたいに油断をしてると死ぬからな。みんな、絶対に生きて帰って来い」

 そういって、水野は地上に向けて階段を歩き始める。

 生徒たちも後に続いて歩いていく。

 俺は気を引き締めるために自分の頬を叩いて、気合を入れ直す。

「待ってろよ、美羽。お前を絶対に救ってみせるからな」

 そう呟いて、俺は地上に向けて歩き始めた。

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