20 未来
…
…
……
…あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう?
夢のような一時は、一瞬で過ぎ去り、架奈美は…俺の体の中に身を委ね、休んでいた。
…俺は、架奈美の髪を、そっと上下に撫で下ろした。
そのまま、再び彼女を俺の腕の中に閉じ込めた。
「…俊弥義兄さん」
「ん?…ごめん、起こして…しまったか?」
「ううん、違うの…お礼を言いたくて…ホントにありがとうね」
架奈美の唇から、零れでる…その声も、潤んだ眼差しの、その瞳も…そう、架奈美という存在そのものが、俺の中の全てを満たしてくれていた。
「…架奈美」
なに?と言う表情で架奈美は、こちらへと振り向いてくれた。
…
…俺は、その優しく可憐な言葉を零してくれる架奈美の唇を…俺の口で塞いでしまっていた。
「…今のは、俺からの感謝の気持ちとして受けとってもらえるか?」
うん と満面の笑みで微笑んでくれた彼女は、もう一度…今度は俺の口を閉ざしてきてくれた…その潤いを帯びた唇で…
…きっと、架奈美の存在は、これから先も、俺の心の中をいっぱいに満たしていってくれるのだろう。
人は…誰かを守る時や共に生きる時、新たな幸せを掴み取る事が出来る
果てしなく続くレールの上を、共に歩んで行こう。
この先にある未来へと繋がる幸せを掴み取るために。
(…架奈美)
(…俊弥義兄さん)
…ゆっくりと。
そう、まだまだ2人の物語り(未来)は始まったばかりなのだから…