2 記憶
驚き、声のした方へと振り向くと、そこには…
黒く長い髪に、綺麗に澄んだ瞳
優しそうな笑顔に、温かさを含んだ笑みを浮かべている女性が立っていた。
「…は、はい…そうですが……ま、まさか、架奈美か?」
「久しぶりだね…俊弥義兄さん」
満面の笑みを浮かべながら 彼女 は答えた。
「お、おう、久しぶりだな…元気にしていたか?」
「うん、俊弥義兄さんの方はどう?変わりない?」
「あぁ、こっちは、相変わらずだな」
軽い談笑を交わした後、再び車に乗り込み俺達は家へと向かった。
(しかし…女性は、ホントに変わるモノなんだな…)
架奈美は過去の面影も、そんなになく…正に、美人と呼ぶに相応しい成長ぶりに、俺は驚かされていた。
「でも…俊弥義兄さんと別れてから、もう6年も経つのね」
物思いにふけっているような表情をちらつかせながら、架奈美は語りかけてきた。
「あぁ、あの時は、ホントに辛かった」
「うん、私も同じ…学校に受かったのは嬉しかったんだけど…俊弥義兄さんや父さん達と離れるのは、正直…嫌だった」
軽く俯き、遠くを見つめるような架奈美を元気づけるかのように俺は言った。
「あぁ…確かに、あの時は辛かったけど…今日から、また一緒に暮らせるじゃないか…架奈美は大切な妹なんだ、何かあったらいつでも相談にのるから遠慮なく言ってくれよ!」
その言葉を聞いた架奈美は、瞳に、うっすらと涙を溜めながら先程以上の満面の笑みで、その顔を飾ってくれた。
「うん…ありがとうね、俊弥義兄さん!」
…その笑顔に、俺は、思わず息を呑んでしまった。
輝く瞳を涙で揺らせながら、柔らかく微笑む、その口元に一瞬心を捕われてしまう。
(何だ?この気持ち…久々に会ったからか?)