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drive mail  作者: 犬芥 優希
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十二話

「教えるのを避けていた訳じゃないんですけどね。色々複雑なんて説明するのが難いんですよ」

「出来る範囲で良いから教えてくれよ。俺達にだって知る権利はあるはずだ」

神谷は少し困った表情を見せた。

「分かりました。ではとりあえず、今どうやって唐沢の携帯に侵入したのか教えますね」

そう言うと神谷はキーボード上のボタンを一つ押して、画面をまた一つ切り替えた。

「これが唐沢に送ったメールです。このメール自体は何処の家庭でも使っているような普通の物です」

「でも、この本文に書いてある記号が普通の物ではないんだろ?タグって言ってたな」

「はい、そうです。簡単に言うと、このタグがdrive mailです」

茂は神谷の言っている意味が分からず黙り込んだ。そもそも茂は機械音痴の部類に入る人間だ。

「drive mailという既存のプログラムは無いってことだろ?」

代わりに敬が返答した。

「はい、そうです。僕が作り上げたプログラム、それがdrive mailです」

完全には理解していない様子の茂と由希には構わず、神谷は話しを続けた。

「僕が作った、このメール。文の中程に青く表示されている部分がありますよね?」

確かに青で表示されている部分はある。他の文字は黒いので、そこだけが妙に浮いていた。三人は小さく頷く。

「これはあるURL。このメールを開くとそのURLに飛ぶように設定されています」

「俺に送った電話の強制発信のやつと同じ様な物か?」

「そうです。それの応用版だと思って下さい」

「それを開くと何処に飛ぶんだ?ただのホームページに飛ぶ訳じゃないんだろ」

「もちろん。このリンク先はブラクラ、つまりブラウザクラッシャーがあるページに繋がっています」

「ブラクラ?」

敬を除く二人が、ほぼ同じタイミングで聞き返す。

「ブラクラって言うのはバグとかを悪用して作ったWebページのことだよ。開くと画面がフリーズ、操作が出来なくなる」

敬が説明した。パソコンの用語を使わずに説明するのは難しそうだった。

「このブラクラにも仕掛けをしてありましてね。このブラクラを開いてから元に戻るまでの約一分間。その間、フリーズした携帯は僕が自由に使えるようになるんです」

「さっきはその一分の間に唐沢の携帯から情報履歴を抜き取ったって訳か」

「そうです。時間との勝負でした」

「でもさ、何で一分なの?もっと長く設定した方がやりやすいじゃん」

由希の質問に神谷は虚を疲れた様に見えた。その質問は想定していなかったのだろう。

「確かに、タグをもっと複雑にすれば長い間乗っ取ることが可能でした。でもそうしなかったのにも理由があります」

「一つは唐沢に疑われるのを防ぐためです。あまりにフリーズしている時間が長いと普通のブラクラじゃないと感付かれる可能性がありましたから。二つ目。これは皆さんの反感を買うかもしれません」

そこで神谷は一呼吸置いた。

「僕はこの復讐をゲーム感覚でやりたいんですよ。それも難易度が高いゲームです。だから僕はプログラムに何点か枷を設けました」「ゲーム?」

やはりそこに食い付いたか、と神谷は眉を潜めた。

「ゲームと言っても娯楽の感覚でやるとかそういうことではありません。もしそうだったら、協力している皆さんにあまりに失礼ですから」

「じゃあどういうことなんだよ」

 明らかに茂は苛立っていた。

「あまり今回の復讐を僕は深刻に考えたくないんです。僕がこれからやろうとしていることは、法の網に引っ掛かることです。もしかしたら警察に捕まるかもしれません」

「…」

「でもゲームで自分が主人公なら客観視することが出来ます。事実から目を背けたいのかもしれません」

「捕まるのが怖いのか?」

「かもしれません。僕はまだ中学生ですから」

 自嘲気味に神谷は言った。

「出来る限り皆さんには犯罪に含まれるようなことはさせないつもりです。でも確証は無い。それが嫌だという人は抜けて貰って結構です」

そう言うと、神谷は始めてパソコンから視線を外し三人の方に体を向けた。

茂は鼻を軽く掻いた。

「最初からそんなの覚悟してるって。俺は神谷が指示した通りに動くよ」

残りの二人も俺も、私もと茂に賛同した。

「分かりました。でも無理だけはしないで下さい」

「だからお前の言う通りに動くって」

話は鈴木と亀谷への接触についてに戻る。

「二手に分かれて行動しようと思います」

「それが良いだろうな。効率も良いし」

「それじゃ僕と由希さんが鈴木高義に。敬さんと茂さんが亀谷の監視で良いですか?」

「俺と由希の方が良いんじゃないのか」

由希のことを守るのは自分しかいないと決めてかかっていた茂は面を食らう分け方だった。

「いえ。僕が由希さんと一緒に行きます。良いですよね?」

「うん、どっちでも良いよ私は」

茂はそれ以上不平は言わなかった。

「なら良いけどさ」

「それじゃ決まりですね。また三日語にここで集合としましょう」

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