8 相談
…午前の作業終了のチャイムが鳴り響き、俺は手を休め食堂へと向かう。
(そういや、賢治の奴、相談事があるとか言っていたな)
食堂で、賢治と合流した俺は、昼を済ませた後、賢治からの頼みもあり場所を移動した。
会社の裏口まで、俺と賢治は足を運び、入口の近くに置いてあるベンチに腰を下ろす。
この場所は、普段から、そんなに人が来ることはなく静まりかえっているので話しをするには最適の場所だった。
「…で?、何だ?…相談したい事って?」
俺の方から、話しを持ち掛けてみた。
…
賢治は、一瞬迷ったかのような表情を見せたが、その口を開き話し始めた。
「…こういう事、お前に話していいのか正直分からないんだけど…」
迷いの吹っ切れていない、表情と言動の中、賢治は、ストレートに俺に話してきた。
「昨日、お前と会っただろ?…その時に架奈美さんに初めて会って…俺」
何となくだが、賢治の様子から言いたいことは分かっていた。
「彼女のこと…あの後以来、頭から離れないんだ…一目惚れって奴だと思う」
…
「…そうか」
確かに、架奈美は、あの容姿に性格だ…男から見たら、ほおっておけないという人も多いだろう。
(…しかし、初対面の賢治までもが好意を抱いてしまうとは)
俺は、架奈美の魅力を改めて思い知らされることとなった。
「なぁ、俊弥…今度、場を改めて…俺、架奈美さんと…」
「悪い、賢治…架奈美には、もう付き合っている人がいるんだ」
最後まで言わせまいと、俺は、とっさに口から嘘を言ってしまっていた。
「…そ、そうか…そうだよな…あんなに可愛くて美人なんだから彼氏くらい、いても当たり前だよな…」
(すまない…賢治)
「俺の話しに付き合わせて悪かったな…今のことは、忘れてくれ」
「あぁ、分かった」
俺が返事を返した後、俺達は再び作業場へと戻っていった。
…
午後の仕事も終わり、俺は、架奈美の待つ家へと帰るため会社を後にした。