表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話『スキル《記憶継承》、発動』

目の前に現れたのは、獣のような化け物だった。

身の丈は二メートルを優に超え、黒く光る皮膚には刃が通らなさそうな硬質な鱗。

見た目は狼、だが口からは火のような瘴気が漏れ、赤い目がぎらついていた。


「なんだよ、チュートリアルにしてはやけに強そうじゃねえか……」


今の俺は、剣も盾もない。丸腰。

あるのは、ステータスウィンドウと、唯一のスキル《記憶継承》。


使えるかどうかは、やってみなきゃわからない。


「……起動。《記憶継承》!」


俺が叫んだ瞬間、頭の中に何かが流れ込んできた。

過去の記憶。知らないはずの戦場。

数え切れない屍の山。黒い剣を手にした少女の、無数の死闘。


そのすべてが、一瞬で俺の神経に焼き付いた。


「うぐ……っ、くそっ、脳が焼ける……!」


だが、痛みと引き換えに得たものは──力だった。


右手をかざすと、漆黒の剣が生成される。

思っただけで、形になった。


それは、セリシアの剣。

神を殺した、あの英雄の剣。


「おいおい……マジかよ、これ、使えるのか」


身体が軽い。いや、違う。

重力の扱い方、足の捌き、間合いの取り方。

すべてが“既に知っている感覚”として染みついていた。


「おい、来いよ。ぶっ殺してやる」


獣が吠えた。距離を詰めてくる。


──だが、遅い。


「…ふっ!」


俺の剣が横一線に薙いだ。

風が切り裂かれ、空間が揺れる。


一拍遅れて、獣の胴がズバリと裂けた。


黒い血が噴き出し、地面に崩れ落ちる。


「……一撃かよ。さすが、神殺しの剣だな」


気づけば、俺の視界にレベルアップのウィンドウが浮かんでいた。


【レベルが2に上がりました】

取得スキル:《戦闘直感》《斬撃強化Ⅰ》

記憶進行度:18% → 22%


「へえ、スキルが増えるのか。レベル上がると、記憶の解放も進むんだな」


そのとき、俺の脳内に再び声が響いた。


《契約条件を満たしました。融合スキル《セリシア:リンク》が開放されます》


「……融合?」


次の瞬間、あの銀髪の少女――セリシアが、俺の目の前に現れた。

だが、実体ではない。

まるで意識が混線したように、彼女の声が、意識が、俺の中に染み込んでくる。


『ユーグ。融合すれば、私の力を一時的に完全再現できる。

ただし、時間制限がある。代償は、君の精神力。耐えられるかは……君次第だ』


「上等だ。やってやるよ、セリシア」


──俺は神に殺された。


だから今度は、俺が神を殺してやる番だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ