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5.捕獲

「な、何言ってるんですかッ?」

「そのまんまだ。24時間とまではいかないが基本、一緒に行動してお前の護衛をする」

「嫌です!!」

「なんでだ」

何でって、そりゃあ決まってるでしょう、

お前ら生徒会と関わりたくないからだよ!

護衛?基本一緒に行動?

全くもっていりません。

拒否します。

全力で拒否します。


「まぁ、そうゆうことだから」

そう言うと、会長は立ち上がってスタスタと扉の方へ歩いて行く。

おい待てコラ。

待ちやがれ。私はまだ認めてないぞ。

「ちゃんと来いよ」

はっ、行くかボケ。

「来なかったら、有る事無い事言いふらすからな」

「なっ……!?」

ニヤリと笑った会長の言葉に愕然とする。

それって、脅迫じゃ……

「じゃあな」

そんな私を気にもせず、会長は屋上から去っていき、残された私はただただ呆然とするだけだった。




教室に戻ると紗英がすぐに駆け寄ってきた。

「大丈夫だった?三鷹くんファンに呼び出されて帰って来ないから心配したんだよー」

「ごめん、紗英」

紗英に謝りながらも、頭の中は屋上での出来事でいっぱいだった。

思い出されるのは、会長が最後に言い放ったあの言葉。

『来なかったら、有る事無い事言いふらすからな』

実際、行く気なんてこれっぽっちも無かったが、その言葉を聞いた瞬間、行かなきゃヤバイと思った。

思い出しただけで恐ろしい、あの笑み。

あれは、本気(マジ)だ。


あの時の事を思い出して身震いしていると、本鈴がなった。慌てて席につく。

ついで、ドアがガラッと開くと、担任の(やなぎ) (かける)先生が、さらさらの金に近い茶髪を揺らしながら入って来た。

途端に顔を顰める私。

そんな私とは対照的に目を輝かせて歓声をあげる女子生徒達。


「きゃぁああっ!」

「はぁ……何度みてもかっこいいぃ」

「本当、柳先生が担任でよかったぁ!」


内容からして分かるように、柳先生はイケメンである。たしか、ハーフだとか。

その容姿から女子生徒の絶大な支持を集めている。

担当は英語で、生徒会顧問でもあり、分かり易い授業と生徒想いの姿勢から男子生徒からも信頼が厚い。

先生としては完璧過ぎるぐらいだ。


「はい、静かに」

柳先生がパンパンと軽く手を叩くと、すぐに生徒達は話すのを辞め、先生の話に耳を傾けた。

柳先生は生徒達が全員静かに聞く姿勢になったのを確認すると、チラッとこちらに視線を向けた。

咄嗟に目を逸らす私。

「……………」

やめて下さい。

生徒に熱い視線は向けるものではありません。

「………今から、文化祭実行委員を決める」

諦めて、口を開いた柳先生。

それでも、途中途中でチラチラと視線を送ってくる。

私は私で、すべてをスルーしまくった。

無視である。

うっかり目を合わせると最高の笑顔で見つめてくるので絶対に目は合わせてはいけない。

授業中にそんな事をされたら困る。

目を合わせないように、きちんと授業を聞くのは凄く疲れるので、柳先生の居る授業は私にとっては苦痛でしか無い。

「はーぁ…」

何でこんなことに……




──────事の発端は1ヶ月前。

私が廊下を歩いていると、前方に人だかりが出来ているのが見えた。

女子生徒がキャーキャー言っている感じからすると、生徒会だかなんだかが居るのだろう。

イケメンに群がるのは勝手だが、廊下を通行止めにするのはやめて欲しい。

その時イライラしていた私は一瞬、「邪魔だ」と言ってしまおうかと思った。が、踏みとどまり、隙間を通り抜ける事にした。

「すいません、ちょっといいですか」

人の波に押しつぶされそうになりながらも必死で歩く。

すると、

「ちょっと、アンタ邪魔!退きなさいよ!」

ドンっと背中を押され体勢を崩す。

そのまま床に手をついて倒れた。

「かわいそー」

クスクスと笑う声が聞こえる。

強く打った膝が痛い。


瞬間、私はブチ切れていた。

「どっちが邪魔よ!!毎日、廊下占領してキャーキャー、キャーキャーうるっさい!ちょっとは他の人の迷惑も考えないの!?頭悪いんじゃないの?」

怒りのままにまくし立てた私に、女子生徒達は強い口調で言い返した。

「はー?アンタ誰、なんなの」

「馬鹿にしてんの?」

「ウザいんですけどー」

「えぇ。馬鹿にしてますよ。だって実際そうでしょう?周りの迷惑も相手の迷惑も考えずに自分勝手に行動して、自己中もいいところ!恥ずかしいと思わないんですか?」

「柳先生は迷惑だなんて思ってないわ!」

自信満々に答える生徒。

その自信は何処からくるのだろうか。

そして、人だかりの中心に居たのは生徒会ではなく生徒会顧問でしたか。

どうでもいいですけど。

「どうだか。ま、取り敢えず言いたいことはこれだけです。──────アイドルごっこなら他所でやって下さい」

それだけ言うと、私はさっと身を翻し、その場から去っった。

これ以上ここに居てもイライラが増すだけだ。

さすがに、暴力沙汰は避けたい。

後ろで何か叫ぶ声がきこえるが、無視。気にしない。


ずんずんと廊下を歩き、この怒りをどこに向けようか、私が考えていると、

「──────おい!」

急に呼び止められ振り向くと、そこには先ほどまで女子生徒達に囲まれていた、柳先生が立っていた。

どうやらここまで走ってきたらしい。

手を膝について息を切らしている。

「………どうしたんですか?」

「…の、さっ…き…」

何を言っているのか分らない為、「落ち着いてからでいいですから」といって、言葉を遮る。

ハンカチを差し出すと、驚いた様に目を見開かれた。


先生はすぐに息を整えると、すっと背を伸ばした。

屈めている状態で私と同じ高さの先生の顔は、見上げる様にしないと見えない。

……首が疲れる。

そんな私の事なんて全く知らない先生は、焦った様に、口を開いた。

「あの、さっきはすまなかった」

「………何で先生が謝るんですか?」

私が怒っているのは、廊下を占領している生徒達であって、先生ではない。むしろ、先生は被害者では?

そう伝えると、先生はまた目を見開いた。

「いや、まぁ、そうなんだけど。……でも原因は俺だし、謝らないといけないと思って」

「全然気にしてないので大丈夫です、ありがとうございます。──────先生は良い先生ですね」

「…っ!」

何故か急に先生の顔が赤くなった。

さっきまでの真面目な表情とは打って変わって、目をまんまるにして口をぱくぱくさせている。

「どうかしましたか?」

心配になって顔を覗き込むと、物凄い速さで飛び退く先生。

失礼な。

せっかく、人が心配してやってるというのに。

「じゃ、じゃぁ、それだけだから」

それだけ言い残すと先生は足早に去って行った。

「……なんだったんだろう」






それからというもの、私を見つける嬉しそうな表情で用もないのに話し掛けてきたり、授業中やたらとこちらを見てきたりすることが多くなった。

挙げ句の果てには、急に呼び出されたと思ったら、「恋ってなんだろうな」と言う始末。

でも、逆に私から話し掛けると、慌てた様になって話にならないのだから、意味不明だ。




「もう、生徒会の事もあるのに……」

「──────生徒会がどうかしたのか?」

「!?」

授業も終わり、帰りの支度をしながら、自分の席で独り言を言っているとにゅっと顔が飛び出してきた。──────柳先生だ。

驚いて飛びのこうとしたが、椅子に座っていた為、ガタッと大きな音が鳴るだけだった。

「な、おどかさないで下さい!」

「あぁ、ごめんな。そんなつもりは無かった。」

そんなつもりだったら、困るんですけど。

「そんなことより、生徒会がどうかしたのか?………はっ!まさか、生徒会の中で好きな奴が出来たのか!?」

おいおいおいおい、それは無い。それだけは無い。

どうしたらそんな考えに至るのだろうか。

疑問だ。

「それは絶対にありませんから、落ち着いて下さい。……ていうか何で先生が慌ててるんですか」

「……へっ?あ、いやそれは…」

「?」

本当におかしな人だ。

「まぁ、生徒会の事で何か困った事があったら言ってくれ」

まさに今、困ってます。

特に、三鷹千歳とかいう奴に。


と、そんな事を思っていると、教室の扉がガラッと開いた。

そして、そこから顔を出した人物とその人物が発した言葉に唖然とした。

「あっいかーわサーン、お迎えにきましたよぉー?」

教室中に響く私を呼ぶ声。

噂をすれば、とはまさにこの事だ。

「聞こえないんですかぁー?あなたの彼氏の三鷹千歳ですよぉー」

「ちょ、変な嘘つくのやめてよ!誤解されるでしょ!?」

ありもしない事を大声で言う彼に、慌てて叫ぶと、ニヤッとした意地悪そうな笑みが返ってきた。

そして、教室の中に入って来ると、私の所に歩いて来る。

「ひどいなー。俺、傷付いちゃったー」

そして、私の耳元に口を寄せると、

「悪い魔女には、罰が必要だね」

と、囁いた。

途端に視界が180度ターンし、気づいた時には私は抱きかかえられていた。

あれだ。俗にいう、お姫様抱っこというやつである。

「なっ、降ろして!」

「だーめー」

いくら足掻いても、叩いてもびくともしない。

力の差は歴然だった。


私が諦め掛けていると、

「おい、」

突然、掛けられた声に三鷹くんの動きが止まった。

「……何ですかぁ?………柳先生」

三鷹くんに声を掛けたのは、先程まで固まっていた柳先生。

少し怒っている様にも見える。

「相川と、付き合ってるってゆうのは本当か?」

「本当ですよぉ。─────ていうか、先生には関係ない」

「なっ!関係なくな「はい、ストーップ!」

ヒートアップしそうな二人を止めにはいってきたのは、生徒会庶務の久世 遥。

二人を引き離すと、「ほら、行くよ」と言って、三鷹くんを引っ張る。

「おい、まて、」

「先生も来て下さい。生徒会顧問なんですから」

「お、おう……」

わー、久世くん凄ーい。

………でも、私はこのままなの?

「だって、降ろしたら逃げるだろ?」

笑顔で言う久世くん。

そこまで、往生際の悪い奴じゃありませんから。

もう、諦めてますから。

それに、逃げたとしてもすぐ捕まるのがオチだし。

「分かってんじゃん」

はい、分かってます。分かってますとも。

………だから。



だから、お姫様抱っこは勘弁して下さい。












いやー、更新ペースが恐ろしく遅いw

申し訳ないです(−_−;)




生徒会顧問、登場!

純情(ピュア)な恋する乙女(←ちがう)です!



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