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「お前は馬鹿か!馬鹿だ!」
みっくん宅、みっくんの部屋、仁王立ちするみっくんの前で正座する俺。既に涙目な俺に構うことなく罵倒の言葉をこれでもかというほど吐き出すみっくんマジ怖い。
なんでこんなことになったのかを考えると、それはやっぱりあの宮井王子様のせいだと思う。手柄を携え意気揚々とみっくんを訪ね迎え入れられたところまでは良かった。興奮気味に全てを喋り終え、どーだと言う気分と表情でみっくんを見れば、笑顔で鬼の形相をしたみっくんがいた。バンッとテーブルを高らかに打ち鳴らし、立ち上がって腕を組んだかと思うと、状況に着いていけず呆ける俺に正座を強要。それ以降、訳もわからぬままに説教されている。どうやら、宮井王子様と連絡先の交換をしてしまったことが逆鱗に触れたようなので、それはつまり宮井王子様がいけないと言うことだ。だって俺が提案したわけじゃない。
「お前はなんでそんなに世間に疎いんだ!」
「え?世間?」
「馬鹿か!宮井だぞ!あんな奴のアドレスなんて誰が知ってるんだ!くそっ!」
「俺?え、あ、もしかしてこのアドレス偽物?俺、騙され」
「ちがーうっ!…いや、そうかその可能性があったか…」
「え?え?」
おもむろに片手を差し出すみっくんに疑問符を浮かべながらも、縋るようにその手を掴んだ。ら、振り払われた。なんで!
「ケータイ出せ。宮井にメール送ってみよう」
幾分表情の和らいだみっくんの機嫌を更に損ねることはすまいと、素早くケータイを取り出して差し出す。
「えーと、みやいみやい…」
「みっくん、なんて送るの?」
「空メでもいーけど…なんか内容決めるか」
「あ、それなら、明日迎えに来るとか言ってたけど家知らないだろうからどこで待ち合わせなのか聞きたい」
「は?」
「え?」
「待ち合わせって?」
「あれみっくんお顔が怖い…」
「説明しろ」
「え?え?待ち合わせのこと?お詫びになんか奢ってくれるらしいから土日どっちがいいって聞かれて、あれ?この話はしなかった…?」
「してないし。はぁ、マジか。あいつマジで…。とりあえずメール送ろう」
脱力したみっくんにケータイを返されたので、自分で聞きたい内容を打ち込んでいく。
「えーと、明日…は…どこ…集合…?っと」
「相変わらず適当だな」
「そう?よし送信!」
「まったく、面倒なことになったな」
「そうなの?」
「お前は知らないだろうけど、宮井は他人にアドレス教えないことで有名…」
「あ、返事きた!」
「…早いな。なんて?」
「えーと、初メール嬉しいな、明日は10時に家まで迎えに行くから待っててね、すごく楽しみにしてる、だって」
「うわ、絵文字使ってるし。とりあえず偽物ではなさそうだけど、なんかキャラちがくないか?」
「そう?」
みっくんはなんだかとっても渋い顔をしていた。明日は録り溜めたテレビを見る予定だったのに、と残念な気持ちになった俺は、宮井から送られてきたメールを見ながら深く息を吐いた。
続く
誤字等ご容赦ください。