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風が止まった世界で、俺はもう一度“生きる理由”をつくる  作者: GT☆KOU


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第24話 風が記す未来(レゾナント・コード)【前編】

風が戻った。

——ただし、それはもう、昔の風ではなかった。


空はまだ壊れかけている。

雲は裂けたまま、光の筋が縦横無尽に走り、

空間の亀裂からは“記録の残像”がゆっくりと流れ落ちていた。


アイシャは静かに立ち尽くしていた。

腕のEchoBANDが、鼓動のように青く光を刻む。

そのたびに、周囲の空気が柔らかく脈打つ。


風が頬を撫でた。

温かい。

だがその一瞬、彼女の肌に微細な痛みが走った。

Dヘルツァ粒子——風と情報が融合した微粒子が、

皮膚を掠め、光の痕を残していく。


「……これが、“新しい風”……?」

アイシャが呟くと、空に淡い輪が広がった。

光の層の向こうで、記録された街の影が見える。

崩れた塔、広場、笑い声、炎——

それらが重なり合い、ゆっくりと“形”を取り戻していく。


「街が……再構築されてる?」

カイルが口を開いた。

右腕の光が抑えきれず、掌の中で青い紋が浮かんでいる。

彼は苦笑いを浮かべながら、風に逆らうように手を握った。

「この感じ……記録が、現実を書き換えてる。

 俺たちが見てるのは“未来”じゃなく、“上書きされた現在”だ。」


アイシャは目を細めた。

「じゃあ、この風の中で起きてるのは……再生?」

「再生でもあり、崩壊でもある。」

カイルは風に向かって顔を上げた。

「“レゾナント・コード”。

 Dヘルツァが共鳴した時、世界の基盤が再構築を始める——

 ただし、誰かの“想い”を中心にして、だ。」


その時だった。

背後で風が割れた。

微かな金属音。

光の粒子が集まり、形をつくっていく。


現れたのは、あの銀髪の少女だった。

風と光が交わる中、彼女は静かに目を開けた。

まるで夢から目覚めたばかりのように、柔らかく瞬きをする。


「……ここが、“風の都”なのね。」

少女の声は、音ではなく、心の中に直接届いた。

アイシャは一歩踏み出し、彼女の手を取る。

「あなた……名前は?」

少女は少し考えてから、微笑んだ。

「まだ、ないの。

 でも……あなたが呼んでくれたら、それが私の“記録”になる。」


風がそっと吹き抜けた。

アイシャはその音に包まれながら、ゆっくりと口を開いた。

「なら……“リュカ”。

 風が流す記憶ルカから取った。

 あなたは、私たちの“風の記録”。」


少女——リュカは小さく頷いた。

目の中に、幾重もの光の輪が浮かんでいる。

Dヘルツァ粒子が彼女の周囲を旋回し、まるで祝福するように輝いた。


「リュカ……それが、私の“始まり”。」


カイルが小さく笑う。

「名前をもらうたびに、世界が少しだけ変わる。

 そういう仕組みなのかもな。」


風が再び強く吹いた。

空の亀裂が一瞬だけ閉じ、

地面の下から新しい都市の骨格が浮かび上がる。


「見て、アイシャ。風が……街を描いてる。」

リュカが両手を広げる。

その掌から放たれた光が空を泳ぎ、

崩れた建物を包み込みながら、徐々に形を取り戻していく。


それは再構築というより、“記録の再生”だった。

風が壁を描き、屋根を綴り、

通りを埋める声と笑いが、粒子の中に響く。


アイシャは立ち尽くした。

胸の奥で、ひとつの想いが浮かび上がる。


(もしこの風が、誰かの想いで動くのなら……

 私は——この風に、“未来”を記す。)


彼女の指がEchoBANDに触れた。

その瞬間、青白い光が強く脈打ち、

空全体が彼女の心拍に合わせて震えた。


カイルが驚いて振り向く。

「アイシャ!? 今のは——」

「大丈夫。怖くない。」

彼女は微笑んだ。

「これは……私たちの選んだ“風”。」


風が鳴った。

それは、まるで世界そのものが答えているようだった。


——そして、風は書き始めた。

記録ではなく、まだ見ぬ“未来”を。


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