表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7


確かに、声を聞けばわかるかもしれない。大した言葉は聞いていないけれど、低くて冷たいのにどこか落ち着くような、簡単に言うといい声だった。でも、噂の王子様とは印象が掛け離れていて、あの声が、華やかな噂の途切れない人物のものだとはどうしても思えなかった。

宮井という名の王子様は、みっくん情報によるととんでもなくモテる男のようだ。常に彼の取り巻きが周囲を固め、彼に害をなす者には容赦ない鉄槌が下るらしい。もちろん暴力ではない。いや、精神的暴力と言ってもいいかもしれない。不機嫌なときのみっくんのようで、そのみっくんが語っていることにすこし笑えた。俺から見たら同類だ。

その取り巻きの方々には不可侵条約なるものがあって、その筆頭に掲げるのが抜け駆けの禁止。取り巻きとして傍に近付くことを許された者は、もう告白すらできないのだ。彼女らが勝手に決めたことであるようだが。


てくてくと、みっくんに教えられた王子様の教室へと足を向ける。顔知らないんだからついてきて、とお願いをしたのに、行けばわかるとあっさり却下されてしまった。賑わう廊下を抜け、目当ての教室をひょいと覗き込むと、多数の女子生徒に囲まれたイケメンがにこやかに会話していた。あれか。みっくんの言う通り、顔を知らなくてもすぐにわかった。窓側の席で、ハーレムを築くその姿は、確かに王子様のように気品があって格好良くて、女子が騒ぐのも無理ないなと思った。彼が、あんな暴挙に出るなんて信じられなかったけど、そのことの確信を得るには声を聞かなくてはならない。忍び足でハーレムへと近付いていく。


「宮井くん、こないだの試験、また一番だったね!すごーい。あたしたちにも勉強教えてほしいなぁ」

「ん。たまたまね。俺で良ければいくらでも教えるから、今度勉強会でもしようか」

「えー!いいの?やったぁ!」

「あたしも!」

「いいよ。みんなで勉強しよう」


ちょうど聞こえた会話の内容で、王子様は頭も良し、とどうでもいい情報を得つつその穏やかな、どこか落ち着くいい声は、下駄箱で聞いたあの声と通じるものがあるなと、咄嗟にそう思った。



「どうだった?」

「なんかそれっぽい」


自分の教室へ戻ればみっくんが、瞳を好奇心でキラキラさせて待っていた。


「やっぱりねぇ。なんか性悪っぽいもんね」

「確証はないけどね」

「それで、どうする?」

「どうするって?」

「なんのために見に行ったんだ!また下駄箱壊されるよ?」

「あ、そうだった。でも王子様に物申すなんて怖いよ」


ハーレムの熱気は凄まじかった。休み時間ごとにあんなに囲まれたら、全然休めないよな。トイレまで着いてきそうな雰囲気だし。


「呼び出せばいーじゃん」

「は?」

「だから、手紙でもなんでもいいから、放課後呼び出せばいいじゃん」

「マジで?」

「マジ」


みっくんが、当然というように首を縦に振るのを見て、これは逆らえない決定事項なんだとため息をついた。まぁ下駄箱壊されるのはもう勘弁してほしいし、話せばわかってくれるよな。


続く

誤字等ご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ