表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

「あーっと、あのさ、ちょっと…話っていうか…、お願いっていうか…」

「なに?なんでも言って」

「…なんでも…?」

「もちろん。佐久間のお願いならなんでも聞いてあげる」

「じゃあ俺の下駄箱壊さないで」


微笑む宮井に後押しされ、言いたいことを直球で伝えた。そろりと顔を上げると、いかにも驚愕してますといった表情の宮井がいた。


「あの、宮井…?」

「ごめんもう一回言ってくれる?」

「だから、俺の下駄箱殴って壊すのやめて欲しいんだけど」


一向に驚愕から立ち直らない宮井の様子に、もしや宮井が犯人ではなかったのかと一瞬不安になったものの、みっくんのお墨付きだしなぁと考えを改めた。


「…いつ?」

「え?」

「いつ殴った?」


小さく紡がれた声を拾い取れず反射的に聞き返すと、表情の戻らないまま再度問い掛けられた。あぁそうか。


「誰の下駄箱かなんて気にしてないよな…。えーと、先週と先々週と先々々週…?あれこんな言葉あったっけ?」

「あると思うよ」

「そっか…」


どうでもいい疑問に素早く返答したあと無言で考え込む宮井に対して、どうすることも出来ずに途方に暮れる。ふと足元を見れば一匹の蟻がふらふらと歩んでいたので、それを目で追いながら時間を潰した。右にいき左にいき、行きつ戻りつしていた蟻が見えなくなるほど遠くまで行ってしまったところで、ようやく宮井が顔を上げた。


「佐久間、ごめん。知らなかったとはいえ迷惑かけたよな」

「あ、うん。いや、いいんだけど」

「お詫びに、なんかおごるよ。おごらせて。ね?お願い」

「いやいや。それほどのことじゃないしいいよ」

「でもそれじゃ俺の気が済まないし。ね?」

「んー、じゃあ…おごられようかな…」

「決まり!じゃあ土日のどっちか、ゆっくり出来る日にしよう。どっちがいい?」

「え?土日?」

「うん。どっち?」

「えーとえーとじゃあ土曜日…」

「じゃあ明日ね。朝迎えに行くからさ。連絡先教えて」


急展開についていけず、よくわからないままに宮井と連絡先の交換をした。俺が王子の連絡先を登録することになるなんて、一体なにがどうなってるんだろう?首を傾げる俺を残し、宮井は機嫌の良さそうな表情で足取りも軽く去っていった。

まぁとにかく、これで俺の下駄箱が悲劇に見舞われることはもうないだろう。一つ大きく頷くと、みっくんに手柄の報告をするべく、駆け足でその場を後にした。

続く

誤字等ご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ