平穏な私の日常はどこへ?
「吹部ってさ~、やっぱり陰キャの集会所みたいじゃない?」
帰りの支度中、私__舞原心音をチラチラと見ながら談笑する声が聞こえてきた。
…聞こえてないと思ってるのかな?と考えつつも、あの子達が言っていることはあながち間違いではないと悟る。
なぜなら、私は完全なる陰キャだからだ。休み時間はスマホをいじるか、本を読むか、寝るかの3択ぐらいしかない高校2年生だ。
成績は可もなく不可もなく、テストはいつも平均前後。特筆できるような特技は、部活で吹いてるトランペットぐらいだ。
人と話すこともあまりない私は、きっとモブ的な何かなのだろう。…せっかくの高校生活だというのに。
そんな私は、数時間後にああなることなど、知るよしもなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
皆がわいわい帰るなか、私はひとり、通学路で小さなため息。
帰りに遊びに行くのはおろか、一緒に帰る友達すらいない私。近くにあった公園のベンチを見て、腰かけた。
「なんでこんなにぼっちなんだろ…。」
と、誰に向けるわけでもなく呟く言葉は、夕方の茜色に染まった空に消えていく。
ふと、制服のポケットからスマホを取りだし、母にメールを送る。
送信完了、の文字が浮かんだのを確認し、視線をスマホから正面に戻した。
子供が、道路に飛び出していた。
そこに突っ込んでくるトラック。
子供はトラックに気付いていない。
「(…まずい!)」
私はそう思うや否や、荷物を全部放り投げて子供の元へと駆け出した。
不思議と身体の重みは感じなかった。
「(間に…あって…!)」
必死に手を伸ばし、子供を押した。
次の瞬間、私の身体に鈍い音が響いた。
「(轢か…れたの…、なんかあんまり…身体痛くないな…。)」
だんだんと遠退く意識の中、私は辛うじて動く目で子供の無事を確かめた。
「(良かった…。間に合ったんだ…。)」
そこで、私は意識を手放した。




