5 公園
俺達は、朝食を済ませた後、どこへ行くあてを決めていたわけではなかったが、出かける準備をし、家を後にした。
「何処か行きたい場所はあるか?」
俺は、架奈美に問い掛けると…
「う~ん…俊弥義兄さんの行きたい場所に連れていってもらえる?」
と返答がかえってきた。
(俺の行きたい場所か…)
色々と悩んだ末、昔、架奈美とよく遊んだ公園を行こうかと俺は提案した。
「そうだな…じゃあ、俺達が子供の頃によく一緒に遊んだ公園を覚えているか?
「うん…確かT公園よね、ちゃんと覚えているわよ」
…俺は、嬉しかった。
架奈美は、子供の頃の記憶を覚えていてくれたのだ。
「昔は、よく、ここで二人で遊んだよな」
「うん、家に帰るのが遅くなって二人揃って、父さんに叱られたことも何度もあったわよね」
…公園に着いた俺達は、思い出に浸り昔話を語らっていた。
二人並んでベンチで座っていた俺達だったが、公園の時計を ふっ と見ると昼近い時間帯になっていた。
「そろそろ、昼を食いに行かないか?」
俺の提案に
「うん!」
と架奈美は一言だけ元気に頷いてくれた。
ベンチを離れ、公園を出ようとした時だった。
「あれっ?俊弥じゃないか?」
と不意に前の方から話かけられた。
「おう、賢治、こんなとこで偶然だな」
彼の名前は【桑野 賢治】…俺の職場でも、特に気の合う仲間である。
「こんな時間に何してるんだ?」
俺が、たずねると賢治は 昼を買いに行く途中だ と答えた。
「お前の方こそ…悪い、俺、邪魔だったか?」
急に、わけの分からないことを言い出した賢治に、俺は
「邪魔?…邪魔って何で?」
と問い返した。
「…だって、彼女とデート中だったんだろ?」
(彼女って…架奈美のことか)
俺は、心の中で…ふふっ…と軽く苦笑いをし答えた。
「違うよ…こいつは、俺の妹」
えっ!そうだったのか と言わんばかりの表情で賢治は、俺を見てきた。
「でも、お前に、まさか、こんなに可愛い妹さんがいたなんて予想もしてなかったよ」
俺は、賢治に軽く説明をした。
「…そうだったのか、久しぶりの再会ってわけだったんだな」
「俊弥義兄さんのお知り合いの方?」
架奈美が、俺に問い掛けてくる。
「あぁ、俺の職場の同僚で 桑野賢治」
「…どうも、初めまして、私、葛原俊弥の妹の架奈美といいます…いつも、兄がお世話になっています」
架奈美は、俺の隣で、賢治に挨拶をしだしていた。