第一話 始まり
初めての投稿です。
読みづらかったりしたら、本当にすいません。
感想を頂けたら幸いです。
「drivemail」
序章
机上のライトは一つしか点いていない。いつもに増して暗い神谷の部屋で茂は由希と向き合って座っていた。もう沈黙は三十分以上続いている。その間、どう切り出せば良いのかをずっと考えていた。部屋の暗さは自身の気持ちを代弁していた。
「あいつも寂しかったのかもしれないな」
「え?」突然、沈黙が破かれたことに由希は驚いた様子だった。無理もない。自分だって何故こんな言葉が口をついて出たのか疑問に思っているのだから。
「神谷だよ」もう、このまま話を進めるしかなかった。
「そうじゃなくて、何でそう思うの?」
一瞬答えるべきかどうか茂は迷った。
「あのプログラムの名前覚えているだろ?」
今度は由希に一瞬の間が出来る。会話は途切れ途切れにしか進まず、言葉のキャッチボールにはなっていない。
「覚えてるよ。drivemailでしょ?」
ここでもやはり茂は迷った。むしろ先程以上に。これ以上言う事が、神谷のプライドを傷つける事に繋がるかもしれなかったからだ。もし、傷付くのだとしたらそれは由希にだけは絶対に聞かれたくないはずだった。
「神谷はプログラムの名前を支配、操作っていう意味を含む物にしたかったんだ。まあ、それがあのプログラムの武器だから当然なんだけど」
「だから英訳してdrivemailなんじゃないの?別に普通だと思うけど」
「まあ、それもそうなんだけどさ」語尾を濁して話すのも、もう限界だった。
「他にもそんな単語はたくさんあるじゃないか。もっと分かりやすい物ならcontrolとかだってあるだろ?」
「うん、そうだね」
「でもあいつはdriveを選んだ。それがあいつの本心なんじゃないかって思ったんだ」
「どういうこと?」
由希は曲がったことやまどろっこしいことが嫌いな性格だ。つまり、今の自分は嫌いなはずだ。
「driveには温かみがあると思わないか?」
「え?」あまりに似合わない発言だったので由希は困惑したのかもしれない。
「ドライブって一人じゃ出来ないだろ。助手席に同席者がいて初めてドライブになるんじゃないのかとな。ま、これはあくまで俺の仮説だけど」
「ちょっとそれは格好付け過ぎだよ、別に一人でもドライブって言うし」
「神谷は中学生だからな、そういうロマンを持っても変じゃない年頃だろ?」
長い沈黙が流れた。神谷との思い出が走馬灯のように茂の脳裏をかすめていった。
「そのさ、同席者って言うのは神谷君の中では誰だったんだろうね?」
由希は真剣な眼差しで茂を見つめた。
「俺にもそれは分からない。もしかしたらそれは俺かもしれないし、あいつの兄貴かもしれない。他の誰かかもしれないしな」
横目で由希をちらりと見た。深い意味をいくつか込めたつもりだった。
「でも、やっぱり犯罪は犯罪だよ」
「それは誰にも否定できないさ。それが正論だからね」