十三話 明かされる真実1
神谷と由希は海里の家に向かって歩いていた。海里と接触する計画を経ててから丸一日が経っていた。その間で二人は充分過ぎるほど事細かに作戦を立てていた。
「神谷君ってさ。外歩くんだね」
「僕を何だと思っていたんですか?」
「いや、引きこもりなのかな。って思ってた」
「違いますよ。健全な中学生です」
「だって学校行ってないでしょ?」
確かに神谷は中学校には行って無かった。でもどうしてそんな事を知っているのか疑問に思った。
「何となくだけど分かるよ。両親は知ってるの?」
「家では兄の死に塞ぎ込んでいる弟を演じてますから。父も母も気にしてませんよ」
「そういう問題じゃないでしょ。学校はちゃんと行かなきゃ駄目だよ。いつか絶対に後悔する」
母親と怒られた少年の関係の様だった。
「全てが終わったらちゃんと行きますよ。それまでは他のことに気を遣いたくないんです」
「なら良いけどさ。じゃあ、その為に絶対に捕まっちゃ駄目だね」
神谷は頬赤らめた。由希の魅力に神谷も気付き始めていた。
でもそれ以前にきちんと確かめておかなければならないことが彼にはあった。
神谷は歩を進めるのを止め、立ち止まった。
「どうしたの?」
「このまま進んで良いんですか。もう海里の家に着いてしまいますよ」
由希も足を止め神谷の近くまで行った。
「気付いてたんだ」
「何となくですけどね」
神谷は茂がホテルの会議室で由希を見かけた時のことを説明した時から違和感を感じていた。と言った。
「何処かおかしいとは思っていたんですよ。プログラムについて説明していた時に分かりました。どうしてあなたは変装をして会議に参加していたのですか?」
茂からそのことを指摘された時、彼女は語尾を濁して誤魔化していた。
「何でだと思ったの?」
由希の表情は神谷の位置からは読み取れなかった。
「変装をするということは顔を見られたくない相手がその場にいたということです。その相手は明福社の人間。つまり唐沢ではないのですか」
「でも遺族の人達に顔を隠していたっていう可能性もあるよね。遺族に顔を会わせるのが辛いって理由で。そのことには気付いていたでしょ?」
「もちろん」
「じゃあ何でそっちじゃないって分かったの?」
神谷は少年にしか出せない笑顔を見せた。
「どっちかは正直分かりませんでした。だから今、自信満々に言ったんですよ。反応を見るために」
「じゃあ、私はまんまと騙されたって訳か。やっぱ神谷君は凄いや」
「やっぱり僕一人で海里に会ってきましょうか」
「それは大丈夫。その人は私の顔を知らないから」
神谷は由希の顔を見つめた。真実かを見極めているのだろう。
「分かりました。じゃあ行きましょうか」
「ちょっと待って。何で私と唐沢が顔見知りなのか聞かないの?」
「話したい時に話せば良いですよ。それにあなたは僕を信じるって言ってくれましたから。僕も由希さんを信じます」
由希の瞳が一瞬潤んだ。
「うん分かった。ありがとう。大丈夫私は神谷君の味方だから」
「それより」
神谷は何処か遠くを見上げる。
「今頃あっちはもっと大変なことになっているかもしれませんしね」
「あっち?」
「ええ。これは二つ目の試練ですよ、茂さん」