キミのコワレタココロ
初投稿です。
残酷な描写があります。苦手な人はブラウザバックをして下さい
やあ、久しぶり。僕のこと覚えてる? 中学が一緒で同じクラスだったんだけど……。
覚えてないみたいだね。ちょっと傷つくよ。
じゃあ、思い出話でもしようか。
まずは、君と僕の出会いを話そうかな。三年生の時、君と初めてクラスが一緒になった。
当時、内気であまり友達がいなかった僕を君はイジメの対象にした。すぐに僕に対する嫌がらせが始まった。
僕が話しかけると君は不機嫌になりながら答えたり、帰りに僕の靴を隠して帰れなくさせたり、掃除道具入れに僕を無理やり押し込めて、暗くなるまで閉じ込めたよね。
そうそう、教科書がカッターナイフで切り裂かれたせいで使い物にならなかった時もあったね。僕の机の中に虫や動物の死骸が入っていた時は、僕は精神的に追い詰められたよ。
あの時、自殺する人の気持ちが分かった気がするよ。
けど君はそれだけじゃ飽き足らず、僕を殴ったり、蹴ったりし始めたよね。
その時の君の顔は今でも覚えてる。いや、忘れることが出来ないかな。僕をいたぶっている君の顔は、笑っていた。僕はとても憎かったよ。でも、反撃したら、さらに悪化してしまうと思った僕は何も出来なかった。
一度だけ先生にも相談したこともあった。でも先生達はそれが問題になって世間に知られてしまうとまずいと思ったのか、大きく動いてくれなかったんだ。
僕は卒業まで君にイジメられた。辛かった、凄く辛かった。でも、君に感謝してる事もあるんだよ。
高校が楽しく感じられたんだ。何故だか分かる? 君がいなかったからだよ。君みたいにイジメてくる人がいなかったんだ。
だからこそ僕は疑問に思った。
何故君は僕をイジメていたんだろうって。ねぇ……なんで僕をイジメたの? ……ねぇ……教えてよ……なんで? …………なンで………………なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナんでなんでナンデダヨなんでなンでなんでなんでナンでなんでなんでなンデなんでなんでなんデなんで、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてドウシてどうしてどうしてどウしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうシテどうしてどうしてドうしてどうしてどうしてどウシてどうしてドうしてどうしてどうしてどうシて、ぼくを蹴らナいで、殴らナいで、ヤめて、タスけて、イタい、コワい、ツラい、ニクい、ㇱにたい、コロしたい。
………………あ、ごめん。少し取り乱しちゃったよ。
そんなに怯えないでよ。落ち着いてよ。オチツケ。
大丈夫?
…… 帰りたいだって? ゆっくりしていきなよ。まだ時間があるんだし、もう少し話そうよ。それに両手両足を拘束してる手錠をどうやって外すの? 僕はそれを外す気はないよ。
話しを続けるね。いいよね? まあ、君の意見は受け入れないけど。
それでね、僕はイジメられた理由を考えたんだ。でね、あの時の君の笑顔を思い出したんだ。僕も同じことをすれば君の気持ちが分かると思ったんだ。だから、君をここに連れてきたんだ。
そろそろ始めようと思うんだけどどう思う?
どうしたの? ……え、僕をイジメたことを後悔してるの?
そうなんだ。ずっと僕に謝りたかったんだ。
……なら許してあげるよ。嬉しそうだね。でも、ただでは許さないよ。僕が出題する問題に答えて、正解したら許してあげるよ。
問題 僕の名前は?
僕をイジメたことを後悔しているなら簡単でしょ? 早く言ってよ。はやく、ハヤクイエ。
……やっぱりネ、君は僕のことなんか覚えていないんだ。
あ、ゴメン。今のは少し語弊があったね。君は僕のことなんか覚えようとしなかったんだよね。
ただ、自分のストレスを発散できる道具としてしか見ていなかったんでしょ?
もう謝らなくていいから。喋らないで、聞いてる? ねぇ……。おい……。静かニシろ……。ダマレ‼
お前がどんなに謝っタって、僕はユルすつもりはナい。そもそも、お前がやったことガ謝罪で済むと思ってるノ?
お前の謝罪の言葉ナんて無価値だ。無価値をどンナに積み上げても僕のココロは動かない。
オマエニフクシュウスル。
……ゴメンね。また、取り乱しちゃったよ。とりあえず君を痛めつけるとするよ。大丈夫、道具はあまり使わないから。君が死んだら困るし。
だって、死ぬ時の苦しみなんて一瞬でしょ? そんな楽なことはさせないよ。僕の気が済むまで君をいたぶる。
…………どう、痛い?
それが僕が味わってきた痛みだよ。いつも僕はその痛みを耐えながら生活をしてたんだよ。
あれ? 血が出てるね。ちょっと待ってね、今消毒をしてあげるよ。
なんで治療してくれるのかだって? 小さい頃、よく母親に言われていたんだ。
タイセツナオモチャハ、ダイジニコワレナイヨウニシナイサイッテ。
ここは何処だ? 何処かの部屋みたいだが、俺はいったい。それにこの手錠は……。
「やあ、久しぶり。僕のこと覚えてる? 中学が一緒で同じクラスだったんだけど……」
声が聞こえ視線を向けると、そこには俺と同い年ぐらいの男性が微笑みながら立っている。
「あんたは誰だ?」
「覚えてないみたいだね。ちょっと傷つくよ」
そう彼は言うが、俺は彼を知らない。覚えていないのではなく、本当にこの人物を知らないのだ。
「まずは、君と僕の出会いを話そうかな。三年生の時、君と初めてクラスが一緒になった。当時、内気であまり友達がいなかった僕を君はイジメの対象にした。すぐに僕に対する嫌がらせが始まった。僕が話しかけると君は不機嫌になりながら答えたり、帰りに僕の靴を隠して帰れなくなったり、掃除道具入れに僕を無理やり押し込めて、暗くなるまで閉じ込めたよね。そうそう、僕の教科書がカッターナイ――」
話を聞いていくがやっぱり彼は俺を誰かと勘違いしているようだ。
「何故君は僕をイジメていたんだろうって。ねぇ……なんで僕をイジメたの? ……ねぇ……教えてよ……なんで? …………なンで………………」
彼は静かにうつむいている。心配になり俺は顔を近づける。
「大丈――」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでナんでなんでナンデダヨなんでなンでなんでなんでナンでなんでなんでなンデなんでなんでなんデなんで、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてドウシてどうしてどうしてどウしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうシテどうしてどうしてドうしてどうしてどうしてどウシてどうしてドうしてどうしてどうしてどうシて、ぼくを蹴らナいで、殴らナいで、ヤめて、タスけて、イタい、コワい、ツラい、ニクい、ㇱにたい、コロしたい」
「うわあっ!」
俺は驚いた。急に喋りだしたことに驚いたのではなく、彼の目がとても人の目なのかと疑いたくなるくらいに光を感じず、その目に飲み込まれる錯覚すら起こす。それほど彼の目には生気を感じない。
恐い。その一言しか思い浮かばない。
「………………あ、ごめん。少し取り乱しちゃったよ」
彼は穏やかに話すが、俺は震えが止まらない。先ほどの目が頭から離れない。
「そんなに怯えないでよ。落ち着いてよ。オチツケ」
最後の一言が鋭く冷たい杭のように心に刺さり、俺の震えは止められた。
「あ……あ、あぁ……」
声が出ない。
「大丈夫?」
彼は俺の顔を覗き込むように顔を近づけるが、俺は目の焦点が合わない。
「帰らせてくれ……頼む……もう……」
俺は声を絞り出すように懇願する。
「帰りたいだって? ゆっくりしていきなよ。まだ時間があるんだし、もう少し話そうよ。それに両手両足を拘束してる手錠をどうやって外すの? 僕はそれを外す気はないよ」
付けられた手錠に見る。確かにこの手錠は簡単には外れない。無理だ。
「話しを続けるね。いいよね? まあ、君の意見は受け入れないけど」
彼は俺にお構いなしに話を続ける。
「それでね、僕はイジメられた理由を考えたんだ。でね、あの時の君の笑顔を思い出したんだ。僕も同じことをすれば君の気持ちが分かると思ったんだ。だから、君をここに連れてきた。そろそろ始めようと思うんだけど、どう思う?」
どう思うって、まさかイジメの仕返しを俺にするつもりなのか。
正直に話しても彼は耳を貸さないだろう。
なら、話を合わせるしか。
「どうしたの?」
「ゴメン、君をイジメて」
「……え、僕をイジメたことを後悔してるの?」
俺は頷く。
「ずっと謝りたかった」
「そうなんだ。ずっと僕に謝りたかったんだ」
少し考えた様子を見せる。
「……なら許してあげるよ」
「ありがとう!」
やっとこれで解放される。
「嬉しそうだね。でも、ただでは許さないよ。僕が出題する問題に答えて、正解したら許してあげるよ」
やっぱりただでは帰らしてくれないのか、でも答えるしかない。
「問題 僕の名前は?」
……は? そんなの分かるはずがない。今日会ったばっかり人の名前なんて。
「僕をイジメたことを後悔しているなら簡単でしょ? 早く言ってよ」
どうする。
「はやく」
何か言わないと。
「ハヤクイエ」
しかし、俺は黙まったままだった。
「……やっぱりネ、君は僕のことなんか覚えていないんだ。あ、ゴメン。今のは少し語弊があったね。君は僕のことなんか覚えようとしなかったんだよね。ただ、自分のストレスを発散できる道具としてしか見ていなかったんでしょ?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
俺はただひたすら謝って許してもらう方法しか頭に浮かばなかった。
「もう謝らなくていいから。喋らないで」
そう言われたが俺は続けた。
「聞いてる? ねぇ……」
ただひたすら、
「おい……。静かニシろ……」
謝り続けた。
「ダマレ‼」
彼の大声で俺はひるむ。またあの目だ。
「お前がどんなに謝っタって、僕はユルすつもりはナい。そもそも、お前がやったことガ謝罪で済むと思ってるノ? お前の謝罪の言葉ナんて無価値だ。無価値をどンナに積み上げても僕のココロは動かない。オマエニフクシュウスル」
俺は恐怖で体が動かなくなった。
「………………ゴメンね。また、取り乱しちゃったよ。とりあえず君を痛めつけるとするよ。大丈夫、道具はあまり使わないから。君が死んだら困るし。だって、死ぬ時の苦しみなんて一瞬でしょ? そんな楽なことはさせないよ。僕の気が済むまで君をいたぶる」
彼は俺の顔をおもいっきり蹴り上げた。
「ぐぼぁっ」
「どう、痛い? それが僕が味わってきた痛みだよ。いつも僕はその痛みを耐えながら生活をしてたんだよ」
俺の鼻から血が流れる。
「あれ? 血が出てるね。ちょっと待ってね、今消毒をしてあげるよ」
彼は俺の治療を始める。俺にはその意図がまったく分からない。
「なんで、俺を治療するんだ?」
「なんで治療してくれるのかだって? 小さい頃、よく母親に言われていたんだ。タイセツナオモチャハ、ダイジニコワレナイヨウニシナイサイッテ」
彼は不気味な笑顔を浮かべながら言った。そして、俺をいたぶるのを再開。
彼は顔を狙わず、俺の手を狙う。
殴る、蹴るのではない。にっこりと笑い、そっと俺の薬指を握り、
「ぎゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ! はぁっ、はぁっ」
曲がるはずのない方向に曲げる。指は元の場所に戻らない。確実に骨が折れている。
「これは確実に骨が折れたね。でも、完治すれば頑丈になるから壊れにくくなるよ」
彼は悪びれる様子もなく喋る。
「でも、それじゃあ指が変な風にくっつくよね。真っ直ぐにしないと」
彼は言い終えると折れた指を握り、ゆっくりと、真っ直ぐに戻し始める。
「はぁっ、はぁああ、ぐああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」
指は元通り真っ直ぐになり、彼は治療を始める。
「じゃあ、治るまでほかの部分で遊ぼうかな」
彼はドアを開け外に出ていく。
すぐに彼は戻ってきた。彼の手にはペンチが握られている。
「なんで……道具は使わないって」
「確かに、僕は一応〝使わない〟とは言ったよ。でも、僕はこう言ったはずだよ、〝あまり使わない〟って」
「そんな……やめ――」
言い終える前に彼はペンチを俺の口の中に突っ込む。
「むぐっ!」
そして、彼は思いっきりペンチを俺の口から引き出す。
一瞬何が起こったか分からなかったが、ペンチに挟まれた自分の歯を見た俺は遅れて痛みを感じる。
「があああああああああぁぁぁぁぁぁ! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い! いたい! イタい!」
「アははははハハはハははハハはハハははははははははははは」
口から血を飛ばしながら、もがき苦しむ俺を見た彼は狂喜する。
彼は次第に落ち着きを取り戻していく。
「はは、はぁ、はぁ……ゴメン、少し笑いすぎたよ。とりあえずこれで血を抑えなよ」
そういって彼はポケットから出したハンカチを俺の口の中にねじ込む。
息は出来るが、ハンカチのせいで喋ることが出来ない。
「次はどうしようかな」
彼は無邪気な顔で考える。
「そうだ。いいこと思いついた」
彼は先ほどのハンカチよりも大きい布を取り出し、俺に目隠し椅子のようなものに座らせ縛った。
「う! うーーーー!」
身動きが取れず、何も見えなくなった俺に不安が襲い掛かる。
いったい彼は何をする気だ。今度は何処を狙われる。顔、足、腕、それとも腹か。と、俺が考えていると冷たい何かが俺の首をなぞる。だんだん、なぞられたところから暖かい液体が流れる感じがする。
より一層不安にかられた。
「うーー! う! うーーーーーーーーーーーー‼」
死んでしまうと思った俺は彼に助けを求めた。
彼は俺の口に入っているハンカチを取り除く。
「ぷはぁ、助けてくれ! 血が……血が……」
「落ち着きなよ」
なだめるように俺に話しかけると、俺の目隠しを取る。服には一滴も血がついていない。
「え、なんで……血は……」
「びっくりした? 」
彼はボールペンとペットボトルを俺に見せた。
「いい反応してくれるから復讐し甲斐があるよ。これからもよろしくね」
彼は部屋を出ていった。この日は痛めつけることはもう無かった。
翌日からも俺は痛めつけられ、治療され、痛みつけられ、治療され…………。
なぜ俺がこんな目に…………俺が……何をした……………………なぜだ…………………………なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだナゼだなぜだナぜだなぜだなぜだナゼダにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくいニクいにくいにくいにくいニくいにくいにくいニクイ。
俺は凄い剣幕で彼を睨む。彼はその様子を見て、笑った。
「やっと僕の痛みが少し分かってくれたみたいだね」
ふと、彼は自分の腕時計に視線を移す。
「あ、もうこんな時間だ。食事の準備をするね」
彼はドアを開け部屋を出る。
俺は彼の背中に向けてヒトコト言った。
「オマエニフクシュウスル!」
彼は壊れていた。人を判別できないほどに、壊れていた。
そして俺も、彼のように心がコワレテいった。
オナジメニアワセテヤル。
終
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